陽炎
最近、相変わらずダチはいないが、先生の教えてくれるギターを毎日繰り返し弾き、また、なんとなくだが、成績が上がってきた様な感触があり、生まれて初めての努力に心なしか充実した気持ちになっていた。
中3の夏休みの登校日の日だった。
朝、通い慣れた通学路を歩いていたら、交差点越しに、一昨年中学を卒業した、2つ歳上の、先輩たちが、族の暴走の帰りだろうか、真っ赤なロングの特攻服に腰まで垂れた長いハチマキを靡かせて、4、5人で歩いていた。
アァ〜ッ、あの先輩たちは、部活の現役時代、スポーツ万能で、よく市の大会で入賞してた印象がある。
中3の夏休みも、家庭教師の先生のおかげで、ギター→勉強と、充実し、また、先生から色々と、イイ意味での男の生き方みたいなのを学んだ。例えば、女の子への接し方のTPOなんかも、冗談半分で教えてもらった。でも、実際にリアルにカッコよくて、性格のイイ先生が話すと説得力があり、また、先生は人をあざむいてまで、人に良く見られたいとかは、全く心になくて、また、少し天然で、計算なんて面倒くさいタイプで、実際に女性にモテてたから、疑う余地はなかった。
2学期に入り、9月になった。
学校では、騒然とした、出来事がセンセーショナルに話題になった。
先に書いた、2つ歳上の族の先輩たちが車で事故って、亡くなったという話だった。見通しの良い、直線で事故ったらしく、話によると、シンナーでラリって事故ったということだった。でも、亡くなったのが、1度に4人亡くなって、生き残った先輩は、植物人間状態だった。
ウチの中学の卒業したヤンチャな先輩は、大体、みな、暴走族に入るのが恒例だった。今まで、亡くなった先輩は、数えられないほどいた。
でも、ついこの間、暴走帰りの特攻服姿の先輩たちの後ろ姿を見たばかりで、また、よく知ってる先輩たちが亡くなったので、ショックを受けた。
その中の1人の先輩が、先日、学校に来て、今の俺の担任の先生と校門の前に単車を止めて話してるのを、思い出した。
その時に思った。
人の人生って、咲くのは一瞬で、儚くとも散る命があるのだと思った。