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異世界ディヴェルティメント〜不幸少年のチート転生譚〜  作者: ろーたす
フォーリンエンジェル〜天使と悪魔の聖譚曲〜
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第八十九話 SSS山登り

「ここが、SSSクラスの迷宮・・・天獄山ですか」

「ああ、私も訪れるのは初めてだ」


馬車で移動すること三時間、辺境の地にその山はあった。まるで人間達を見下ろしているかのような、巨大な山。


危険度SSSクラス迷宮、天獄山である。


「うわー、強い魔物がいっぱいいるね」


馬車から降りて山を見上げたレヴィがそう言う。


「分かるのか?」

「うん、レベルで例えると雑魚で80とかじゃないかな」

「80!?」


それを聞いたエステリーナは驚いた。雑魚で危険度Sクラスのフロアボスよりも強い可能性があるということだ。


「萎縮していられません」


しかし、シルフィは覚悟を決めたような表情で山を睨んだ。


「ご主人様のために、何としてでも頂上にたどり着かないと」

「そうだねっ!」


ロリっ子2人はやる気に満ち溢れている。それを見たシオンとエステリーナも気合を入れ直した。


「行きましょう、皆さん」


そして、4人は迷宮に足を踏み入れた。










ーーーーーーーーーーーーーーーー







「《炎をもたらす魔剣(フレイムブリンガー)》!!」


エステリーナが放った炎が魔物達を焼く。


「ガアアアアア!!」

「くっ、まだ倒れないか!」


かなりのダメージを負ったようだが、まだ魔物達は倒れない。


「《山崩しの暴風(タイラントストーム)》!!」


そんな魔物達も、二発目の上位風魔法には耐えきれなかった。


「はぁ、はぁ、やった・・・」

「大丈夫か、シオン。無理はするなよ」


しかし、シオンはかなりの魔力を消耗したようで、膝に手を置いて荒い呼吸を繰り返す。


「大丈夫です・・・あ、レベルアップ」


突然シオンの身体が輝いた。レベル80クラスの敵を何体も倒したのだから、いつもとは比べ物にならないぐらいの経験値をシオンは手に入れたのだ。


「レベルが42になりました」

「わ、私と並んでるじゃないですか・・・!」


それを聞いたシルフィが驚いた。とうとうシオンとシルフィのレベルが並んだのだ。


「ボクも1だけ上がったよ」


呑気にそう言うレヴィの現在のレベルは351だ。そう簡単には上がらない。


「というか、そっちにいた魔物達を全滅させたんですか?」

「うん、残しといたほうがよかった?」

「いえ、そんなことは」


シオンは改めてレヴィの実力を実感するのだった。





そして再び4人は頂上目指して歩き出す。

この迷宮は、斜面が急過ぎるのと、かなり強い魔物が山の周辺を飛んでいるため、外側から登ることは不可能だ。そのため内側にある道を進むしかない。


レヴィのレベルなら外側から登ることは簡単だろうが、今回彼女は他のメンバーに合わせている。


「ここは・・・」


そんな時、明らかにこれまで進んできた道とは違う構造の場所にたどり着いた。


「気をつけろ、フロアボスが居るはずだ」


ゆっくりと彼女達はその場所に足を踏み入れる。しかし、そこにフロアボスの姿はない。


「ど、どこにいるんでしょう」


シルフィもキョロキョロと周囲を見渡すが、やはりフロアボスは見つからない。


「・・・来るよ」


そんな中、レヴィが天井を見上げながらそう言った。皆が上を見ると、かなり上まで続く大きな穴が空いていることに気がつく。


「っ、散開しろ!!」


エステリーナの言葉を聞き、シオン達は壁際まで移動した。その直後、穴から巨大な魔物が現れる。


「蜘蛛・・・!?」

「どうやらこの魔物がフロアボスのようだな!」


それは、紫色の巨体を揺らす蜘蛛だった。その強さはこれまで彼女達が戦ってきた魔物達とは比べ物にならないだろう。


「雑魚でレベル80ぐらいだったし、このフロアボスはレベル120とかじゃないかな」

「120・・・」


この迷宮はまだまだ先がある。最初のフロアボスでそのレベルなら、この先は・・・。


「グギャアアアア!!!」

「っ、《幻糸展開げんしてんかい》!!」


突然吠えた蜘蛛の身体にシルフィが創り出した糸が絡みつく。


「硬い・・・!」


しかし、その糸では蜘蛛の身体を傷つけることは出来ない。かなり耐久が高いようだ。


「《焔王裂翔斬えんおうれっしょうざん》!!」


そこにエステリーナが奥義を放つ。


「よし、これなら・・・」

「危ないっ、避けて!!」


手応えを感じたエステリーナに向かって蜘蛛が糸を吐き出した。その糸がエステリーナに絡みつくと、まるで釣りをするかのように蜘蛛が一気に口元に引く。


「《切り裂く水(ウォーターバイト)》!!」


しかし、その糸はレヴィの魔法で切り裂かれた。


「すまない、助かった!」

「どうする?あれだったらボク一人で片付けられるけど」

「いや、少し待ってくれ」


何か秘策でもあるのか、エステリーナはそう言うとシオンの元に向かった。


「シオン、前に言っていたこと、今出来るか?」

「はい、ある程度魔力も回復したので」

「ならやろう。シルフィ、そのまま蜘蛛を抑えていてくれ!!」

「了解!」


幻糸で蜘蛛が動けないようにしているシルフィも、少し苦しくなってきている。


「よし、いくぞシオン!」

「はい!《山崩しの暴風(タイラントストーム)》!!」


エステリーナが駆け出したのを見て、シオンが上位風魔法を放った。そして、


「《焔王裂翔斬えんおうれっしょうざん》!!」


そこにエステリーナの炎が合わさり、魔法は巨大な炎の竜巻へと姿を変えて蜘蛛を焼いた。


「ギィギャアアア!!」


さすがに耐えきれず、蜘蛛はその身を焼かれて消滅する。


「や、やった・・・!」


まだ低いレベルの3人が、レベル120のフロアボスを倒せたのだ。それはとても凄いことである。


そして、シオンとシルフィのレベルは50となり、エステリーナのレベルは73となった。


「っ・・・!」


しかし、その勝利がもたらしたのは魔力切れ。シオンとシルフィは力が抜けて尻餅をついた。


「大丈夫か、二人共」


そう言うエステリーナもかなりしんどそうだ。


「大丈夫・・・ですけど、まだこんな序盤でこれはちょっと・・・」

「ああ、これがSSSクラスか」


このレベルで最初のフロアボスを倒せたことが奇蹟だった。この先どんなレベルの敵が待っているかはまだ分からない。


「でも、ジークさんのために進まないと」

「うんうん、頑張ろう!」


少女達による前代未聞のSSSクラス迷宮攻略は、まだ始まったばかりだ。

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