第十話 不幸少年の全力土竜叩き
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今日は20時にもう一話更新する予定です
当然の如く不幸な目に遭った俺は、とりあえず魔物の群れを片付けて、降りてくる2人を待った。
まったく、人の▒▒▒▒▒を噛み噛みするとは、どんな教育を受けてきたんだここの魔物は。
「ほ、ほんとに大丈夫なのか?魔物は片付いたようだが、噛まれていたような・・・」
「見ての通り無傷だ」
「・・・」
ポカーンとするエステリーナは置いといて、先に進むとしようか。
「あの、ジークさん・・・」
「なんだ?」
背後からシオンに声を掛けられたので振り返る。すると、シオンは俺と目が合った瞬間ふいっと顔を逸らした。
え、なんで?
「その、あの、ズボンが・・・」
「む?」
ズボンがどうしたというのか。
そう思って俺は自分のズボンを見る。
「ああ、なるほど」
よく見ればさっき噛み噛みされた▒▒▒▒▒の部分が千切れて無くなっており、おれのパンツが丸見えになっていた。その部分だけな!
あー、だからさっきエステリーナはポカーンとしてたのかぁ、そっかそっかぁ。
「このクソライオンもどき共がぁぁぁぁぁ!!」
「キャンッ!キャンキャンキャンッ!!」
俺が再び現れたライオンみたいな魔物相手に無双しているのを女子2人はその場から動くこともせずに見つめていた。
◇ ◇ ◇
その後、襲い来る魔物達を撃破しながら俺達はさらに奥へと進み、遂に最奥と思われる場所にたどり着いた。
道中でシオンにも戦わせたので彼女のレベルは程よく上昇している。
「ふむ、何も無さそうだな」
周囲を見渡しながらそう言うエステリーナ。
彼女は中々強かった。
どうやら炎魔法が得意らしく、剣に炎を纏わせて魔物達をバッサバッサ斬り伏せていた。
斬撃を食らって生き延びても彼女の炎に焼き殺される魔物達はまあまあ可哀想だった。
「この迷宮は比較的簡単に攻略出来たな。この程度だと難易度Cが妥当だろう。階層もたったの7層だしな」
「そうだな」
さて、何も無いしそろそろ帰ろう。そう思って俺が熱心に紙に情報を書き込んでいるエステリーナに声をかけようとした時、突然地面を突き破って巨大な何かが現れた。
「んなっ!?」
何だこいつ、モグラか!?
そう思ってしまう程にはモグラに似ているこの魔物。
「ちっ、こいつがフロアボスか!」
「フロアボス?」
紙を仕舞ったエステリーナがモグラみたいなやつを見てそう言う。
「迷宮には、必ずフロアボスと呼ばれる魔物がいるんだ。その数は迷宮によって違うが、フロアボスがいる場所は此処のように他とは少し違う造りになっている」
「なるほどっ」
「何もいなかったから既に誰かに倒されているのかと思ったが、まさか地面に潜っていたとはな!」
エステリーナが剣を抜き、炎を纏わせる。
「ここは私に任せてもらおう。ジーク、お前だとこの魔物ですら一撃で葬ってしまうのだろう?」
「ん、まあ多分な」
ここに着くまでに俺に襲いかかってきた魔物は全て一撃で倒している。それを見てエステリーナも俺の強さを分かってくれているようだ。
「私も、戦います」
そう言って俺の前に出てきたのはシオン。
現在の彼女のレベルは19レベルだ。
「もっとレベルを上げて、ジークさんに遅れを取らないようになりたいので」
「ふふ、いいだろう」
「そんじゃ、俺は見学させてもらうとするか」
いざとなったら俺が助けに入ればいいよな。
そんな事を思いながら俺は始まった戦闘を眺めた。
「はああッ!!」
エステリーナが炎剣を振り下ろす。しかし、モグラ型の魔物の爪に阻まれてしまった。
「《ウインドバレット》!!」
そこにシオンが風魔法を放つ。魔法はモグラ型の魔物の身体に命中すると、一気に弾けた。
おお、いい連携だな。この調子だと2人だけで倒せそうだ。
「だあッ!!」
「ギギァァッ!」
エステリーナの剣がモグラの身体を斬り裂いた。傷口から血が噴き出す。
そんな光景を眺めながら、俺はある事を思いついた。
俺の固有スキルである能力透視は、『相手のステータスを見ることが出来る』というもの。
別に『人間の』とは言われてない。多分魔族とかそのへんだと思われる魔神の1人、アルターのステータスを見る事も出来たし・・・。
魔物のステータスも見る事が出来るんじゃないか?
そう思って俺はモグラをガン見してステータス表示を意識した。
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◆◆WARNING WARNING◆◆
――――フロアボス――――
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〜モグリードン〜
レベル30
生命:600/1600
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ふむ、魔物相手だとそれだけしか分からないのか・・・。
まあ、こいつの名前と、残りのHPが分かるってのはありがたいな。
「おーい、二人共!そいつの残りの生命600だぞー!」
「むっ、本当か?」
「はい、ジークさんは相手のステータスを見る事が出来る固有スキルを持っているので」
「よし、なら畳み掛けるとしよう!」
そう言って2人がモグラ・・・モグリードンに攻撃を仕掛けた時、モグリードンは勢いよく地面に潜った。
「なっ!?」
「潜りましたね・・・」
少し地面が揺れているのはモグリードンが下を掘り進んでいるからだろう。どこから出てくるか分からないのは厄介だな。
「っ、エステリーナさん!」
「むっ!」
シオンがエステリーナに向かって声を上げた直後、2人の足下からモグリードンが飛び出した。間一髪2人はそれを回避する。
「くっ、潜るなこのっ!」
しかし再びモグリードンは地面に潜ってしまった。空いた穴に向かってエステリーナがなんか言ってるのがなんか可愛い。
「このままじゃ埒があきませんね」
「くっ・・・」
シオンはいつも通りの無表情で、エステリーナは悔しそうに俺に顔を向けた。
「よしよし、お兄さんに任せなさい」
俺は立ち上がると、2人を下がらせてモグリードンが先程から出たり入ったりしている5つの穴の近くに立った。
出たり入ったり・・・。
「さて、どこから来るか」
拳を握り、その時を待つ。そして、
「ギシャァァァァァ!!」
「待ってましたァ!!」
「ゲビャッ」
俺の隣の穴から飛び出してきたモグリードンに本気でチョップした。その衝撃でモグリードンは再び穴に落ち、地面にめり込んで死んだ。
「ほれ、終わったぞ。お、シオンレベルアップしたじゃん、おめでとう」
「はい、2レベル上昇したようです」
うんうん、中々成長してるなぁ・・・ステータスの話な。
「強すぎるだろう・・・」
「ふふふ、これが俺のパワーだぜ」
呆然としているエステリーナに笑いかけ、2人のもとに駆け寄ると、何故か二人共に顔を逸らされた。
あ、そういえば俺、▒▒▒▒▒噛まれてパンツ丸見えだったの忘れてた。




