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異世界ディヴェルティメント〜不幸少年のチート転生譚〜  作者: ろーたす
グラトニーディナー〜妖精少女と晩餐会〜
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第百一話 練習してみよう

「わ、私がお姫様の役ですか・・・!?」

「えええー、ボクもお姫様が良かったのにぃ!!」


自宅に戻った俺は、早速シオン達に劇のことを伝えて役が書かれた紙を見せた。

そしたら今みたいな反応をいただきました。


そして気になる劇の内容は、『魔王に連れ去られたお姫様を、勇者が助けに行く』というもう見飽きたよ!って感じのものだ。


「ちなみに俺は勇者役だ」

「ほらぁっ、ボクもジークに助け出されたいーー!!」

「いいじゃないか。レヴィも魔王役にピッタリだと思うぞ」


そう。エステリーナが言ったように、レヴィはお姫様を攫って俺と戦う魔王役だ。


「ボク魔神だもん」


頬を膨らましながらそう言われても、残念ながら役はリリスさんが決めたから俺にはどうしようもない。


「なあジーク」

「ん?」

「私の役、〝マイケル〟ってなっているんだが、誰だ?」


駄々をこねるレヴィの相手をしていると、後ろからエステリーナにそう言われた。すでにリリスさんからそれぞれの役がどんなキャラなのかは聞いているので、俺は彼女にマイケルが誰なのかについて説明する。


「マイケルは、俺の旅の仲間らしい。なんでも〝金剛破壊神〟なんて呼ばれるぐらい強いらしいぞ」

「勇者より強くないか!?」


うん、それは俺も思った。


「ご主人様・・・」

「どうしたシルフィ」

「私はレヴィさんの部下の役らしいのですが、どんなことをするのですか?」


ふむ、確かシルフィの役は・・・。


「・・・蜘蛛女らしい」

「え」

「糸を使ってただひたすら獲物をぐるぐる巻きにする蜘蛛女の役らしい・・・」

「・・・」


その話を聞いて、シルフィは硬直した。なんかシルフィの周りだけ暗くなった気がする。


けど、最初に比べたらまだマシな方だぞ。

蜘蛛女の初期設定は、相手をぐるぐる巻きにして上から鞭で叩くドSの変態だった。流石にシルフィにそんな役をさせるわけにはいかなかったので、俺が猛抗議した結果がさっき言った蜘蛛女の設定だ。


「あ、あのぅ・・・」

「なんだねルシフェル」


今度はルシフェルが話しかけてきた。


「私の、喋る木ってどういう役・・・?」

「ただの喋る木だ」

「まって、全然意味わかんない」


と言われましても、常に舞台上に居続ける謎の木という設定らしいから、なんと言ったらいいのやら。


「あーん、お姫様がいいなぁ」

「お姫様・・・ジークさんが迎えに来てくれる・・・えへへ」

「ぐるぐる巻き・・・ぐるぐる巻き・・・」

「ねえ、私ほんとに必要?」


うん、シオン以外納得してないなこれ。最初は面白そうだったから劇やりますって言ったけど、成功すんのかな。


「まあ、私はマイケル役、よく分からないけど頑張るぞ」

「エステリーナ・・・」


やばい、めっちゃいい子だ。


「とりあえず、本番は一週間後だ。それまでになんとか台詞とかを覚えちまうぞ」

「おー」


駄目だ、エステリーナとシオンしか返事してくれない。









ーーーーーーーーーーーーーーーーーー








「台詞覚えられなーい」

「諦めるでない。魔王であるお前が台詞を言えなくてどうするのだ」


あまり人に見られたくない、聞かれたくないという意見があったから家を出て、王都西にあるノルティア草原で練習を始めてから数分後、早くもレヴィがパンクした。


「台詞多いよぉ・・・お姫様がいいよぉ」

「んなもん、姫様役だって台詞多いわ。シオンだって本番までに覚えられるか────」

「ジークさん、一応台詞は覚えました」

「なんだと・・・!?」


どうやらそれは本当の事らしく、お願いしてみたら姫様の分の台詞を全て言ってくれた。


「でも、台詞は覚えれても演じれるかどうか・・・」

「大丈夫、シオンならやれる」


うーん、普段大人しいシオンから勇者様ー!とか言われるのかぁ。とても楽しみだ。


などと思っていた時。


「うへへへ、私は蜘蛛女。お前も、お前もぐるぐる巻きにしてやるゾー」

「ぶふぅっ!!」


少し向こうからシルフィの声が聞こえてきて、思わず吹いてしまった。


「うぅ、ご主人様、酷いですよぅ・・・」


涙目でそう言ってくるシルフィ。くそ、最後の棒読みで堪えきれなくなってしまった。


「あっはっは!!ボクは魔王、お前ら全員塵にしてやるぞぉ!!」


その時、突然レヴィの笑い声と共に周囲が激しく揺れた。

見ればレヴィの視線にある地面が抉れて煙があがっていた。


「馬鹿かアホ魔神!本番でそれやったら大事故だからね!?」

「エヘヘ、馬鹿って言ってからアホって言われた」

「うるせー!」


どうやら魔王役を気に入ったらしく、覚えたての台詞と共に魔王っぽく魔法を放ってみたらしい。


「大丈夫、本番じゃやらないから」

「練習で癖がついて本番でやらかすのがお前だ」


はあ、何するか分からんからほんと怖いよこのロリっ子。


「ねえねえジークさーん」


そんな時、近くで立ったままピクリとも動かないルシフェルが声をかけてきた。


「どうした?」

「木の演技してるんだけど、これでいいかなぁ」

「っ・・・!!」


あっぶない、爆笑しかけた。


「い、いいと思うぞ」

「そっかぁ・・・」


そして、再び黙り込むルシフェル。木にも台詞あんのに、ちゃんと台本読んでないなこりゃ。


「はぁ、楽しみだ」


なんだかんだで面白い劇が出来上がりそうだ。








それまでに余計な事が起きなかったら・・・な。



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