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異世界ディヴェルティメント〜不幸少年のチート転生譚〜  作者: ろーたす
グラトニーディナー〜妖精少女と晩餐会〜
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第百九話 迫り来る暴食の魔物達

「くっそが!!!」


俺が殴った衝撃で机が粉々に砕け散る。

朝起きてシルフィが居ないことに気が付いた俺は、彼女を寝かせていた部屋で手紙を発見した。


『君の主人や仲間達が傷つくのを見たくないのなら、今から一人で来い。案内はその鳥がしてくれるよ。 ベルゼブブ』


シルフィのことだ。

俺達に迷惑をかけたくなくて、相談もせずに一人でベルゼブブの所に向かったのだろう。


「なんでだよ・・・」


何一つ迷惑なんかじゃないのに。俺達は家族だって言っただろうが。


「駄目だ、魔力サーチに引っかからない・・・。かなり遠くに行っちゃってるみたい」


先程からレヴィがベルゼブブとシルフィの魔力を探ってくれているが、見つからないようだ。


「くそっ、どうしたら───」

「ジークッ!!」


怒りと焦りが脳を支配し始めた時、突然玄関の扉が勢いよく開いてエステリーナが中に駆け込んできた。


「た、大変だ!危険度SSS級の迷宮が出現したらしい!!」

「迷宮?」


それが何だっていうんだ。今はそれどころじゃない、シルフィを見つけ出さないと・・・・・・いや。


「そんなことを出来るのは・・・」

「ベルゼブブしかいない!!」


膝に手を置いて荒い呼吸を繰り返すエステリーナに、俺は水を手渡した。


「サンキューエステリーナ。これでベルゼブブとシルフィの居場所が分かった」


そんな危険地帯に一人で向かったシルフィが心配だ。今すぐに向かわないと。


「はぁ、はぁ、報告はそれだけじゃない」

「なに?」

「魔神級の力を持つ魔物が数体ここに向かって来ているらしいんだ!!」


なんだと?ベルゼブブが生み出したのか・・・?


「ノルティア草原でそれを迎え撃った3つの騎士団は全滅、もうすぐそこまで来てる!!」

「ちっ、こんな時に・・・!」


とにかく、急いでそいつらを何とかしないと。


「ジーク、魔物はボク達に任せてベルゼブブの所に行って」

「レヴィ?」

「そうだね、早くシルフィちゃんを助けてあげて」

「ルシフェルも・・・」


頼もしい二人は、もう敵がどこに居るのか分かっているようで、勢いよく外に飛び出して行った。


「ジークさん、王都は必ず守ってみせます。だから・・・」

「大切な家族を、必ず取り返してくるんだ」

「シオン、エステリーナ・・・」


ほらな、シルフィ。

こんなにも頼もしい仲間達が居るんだ。


「分かった、任せてくれ!」


だから、無事でいてくれ・・・。









◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇








「あれだね」


ジークが家を飛び出して数秒、王都を囲む壁を越えたレヴィとルシフェルは、向こうから凄い速度で走ってくる魔物を視界に捉えた。


レヴィ達は知らないだろうが、その姿はまるで肉食恐竜のようである。


「この魔力の感じ・・・レベルは200ぐらいかな」


自身の禁忌魔法を吸収し、その魔力で生み出されたであろう魔物を睨みつけながらレヴィがそう言う。


「ボクが倒さなきゃ・・・」


体内に流れる水属性の魔力を手元に集め、それを敵目掛けて一気に放つ。


「ギャオオオオ!!!」


衝撃でかなりの数が吹っ飛んだが、それでも魔物の大群は止まらない。


「はああっ!!」


レヴィと共に家を飛び出したルシフェルが、次々と魔物を斬り伏せていく。


「この調子なら・・・!」

「そうだね、一気にいくよ!」


一匹一匹が魔神に匹敵する力を持っている魔物達だが、この二人の相手としては役不足だった。







◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆








「エステリーナさん、あれは・・・」

「ちっ、飛行型か」


シオンとエステリーナが空を見上げながらそう言う。彼女達の視線の先には翼を羽ばたかせて飛来する巨大な魔物がいた。


「む、迎え撃ちましょう!」

「ああ、もちろんだ!」


魔力を纏い、二人は魔物が降り立とうとしている場所に向かって駆け出した。


「うわあああ!!」

「逃げろっ!!」


魔物を目撃した人々が逃げ惑う中、二人は魔物のもとにたどり着く。


「鳥・・・?」

「気をつけろ、かなり強いぞ」


放たれる魔力はビリビリと大気を震わせる。シオンは直感でこの魔物が魔神アルターに匹敵する力を持っていると感じた。


「《炎をもたらす魔剣(フレイムブリンガー)》!!」


そんな魔物にエステリーナが炎を放つ。


「ギュケエエエエエエ!!!」


しかし鳥型の魔物が翼を羽ばたかせて巻き起こした暴風にかき消され、シオンとエステリーナは吹っ飛ばされる。


「うぁっ!?」

「ぐっ!!」


風が周囲の家を破壊する中、二人は地面に叩きつけられた。


危険度SSSクラス迷宮に現れるフロアボスを上回る強さを持つ怪鳥は、奇妙な声を発しながら、痛みに表情を歪める二人のもとに向かって歩き出す。


「く、くそ・・・」


勝てない。

エステリーナの頭に敗北という文字が浮かぶ。


「まだまだ・・・」


しかし、シオンは立ち上がった。


「王都は守ってみせる・・・!」

「ふっ、良く言った」


そしてそんな彼女に怪鳥がくちばしを叩きつけようとした時、突然怪鳥は炎に包まれた。


「な、兄上・・・!?」

「俺も加勢しよう」


現れたのは、エステリーナの兄であるイツキ。大剣に炎を纏わせながら、彼は怪鳥を睨みつけた。


「王都で暴れるのなら、容赦はしないぞ」

「ギュケエアアアアア!!!」


そして、ジーク不在の中戦闘は始まった。

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