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21:Episode 19

「………は?」


カナデは今聞いた言葉を反芻して、狐につままれた様子で訊き返した。

飛龍が到着した先にて、何やら色々陰で動いる姉、サヤカから齎された情報にである。



「“送還の儀”を行う?」


―――――ちょっと待て。


そんな簡単に行えるのであれば、何故此処にサヤカが居る。

否、そもそもあれ程故郷に焦がれていたサヤカが何故此処に留まっているのか。



「あのね、何かカナデは勘違いしてる。私の場合は、戻らないだけ」


「何で?」

カナデの単純な疑問に対し、暫く思案する様な素振りを見せたサヤカは観念する様に深々と溜息を吐いた。



「私はね、この星に遍く星霊との契約者。言わば、ヒトの形をした別の生き物になる。当然、時の流れも私と彼女――――えぇと、詩音さんの場合とは全くと言って良い程違う契約をしたから、詩音さんの場合は正式な洗礼を受けていないと思う」

「見れば直ぐに解る」と語るサヤカの言動に、シオンはよく解らないと言った表情をしている。




「………まぁ、取り敢えずは、“蒼龍”待ちか」

また2人に対してサヤカは解らない事を呟く。



―――――謎だらけの姉。


カナデ視点ではソレが深まった気がする。


















暫く待っていると扉が一定のリズムでコンコンコンと音が鳴った。


何の来訪者だろうか。

カナデは思わず身構えるが、サヤカは片手を上げて「その必要はない」と制す。



「蒼龍です。予定通り、北の御子を連れて参りました」


「どうぞ」とサヤカが気さくな返事の後、仮面を付けた女性と少年が入室する。

仮面を付けた女性――――恐らく蒼龍と言う名だろう―――――がサヤカの姿を見るなり、溜息を吐く。


「外さない約束でしたね、朱雀」


「任務上素顔の方が手っ取り早い時もあるってこと」


「……それで、其処の彼が?」


加門カモン 健人ケント


無愛想な自己紹介に蒼龍は眉を顰めるが、当のサヤカが何も気にしていない以上、何もするつもりも無い。

彼女は「手筈は済んでいるから、さっさと始めよう」なんて言っている始末。既に彼の態度等意に介す必要も無いと見える。



「送還は至って簡単かな。既に向こうへの書状は持たせてあるから……2人とも、部屋の中央へ寄って」

そう言ってシオンとケントを中央へ寄らせ、サヤカは何やらブツブツと詠唱を始めると床下から複雑な紋様をした魔方陣が浮かび上がった。


両手を床に付け、「ハァッ!」と掛け声を掛けると魔方陣が起動する。


「…………今度は道を踏み外されないように、ね」

別れの言葉を口にすると彼等はこのセカイから消えて行った。




























送還の儀が終わると蒼龍は「では、また」と部屋から去って行き、此処にはサヤカとカナデの2人きりしかいなくなった。


気に成る事は多くあった。

朱雀、と呼ばれたこと。

混乱が起きたビフレストに対する介入行動のこと。


―――――でも、今は聞かない。


いつか話してくれるであろう日を信じて。

サヤカと対等に向き合う自分自身に成る事を目指して。



「さて、私達も帰ろうか」



「うん」


学院に戻れば、ソウガやニーナの御小言が待っているのかもしれないがそんな事は大した問題ではない。

それが私の、私達の日常。孤高を貫き、生きたミルティアではない。カナデとして生きる私の全て。



私達の日常はまだ続いて行くのだから―――――――。




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