奇跡
中2も、学年末になってきた。
俺はというと、学校では、相変わらず浮いた存在で、一匹オオカミ上等です的な感じだった。無理して人に合わせて自分を窮屈にするのも面倒だったし、わりかし、1人が気楽で楽だなと思ってた。
家に帰ってからは、バンドスコアのタブ譜を見ながら、コードを覚えてた。これは、独学でギターを始めた人が最初にぶち当たる壁ではあるのだが、左手のコードは、抑えられても、右手のビッキングのタイミングとリズムの取り方がイメージ出来なく悩むのである。
どうにも、こうにも、ギター初心者の俺には理解不能で、頭を悩ませていた。
とあるある日、家庭教師の先生の曜日に、先生に勉強じゃないギターの事を質問した。
そしたら、先生が、
「スコア、見せて」
と言ってモノの30秒程でスコアを理解して、1曲弾ききったのである。
俺は、
「先生、スゲー!」
と感動した。
そしたら、先生が
「ピッキングのリズムが分からないんだろ?」
と言って、
「教えてあげるから、とりあえず、このテキストのココから、ココまで、集中して解いてみな、そしたら、ギター教えてあげるから」
と言った。
俺は、
「ギターが弾ける様になる為だったら何でもするゼ!」
と思って、小学2年の九九の暗記以来見せたことのない集中力を発揮して、テキストにのぞんだ。ちなみに、小学2年の頃は、九九が覚えられなかったら家に帰れなかったので、早く家に帰って遊びたかったから、必死になって九九を覚えたのである。
先生の、ギターを教えるかわりに、勉強も頑張れという学習法は、物の見事に俺にハマった。
今までに、経験したことのない位に、グングン成績が上がった。
でも、当時の俺は、自分の成績が上がってることよりも、
「ギターを上手に弾けるようになりたい!」
その一心だった。
テキストをする→先生がギターを教えてくれるの反復だった。
そして、先生が教えてくれた、ギターを、また、1人で無心で弾いた。もう、1日、100回は軽く弾いた。当時、ダチもいなかったから、かえって、自分1人でギターを練習する時間が山ほどあり、学校終わったら、脇目も振らず家に帰って、部屋にこもってギターをひたすら弾いた。
そして、先生に勉強を教えてもらう→テキスト出来たらギターを教えてもらう→1人でギターを弾くの反復だった。
いつの間にか、勉強は、偏差値35だったのが、中3の夏には、68まで上がってた。
自分でも、気づかないうちに、成績があがってた。
俺は、成績なんて、正直、どうでも良かった。ただ、ギターが弾けさえすれば。
でも、先生は、普通に、書店に売ってるテキストで、テキストが出来たら、俺にギターを教えるだけで、俺の偏差値を30も上げたのである。
でも、俺は気付いてなかった。
俺の成績が、地元でも有名な難関進学校に手が届きだしてることになんか全く気付いてなく、ただ、毎日、ひたすらギターを弾き続けた俺だった。