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12:Episode 10


――――エーリヴァーガル。


東方のビフレスト王国に対し、西方に存在する地方で国ではない。

景観は人々の侵入を拒む様な密林に覆われ、主に星霊の類が集まり、また北方の混乱地域や南方のクレストア国とは異なった集合体である。




とある場所にポツリと存在する城――――と言うより、小さな屋敷。

其処には4人分の椅子が用意され、既に3人が席に付いている

だが、其々深々とフードを覆い、仮面を被っている為、其々の顔を窺い知る事は出来ない。


星霊の名の下に集った代表格“四霊”。

朱雀、蒼龍、玄武、白虎、と呼ばれる者が其処に居る。



「数々の招集に応じないと思えば、漸く今回で顔を出しましたか。―――――朱雀」



「ソレについてはノーコメントかな、蒼龍。……それと、久しぶりだけど元気そうだね、蒼龍、玄武、白虎」


「主もな」

玄武が返事を出し、白虎はフッと笑いで応じた。



滅多に集まる事のない四霊と呼ばれるモノ達。

その彼等が、召集に応じた理由は一つ――――――。この大陸における大事が起きた時だ。


「一寸ビフレストで気に成る情報を仕入れね」

開口一番、白虎が議題を語れば蒼龍が「気になるとは?」と訊き返す。


「旧ヘルヘイムの鉱山をビフレストが狙っているって話さ」


旧ヘルヘイム。嘗て帝国と呼ばれ、大陸制覇を目論んだが、“御子”により駆逐された国。

確か、現在は帰属が定かではない場所が存在する。嘗ての力の無いかの地域からの奪取は絶好機だ。



「確かにビフレストも多額な産業投資に勤しんでいますが……現在の旧ヘルヘイムは、中立の筈では?」

そう言って蒼龍は溜息を吐く。



「まあ、大陸間協定等、当に廃れておる。北方の旧ヘルヘイムが侵攻して以降、在って無い様なモノじゃ」

実際問題ヘルヘイムの台頭以降、御題目すら霞んでしまった“大陸間協定”。

それを知る玄武の諦めにも似た溜息に蒼龍、白虎も頷く。


正直、今のビフレストには目に余るものが在る。

だが、四霊が全て動けば、エーリヴァーガルの沽券に係わる上、1人1人が圧倒的な技量を持つ彼等全員が当たる仕事でも無かった。



ふとそんな時、沈黙を保っていた朱雀、と呼ばれていた少女は仮面を外した。


「蒼龍と玄武、白虎が動けないなら――――」


フードを脱ぎ、露わになったその姿。


「私が動く、かな」

サヤカ=フュルギアその人だった。



「それは飛鷹“卿”としての判断か?」


態々この席で仮面を外した。

そんな皮肉を込めて玄武が問えば、朱雀――――サヤカは「いや」と首を振った。


「私は“御子”だよ。均衡を保つ天秤の調整は手馴れているからね」


「……手馴れている、ね」

何処か含みがが在る白虎は渋々と言った様子で頷き、了承する。


「じゃあ、お手並み拝見と行こうかのう」

何処か図る様な玄武。


「くれぐれも無理をせぬように………」

蒼龍は彼女の身を案じる様に祈りをささげる様な仕草をした。


















目の前に広がるのは岡を埋め尽くす大軍が居る。

対峙する様に深紅のフード付きローブに覆われた少女――――朱雀の仮面を被ったサヤカが其処に立ち塞がる。



「さて、久々の血戦か………」

全く感情の籠らない声で呟くと敵側も宮廷魔導師や一騎当千の騎士を想定しているのか、戦闘態勢を整える。



何時でも飛び掛かれると言うのだろうか。

だが、その隙間がサヤカにとって好機。



「イージス、殺傷設定解放。形態はロングレンジ対応」

剣を抜き放つやいなや、暴風の如き金色の極光が軍勢を呑み込んだ。



それでも全滅とはいかない。

咄嗟に危機を察知した魔導師陣が防壁を張り、損害を半分位に防いでいる。


「……っ!中々良い魔導師陣が居るのかな」

サヤカは唯淡々と空中に飛び上がり、剣の先を軍勢に向ける。


『我、契約せし星霊達よ。その名に恥じぬ劫火を此処に示せ』


すっかり現代では廃れた言霊を口にすれば、


「え、詠唱だと!?」

敵は今相手にしている“怪物”の力量に戦慄し、恐怖を浮かべる。



「はぁっ!」

迸る劫火は防壁を易々と崩す。

其処へ再び剣を振り抜けば敵は無防備。成す術も無く金色の極光へと消えて行った。






―――――終わった。


其処には生ける人は居なかった。

無残な黒焦げの兵士等、まだカタチを保てているから良い。極光に掻き消された兵士は消し炭と成り、この世から存在が消えている始末だ。



「うぇ…」

思わずサヤカは口元を押さえてしまう。

何度見ても慣れない戦禍。あの時、散々見た筈なのに――――未だに生理的嫌悪感が抜け切れない。

いっそ、全て極光に消えてくれた方がまだ幾分かマシだ。



「………やはり、来てみて正解の様ですね」

ふと声が聞こえ、振り返れば其処には蒼髪に蒼龍の仮面を付けた女性――――蒼龍が居た。



「何したのかな、蒼龍」


失態を見られた。

そんな感情からジロッと蒼龍を睨むサヤカだったが、蒼龍は大して気分を害した様子も無く、唯眉を哀しげに寄せている。


「貴女は優し過ぎる。……ビフレストへの再警告等を含め、後始末は私が負いましょう」


若輩のサヤカの行動等、全ては御見通しだった。

意気揚々と啖呵を切ったのは虚勢だと。本当の飛鷹 彩華は、戦場を駆け抜けるべき存在に成り切れていないと。


―――――慣れない方が正常だと言うけど、やっぱりその辺が役立たずなのかな。


「ゴメン。迷惑かける」

態々駆け付けた蒼龍に全てを委任するとサヤカは踵を返し、元の在るべき場所へと帰還する事にした。






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