第十一話 不幸少年、平常心を保つ
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ノルティア古洞のフロアボスを倒した俺達は、無事に王都へと戻る事が出来た。
そしてギルドで持ち帰った魔物の素材や迷宮の情報を渡すと、金貨1枚と銀貨30枚を貰えた。
ちなみにノルティア古洞は危険度Cランクの迷宮として認定される事になった。
「今日はお疲れ様でした、乾杯!」
俺がそう言うと、シオンとエステリーナが手に持ったグラスを掲げた。
現在午後19時半、迷宮探索お疲れ様でしたということで俺達は俺の家で飯を食っている。
エステリーナは俺が作った料理を食べて何だこれは!とかいって興奮していた。
「ジークさん、口元にソースが付いてますよ」
「ん?まじで?」
「ちょっと待ってください」
そう言うとシオンはテーブルの隅に置いてあったハンカチで俺の口元を拭いてくれた。
少し顔が近かったのでドキッとしてしまう。
と、そんな俺達を見ていたエステリーナが口を開いた。
「なんだ?2人はお付き合いしているのか?」
「ぶふっ!?」
何を言うかと思えば、とんでもないことを・・・。
「付き合ってねーよ、別に」
とりあえず冷静を装ってそう言う。隣にいるシオンもこくこくと頷いた。
「ふむ、そうなのか?始めて会った時から仲良さげだったからてっきり・・・。今もわざわざ口元を拭いてやったりしてだな」
「うっ・・・」
隣のシオンが顔を真っ赤にして俯いた。
「はあ、ほら、飯食っちまえよ」
「む、そうだな・・・」
「たく、俺は先に風呂入ってくる」
俺はそう言うと立ち上がり、食器を台所に置いて風呂に向かった。
・・・逃げるわけじゃないぞ。
「ふぃー、最高だぜ」
頭を洗い、身体も洗い、お湯に浸かりながら俺はそう呟いた。
我が家の風呂場は割とデカい。10人ぐらい入れるんじゃないかってくらいデカい。
なので浴槽もデカい。こうやって足をフルに伸ばしながら浴槽の中でのんびりとくつろぐことなど、日本の家の風呂では絶対に出来なかった。
「・・・」
天井を見つめながら、先程の会話を思い出す。
よくよく考えれば、シオンは俺と2人で生活してて何とも思わないんだろうか。
例えば襲われるーとか、風呂覗かれるーとか。
まあ、ここは異世界だし、そこまで考えたりはしないのかもしれないな。
仮にもしほんとに襲いそうになっても俺は絶対に踏み止まってみせるつもりだ。俺はやれる。必ず踏み止まれる。
・・・何を考えてんだ俺は。
「上がろ」
結構長いことくつろいでしまった。
そろそろ上がって本でも読もっと。ちなみに当然だが、風呂の湯は毎回交換してるからな!
なんて思いながら全裸で扉を開けた時、
「え──────」
「・・・何してんだお前」
目の前にエステリーナがいた。
「い、いや、トイレを探していて・・・」
「ああ、なるほど。トイレならここの2個右にある扉を開けたらあるぞ」
「そうか、ありがとう・・・」
「・・・」
・・・これは来るぞ。
エステリーナの顔がどんどん赤くなっていく。まるで茹でダコのようだーーー。
俺は耳を塞いだ。
「ぎゃあああああああああ!!!!!」
◇ ◇ ◇
「あっはっはっは、流石ジーク君ね!!」
「わっ、笑い事ではありません!!」
次の日、俺達はギルド長室を訪れた。そこで昨日の夜の話をすると、案の定リリスさんは大爆笑した。
「ぐっ、裸で外に出てこようとしたお前が悪い!」
「ええ〜?」
顔が真っ赤なエステリーナにそんな事言われた。俺別にいつも通り扉開けただけなのに。
ちなみにシオンと俺はどちらかが風呂に入っている時は風呂場付近に近付かないという決まりを作っているのであんな事故が起こるようなことは無い。
「まあまあ、ともかく3人とも、新たな迷宮の探索お疲れ様でした」
「はは、どうも」
リリスさんが話を変えてくれた。
うん、そういうところも含めてリリスさんまじ美人。
「まあ、話はそれだけよ」
「ええ〜?」
何か大事な用でもあるのかと思ってたのに・・・。
「単に暇だっただけよ」
「ぎ、ギルド長!」
「うふふ〜、別にいいじゃない」
リリスさんはケラケラ笑うと立ち上がり、俺を見た。
「まあ、ハーレムは程々にね」
「・・・?」
別にハーレムを作ってるわけじゃないんだが。
「それじゃ、用事があるから私はこれで。じゃあね〜」
手を振ってリリスさんは部屋を出ていった。残された俺達は何とも言えない気持ちでリリスさんが出ていった扉を眺めていた。




