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異世界ディヴェルティメント〜不幸少年のチート転生譚〜  作者: ろーたす
グラトニーディナー〜妖精少女と晩餐会〜
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第百四話 暴食の魔神襲来

「はぁ・・・」

「どうかしましたか?」


ふと出た俺のため息を聞き、シオンが不思議そうにこちらを見つめてくる。


「ふふ、シルフィの体調が優れないから落ち込んでいるのだろう」

「ジークってほんとシルフィのこと好きだよねー」

「う、うるせえ」


確かに落ち込んでるけど、別にシルフィのことは色々世話を焼いてくれる妹のような存在と思っててだな・・・。


「シルフィちゃんも体調崩すんだね」

「そりゃそうだろ」


あの子だって生きてんだから。


「けど、なんか様子がおかしかったんだよな」

「様子?」


ルシフェルが首をかしげる。


「顔真っ青だったし、何かを思い出そうとしてガタガタ震えてたっていうか・・・」

「何かあったのかな?」

「分からんけど、ちょくちょく様子を見に行ってあげたほうがよさそうだ」


ここ最近で彼女が関係する事件なんて起こってないと思うが、俺の知らないとこでなんかあったのかな。


「うーん・・・」

「あはははっ、心配し過ぎだって」


俺を見てレヴィが爆笑しているが、いつもと様子が違ったからなぁ。


「まあ、確かにボクも心配してるけど、すぐ元気に───」


そんな時、突然レヴィが笑みを消して、窓の外を睨みつけた。


「ん?どうかしたのか」


いつの間にかルシフェルも魔力を纏っている。


「おいおい、まさか・・・」


場の雰囲気が変わった。魔神二人が戦闘体勢に入る。

それはつまり─────




次の瞬間、凄まじい魔力が王都を駆け巡った。




「くっ・・・!!」


これまで戦ってきた、どの魔神とも違うおぞましい魔力。それを感じ取って俺は何故か上の階にいるシルフィが心配になった。


「ジークさん!?」


俺が階段を駆け上がったのを見て、シオンが声を上げる。しかし俺は振り返ることなくシルフィの部屋の扉を開けた。


「ご、ご主人様・・・」


中に入れば、さっき見た時よりも真っ青な顔でこちらを見るシルフィと目が合う。


「来ます・・・」

「え・・・」

あの時の(・・・・)、魔神がっ・・・!!」


彼女がそう言ったのとほぼ同時、突然家が激しく揺れた。


「くっ!!」


窓の外を見れば、向こうから煙があがっている。


「ジークさん、今のは・・・」

「シオン、シルフィを頼む!!」


急がないとまずいことになる。

そう思った俺は、部屋に駆け込んできたシオンにシルフィを任せ、窓から外に飛び出した。


「ジークさん、私も行くよ」

「ボクも!」

「おう!」


続いて玄関から飛び出してきたルシフェル、レヴィと合流し、爆発が起こった場所に向かう。


「あれは・・・」


そして、俺達は現れた存在を発見した。


「ジークさん、翼・・・出してもいいよね」

「ああ」


ルシフェルが本気を出す・・・そのレベルの相手がそこにいる。


「いやぁ、やっぱりここが当たりだったみたいだねぇ」

「ちっ、最悪だな」


俺達の姿を捉えてケタケタと笑う、気味の悪い男。

劇をやるまでに何も起こらなきゃいいと思ってたけど、いらんフラグを立てちまったか。


「ってあれ?まさか魔神レヴィアタンに魔神ルシフェル?それにそこにいる人間は・・・」


そう言いながら、男のどんどん魔力が上昇していく。


「俺はジークフリード。てめえ、何者だ?」

「ああああ、最高だよ。まさかこんな〝食材〟に出会えるなんてっ・・・!!」


やがて男は腹を押さえながら、


「僕はベルゼブブ。《暴食グラ》の罪を司る、絶界の十二魔神の一人さ・・・!!」


人間にとって最も絶望的な自己紹介をしてきた。


「《神気功弾デバインカノン》!!!」


その直後、ルシフェルが魔神ベルゼブブに向かって魔法を放った。凄まじい魔力が込められた光の弾丸は、奇妙に笑うベルゼブブの身体を包み、そして爆発する。


「《海王轟鎌ロアデスサイズ》!!!」


今ので仕留めたかと思ったが、そこに向かってレヴィが水で造り出した巨大な鎌を振るった。


「うーん、いいねぇ」


しかし、その一撃はいつの間にかベルゼブブの背から生えた巨大な黒い腕に受け止められる。


「《バニッシュイレイザー》!!!」


それでもレヴィは攻撃の手を緩めない。鎌を消すと、凝縮された魔力をベルゼブブに向かって一気に放った。


レヴィとルシフェルが本気になっている。それはつまり、相手がそれだけやばいということだ。


「くっ、住民を避難してせないと・・・!」


あちこちから悲鳴が聞こえてくる。まだ建物に被害は出ていないが、このままじゃ一般人達が巻き添えを食らってしまう。


「ジーク!!」

「イツキさん・・・!」


そんな時、向こうからイツキさんが走ってきた。


「何が起きている!!」

「魔神です」

「は?」

「魔神が現れました!すぐに住民達を避難させてください!!」


俺の言葉を聞いたイツキさんは、一瞬動きを止めたが、すぐに頷いて次々に家の中から出てくる住民達に声をかけ始めた。


「よし、これで────」


住民達の避難はイツキさん達が何とかしてくれる、そう思ってレヴィとルシフェルに加勢しようとした時。


「あぐっ!!」

「うおっと!!」


吹っ飛んできたルシフェルを受け止め、俺は後ろの建物に突っ込んだ。


「大丈夫か?」

「はわっ、大丈夫!!」


顔を赤く染めて俺から離れたルシフェル。そんな彼女の腕から血が流れていることに俺は気付いた。


「ルシフェル、怪我してるじゃないか」

「大丈夫・・・まだやれる」


そう言ってルシフェルが剣を握る。ベルゼブブは、あの速度で動く彼女に攻撃を当てたのか。


「俺も加勢するぞ」

「うん、お願いするね」


外からは激しい戦闘音が響いてくる。俺とルシフェルは魔力を纏って外に飛び出した。


「痛いっ!!」

「ぐえっ!?」


しかし、猛スピードで吹っ飛んできたレヴィを受け止めて、俺は再び建物に突っ込んだ。


「いたた・・・ジーク、大丈夫?」

「まさか二度もこうなるとは」


相変わらず、固有スキルは仕事してるみたいだな。


「ほらほらぁ、そろそろ人間も出てきなよぉ」

「ちっ、言われなくてもな!」


早いとこ決着をつけないと、かなりの被害が出てしまう。


「覚悟しやがれ、魔神ベルゼブブ」


俺達の日常を踏みにじるってんなら、全力で相手をしてやるよ。




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