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02:Episode 21

ペレグリン学院に戻った2人を最初に待ち受けていたのは、勿論ソウガとニーナだった。

別段、感動の再会と言う訳では無い。

学院からの外出許可は2人とも提出済み。カナデの方は第三者の手による若干偽造気味な後出し発行だが、幾ら他の生徒に比べて外出が頻繁していると言っても学院側の許可が出ている以上、彼等もソレは理性で納得している。


家庭の事情――――。

曖昧だが最も効果的な切り札ことばを出されてはソウガもニーナも深くは追及出来ず、


「おかえりなさい、2人とも」

「よく戻ってきてくれたな」

と簡単な挨拶を交わすだけに終わった。







その後、小隊“ケントルム”はいつも通りに基礎訓練に終始する。

元々、フュルギア姉妹が参加する以前からこの隊は他小隊との折り合いが悪い。故に大体が隊内での活動に限定されてしまうのが現状だった。



「なぁ、サヤカ」

「んー…?」

ソウガの耳打ちにサヤカはのんびりとした声で返す。



「アイツ、変わったな」


指差す先には仮想敵を想定イメージして演武を披露するカナデの姿だった。



今までスイッチの様なモノが在り、其処で一拍の呼吸の様な僅かな切り替えの隙が在ったカナデの行動は、今では何もせずに自然体のまま手際良く動いている。

何故、変わったのか。

それが不思議で仕方の無いソウガだったが、サヤカは全く意に介さない様子で愉しそうに微笑んだ。


「あれが、あの子の本来のチカラ。今までのカナデちゃんと思うと痛い目を見るよ?」



「だからさ、隊長殿。いつまでもこうして基礎訓練ばかりするじゃなくて、そろそろ動き出す頃かなって思うけど?」


対外試合でも良いし、ギルドの依頼でも良い。

大体、幾ら基礎訓練を施しても実戦で磨かなければ意味が無いのだ。勿論、前者が厳しい事はサヤカ自身理解している事なので、期待しているのは後者だ。


―――――そろそろそんな時期でも良いだろう。


そんなニュアンスを込めてソウガに振れば、彼は顎に手を当て考え込む。



暫く考え込むこと数分――――。



「……そうだな。よし、一寸待ってろ!」

そう言い残すとソウガは何処かへと走り去っていった。




「………行っちゃいましたね」

「ましたねぇ」




「副隊長の私に話すらせずにまた勝手な事ばかり………」

何も相談されない事に対し、少々不満げなニーナだった。






























待つ事、数時間後―――――。

漸くソウガが帰還した。その手には何やら書状が握られている。



「どうだ、コレで」


ギルドに行ってきたぜ、とソウガは満足気な表情で書状を開き、皆に見せる。

任務内容を単純に言えば、使者の護衛。此処クレストアから西方のエーリヴァーガルの比較的に過疎化した辺鄙な地方からの依頼であった。




―――――エーリヴァーガルからなんて珍しい。


それが正直なサヤカの感想だった。


エーリヴァーガルと一括りにされているとは言え、国家としての枠組みや仕組みは滅多に意識出来るものもなく、緩やかな連合体とも少々色合いが異なる。

下手をすれば鎖国にも等しい様な協調姿勢があまり感じない集落が存在し、閉鎖的なかの地域。そんな場所からこの時期に何を慎重に送らせようとするのか、興味本位の疑問が浮かぶ。



「後、今回の任務で隊長を務めてくれる人を紹介する」



「さ、入って来て下さい」


銀髪のエルフ女性が入ってきた。

その容姿、見間違える筈も無い。カナデは驚くように目を見開き、思わず「ノーマリィ!」と叫んだ。



「………お知り合いですか?」

ニーナの言葉にカナデは笑顔を浮かべる。


「うん。以前、依頼を受けた時に一緒に依頼を受けて貰った仲だよ」



「初めての人も居るので自己紹介を。私の名前はノーマリィ=デイナンよ」


「私はニーナ=メリウェルです」


「私はサヤカ=フュルギア。先日は妹がお世話に成りました」

サヤカが一礼するとノーマリィは「否」として首を振る。


「そうでも無かったわよ。寧ろ此方が助かった位だから」


―――――カナデもやるようになったねぇ。


ノーマリィの感想にサヤカがニヤリと笑みを浮かべるとコホン、とソウガが一息入れて話を中断させる。



「………ゴメンナサイ、話が逸れたようね。兎に角、私達はエーリヴァーガルから使者を此処クレストアに無事向か入れれば良いって訳よ」



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