こんな夢を観た「カッパの頭を踏み台にする」
公園の池に、ハスの葉っぱがたくさん浮かんでいる。
「あのハスを踏んで、向こう側に渡ったら面白いに違いない」わたしは思いついた。
池の幅は、ざっと10メートル。一面に敷き詰められたハスの葉っぱを蹴って、あっちまで行くのはさも簡単そうに見えた。
助走を付けて、
「いちっ、にぃの、さんっ!」と、わたしは池に踏み込む。
最初の1歩がハスの葉っぱに着いた。
(あれっ? ずいぶんと、しっかりしてるぞ。もっと、ふにゃっとすると思ってたけど)
地面の上を走っているのと、まるで変わらない。
「普通に跳び越えたんじゃつまんない」
池の真ん中あたりまで来て、けんけんぱっ、で渡り始めた。
「けん、けん、ぱっ。けん、ぱっ、けん、ぱっ。けんけん……」
岸まであとちょっと、「ぱ」の部分に飛び移ろうとしたら、ハスの葉っぱがいきなり左右に広がる。
「ぱっ……あーっ!」両足とも踏み外し、そのまま、ぼっちゃんと落ちてしまった。
池は思いがけず深くて、ぶくぶくと沈んでいく。沈みながら、ハスの葉っぱだと信じていたものが、実はカッパだったと気がついた。
カッパ達は、皿だけ水面に出して、ゆらゆらと漂っている。ゆっくりと潜っていくわたしを、キッと睨みつけた。
(あ、ハスの葉のつもりで頭のお皿を踏んづけていったから、怒ってるんだ――)
池の底はまだかな、とぼんやり考えていると、体の浮力が沈む力にようやく勝って、次第に上昇してきた。
また、カッパが見えてくる。まだ恨めしげにしている。
水面すれすれに浮かび上がった時、カッパと向かい合わせになったので、手を合わせて「頭を踏んじゃって、すいませんでした」と詫びた。
「あばばぼぶんじゃば、ずびびばべんごぼぼっ」泡と一緒に、そんな音が口から出てくる。
危うく水を飲みそうになったわたしは、慌てて池から顔を上げ、岸に向かって手を掻き始めた。
池の端にしがみついて、這い上がろうとした時、肩をぽんっ、と叩かれる。振り返ると、1匹のカッパがニヤニヤ笑いながら立ち泳ぎをしていた。
「さっきは、よくも大事な頭の皿を踏んでくれたな」カッパが言う。アヒルの鳴き声にそっくりだ、とっさにそう思った。
「ですから、あやまったじゃないですか。それに、公園の池にカッパが住んでいるなんて知らないし」わたしは言い訳をする。
「お前に呪いをかけてやったぞ。それはそれは恐ろしい罰だ。覚悟するがいい」
「えー、そんなっ。いったい、どんな呪いをかけたんです?」わたしは聞いた。
「寿司屋に行っても、マグロやハマチ、甘エビやウニ、イクラが食えなくなる」
「エンガワやホタテは?」
「どれもだめだ。カッパ巻きだけにしろ」
そう言いうと、水を撥ね上げて潜ってしまった。