第九十六話 決戦、堕天の間
~♪~〜〜♪♪
広い部屋にピアノの音が響く。
そして俺はその音を奏でる存在を視界に入れた。
「なんだなんだぁ?ピアノ弾くのが趣味なのかよ」
「ククッ、来たか」
俺の存在に気付き、演奏をやめてその女は振り返る。
「ようこそ、傲慢の大魔城堕天の間へ」
「あんまり歓迎されてなかったけどな」
濁った瞳で俺を見てくるのは、堕天使ルシフェルの姿をした魔剣アビスカリバーだ。
「しかし、貴様が生きていたとは驚きだ。おかげで計画が狂ってしまった」
「そいつは良かった。その計画を止めるのも目的の一つだったし」
「一つ・・・ということは、まだ目的があるということか?」
「ああ。寧ろ俺にとっちゃあそっちの方がメインだ」
確かに天界と魔界の争いに巻き込まれるのは人間からしたら迷惑過ぎる。けど、それより重要なのは。
「お前をぶっ潰して、ルシフェルを解放してやる」
「なるほど、そこまで把握してやって来たというわけか」
そう言うとアビスカリバーは魔剣を鞘から抜いた。
「どうやら、貴様は何回殺してもその度に復活してくるようだ。ならば二度と蘇ることの出来ぬよう奈落に落としてくれる」
「なら、お前は二度と喋ることが出来ないように粉砕してやるよ」
ほんの一瞬の沈黙、そして。
「蹂躙せよ、《傲慢なる神帝の威光》!!!」
次の瞬間、凄まじい重圧が俺を襲う。
さらに咄嗟に踏ん張った直後、俺の腕に何かが当たった。
「っ─────」
まずい。そう思った時には反射的に俺は横に跳ぶ。
「あっぶねぇ、動かなかったら腕落ちてたな」
「ククッ、前よりは楽しめそうだ」
今のはおそらくアビスカリバーの禁忌魔法による攻撃だ。発動中、相手の動きを制限する他、耐久を無視してダメージを与えるというとんでもない魔法。
さらに剣を振って発生させた、いわゆるかまいたちのようなものを放ってきているのだろう。あれをまともに受けると前みたいに全身ズタボロにされる。
「どうした、かかってくるがいい!!」
「この野郎、余裕ぶっこきやがって!!」
まあいい、当たって砕けろだ。
俺は魔剣を構えるアビスカリバー目掛けて駆け出した。
あの禁忌魔法の耐久無視効果。あれはつまりアビスカリバーからしたら俺の耐久が0ということにになるんだろう。
そこに7000~9000ぐらいの筋力で攻撃してくるから、普段の耐久度なら血が噴き出す程度の軽傷でも、腕が切断されるレベルの重症になってしまう。
けど、よく考えてみたら俺はあいつの筋力を上回る力を持ってんだ。
「馬鹿め、死ね!!」
「悪いけどそりゃ無理だ!!」
アビスカリバーが剣を振るう。それによって発生した斬撃が俺に迫ってくるのが分かった。
「おらあっ!!」
こいつの筋力では、俺のパンチの破壊力を上回ることは出来ない。だったら、そのまま斬撃を吹き飛ばせばいいだけだ。
魔力を纏わせて全力で腕を振るい、迫る斬撃に拳をぶつけた。一瞬俺の拳が切れたが、見えない斬撃は消滅する。
「なっ・・・!?」
それを見て驚いたアビスカリバーが、再び剣を振りかぶる。けどもう遅い。
狙うは魔剣。あれを粉砕すればルシフェルを────
「ククッ、いくら何でも魔神を舐めすぎだ」
「っぐ・・・!?」
魔剣を振りかぶった状態でアビスカリバーが翼を羽ばたかせる。それによって黒い風が巻き起こり、俺は吹っ飛ばされた。
「ちっ、どんだけ攻撃パターンあんだよ」
「《魂射りし黒樹弓》!!」
再び攻撃を仕掛けようかと思った時、アビスカリバーが魔剣を床に突き刺した。
「うおっと!?」
その直後、膨大な魔力が床に注ぎ込まれたのとほぼ同時。床を砕いて巨大な樹が何本も出現する。
「ハハハハ!!躱し切れるか!?」
アビスカリバーの笑い声とともに、巨大樹が一斉に動き始めた。まるで意思のある魔物だ。
「めんどくせえ!!」
そんな巨大樹の根がまるで生きているかのように動き、鞭のように振り回される。さらに上からは枝を弾丸のように発射してきやがる。
「おらぁっ!!」
とりあえず俺は一番近くにあった大樹を殴り、へし折った。奇妙な音とともに灰になるあたり、他の大樹も同じようにすれば消えるってことだな。
「なら一気に消し飛ばしてやる」
魔力を腕に集中、それを一気にぶっ放すイメージで。
「消えろ、クソ巨大樹!!」
全力で腕を振り切った。それによって発生した衝撃波が前方の巨大樹全てを呑み込み、城の壁ごと消し飛ばす。
「ほう、やるな」
「そろそろお前がかかってこいよ、アビスカリバー」
俺の挑発を聞いたアビスカリバーが口元を歪める。
「いいだろう─────」
「っ!!」
一瞬で俺とアビスカリバーの距離が詰まる。こいつ、俺より速いじゃねえか!!
「ぐっ!!」
振るわれた魔剣が俺の横腹を斬り裂いた。ほんと、厄介な魔法だな禁忌魔法。
「近接戦闘なら勝てると思ったか!!」
まるで嵐のような攻撃だ。すぐに俺は様々な角度から、超高速で放たれる斬撃を躱すのに精一杯の状況に陥る。
「ハハハハハハ!!どうした、これが限界か!!所詮貴様は人間、取るに足らない下等種族だ!!」
ルシフェルの顔で、声で、そんな事言うんじゃねーよ。
天使のような、優しい微笑みを見せてくれた彼女の表情は悪意に歪み、まるで悪魔のようだ。
「クソったれ・・・!」
「死ぬがいい!!」
俺が呟いたのとほぼ同時、アビスカリバーが放った斬撃が俺の頬を掠める。
「ククク、貴様はあの小娘を解放しようとしているようだが、もう遅い」
「あ?」
「既に奴の精神は完全に乗っ取った。もう貴様が奴に会えることなど二度と無いのだ!!」
・・・どういうことだよ。
精神を乗っ取ったって、ルシフェルが負けたってことか?俺と会ったときはまだまだ戦えるって・・・。
「ぐっ・・・!?」
気が緩んだ。その瞬間に俺の肩を魔剣が切り裂く。さらにアビスカリバーが翼を羽ばたかせて起こした風を浴び、俺は吹っ飛んでしまった。
「っ、あいつ・・・」
無理してたってことか。とっくに限界が来てたのに、強がってたってことかよ。
「もう貴様が戦う理由は無いだろう?大人しく殺されろ」
「・・・馬鹿が」
「は?」
「助けてぐらい言えっての」
精神を完全に乗っ取った?だったらなんだ。
「悪いけど、ルシフェルは俺が必ず助け出すぜ」
「しつこいんだよ、人間めが!!!」
周囲の空気が変わった。どうやら向こうも本気になったようだ。
「ならば貴様に教えてやろう!!我が禁忌魔法の真の力を!!」
とんでもない量の魔力が魔剣に集中する。これはやばいだろ。
「こいつ、まさか・・・」
魔神ルシフェルのステータス、それは。
ーーーーーーーーーーーーー
~傲慢の魔神ルシフェル~
★ステータス★
レベル:450
生命:8000
体力:9999
筋力:9999
耐久:8800
魔力:9999
魔攻:6500
魔防:6000
器用:3400
敏捷:7000
精神:1300
幸運:1000
★固有スキル★
・無し
★装備★
・不明
ーーーーーーーーーーーーーー
「禁忌魔法《傲慢なる神帝の威光》は、弱者の動きの制限、耐久無視攻撃ともう一つ、〝自身のステータスを相手のステータスより高くする〟という効果を持っているのだ!!」
おいおいおい、冗談だろ。筋力以外全部俺より高くなってんじゃねえか!!
「さあ、来るがいいジークフリード。もう貴様に万が一の勝ち目もないがなぁ!!」
圧倒的強者の威圧。
自分より強い相手と戦うのは初めてだ。けど、ここで退くわけにはいかない。
「上等だ・・・!!」
誰が相手だろうと、勝つのは俺だ。




