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うちゅうじんがせめてきたぞ!!!

掲載日:2025/12/12

槙枝まきえだ総理、宇宙人が、都庁の真上に宇宙船が!」

「あんな分かり易いUFO、作り物に決まっておるだろう」

「いえ、それが地球の主要都市にも!」「壮大なドッキリか?!」


 結果を言うと、

 まさかのどっきりでも何でもなかった。


「官房長官、それで宇宙人からの通信は」

「はい総理、地球を植民地にするそうです」

「なぜまた急に」「地球が田舎すぎて、これまで来れなかっただけのようです」


 世界地図が広げられる。


「この赤い点が」

「はい宇宙船の場所、すでに宇宙から地球の観測データであのようなUFOに」

「わかったうえでのアレか、アダムスキー型の」「飛来した場所は人口上位、二十か国です」


 赤い数字も書かれている、人口順だ。


「抵抗は出来ないのか」

「それが、宇宙人は勝負をしたいと」「何のだ」

「それぞれの国が得意な、好きなスポーツで良いそうです」「宇宙人とか」


 宇宙人とスポーツ対決、だと。


「二十番勝負、一か国でも勝てば撤退もしくは対等な友好条約、好きな方をと」

「しかし負ければ」「植民地化です、どのようになるかは『想像の通り』だと」「ううむ」

「ちなみに十一か国目からは引き分けでも勝ちで良いそうです」「我々日本は」「十一番目です」


 つまり、引き分けでも良いと。


「スポーツは、本当に何でも良いのか」

「それが、ただしその国で広く知られているもの、

 つまり自国民ですら知らないようなものや、まったく新しいスポーツを造り出すのは禁止で」


 日本のスポーツといえば、相撲だが。


「まず最初に戦う国は」

「インドですね」「となると」

「カバディか、クリケットか、ヨガか」「最後はスポーツか?!」


 結果、カバディで宇宙大連合が圧勝した。


(まずい、奴ら……宇宙人、地球の事を知り尽くしているかのようだ)


 地球軍、まずは一敗。

==========================================

「そうか、やはり中国も負けたか」

「はい総理、ただ今後、参考になる話がいくつか」


 官房長官が資料を渡す。


「スポーツの一覧か」

「はい、そして今回、中国は三つの競技を提案しました、太極拳、麻雀、そして今回負けたeスポーツ」

「いや太極拳はスポーツか? 前回のヨガでも思ったが」「宇宙連合側は、ヨガも太極拳も却下してきました」


 そもそもスポーツの定義とは、

 という話になってくる、そこでの一覧表だ。


「それで麻雀は」「スポーツに含んでも良いが、運の要素が強いものは対戦回数を多くするようにと」

「そうは言っても、麻雀はテクニックも必要だろう」「ですから運の度合いですね、そして実際に対戦したのが」

「eスポーツという訳か」「結果は大惨敗、こうなってくると『勝てるスポーツを探せ』という状況です」


 しかも、ある程度知られている、である。


「ジョギングだって、わが国ではラジオ体操だってスポーツと言えなくもないが」

「あくまで相手は『侵略』に来ている訳ですから、勝ち負けのあるスポーツしか駄目だと」

「つまり、一緒にヨガや太極拳や安来節では」「採点競技にする手もありますが、それでも負けそうです」


 こうなると、頭を抱えるしかない。


「あくまで対戦……これはどうだ、日本Aチームと宇宙人Aチーム、

 そして日本Bチームと宇宙人Bチームの合同チームで対戦、どっちが勝手も仲良し」

「……提案はしてみますが、おそらく却下されるでしょう」「そうか」「何か勝てるスポーツを」


 eスポーツが良いのであれば、

 何か他のものを……将棋、囲碁、バックギャモン……

 すごろく、は運の要素でしかない、パチンコなどもそうだろう。


「知恵は集まっているのか」

「はい、宇宙人対策チームを、ありとあらゆる分野から」

「分析結果は」「今の所、勝てるスポーツは……引き分けの可能性があるスポーツを探しています」


 我が国は十一番目、

 よって引き分けでも勝ちとして扱って貰える。


「……何か、何かあるはずだ、少なくとも自国で知られていれば、

 極端な話、競技でさえあればスポーツでなくとも……何かないのか」

「例えば動物を使うものとか、宇宙人には理解できない競技は無いのか、とか」「そこだ」


 宇宙人がわからないスポーツ、

 いや競技……いかに外部から分析していても、

 何かあるかも知れない、地球人だけが、いや、日本人だけが理解できるもの……!!


「総理!」「なんだ秘書官、慌てて」

「アメリカが……アメリカが、負けました」

「競技、スポーツは」「アメフトです、アメリカは一点も取らせて貰えませんでした!」


 肉体系スポーツは、絶望か。

=========================================

「総理、インドネシアが破れまいた」「ああ、中継を観た」

「ご感想は」「あいつら、何にでも適応しているな、やはり」


 カバディに対してはカバディ星人、

 アメフトに対してはアメフト星人、

 そしてついさっき、バトミントンにはバトミントン星人が出てきて破れたようなものだ。


「ちなみに総理、バトミントン以外では水球、ボディビルディングが候補だったそうです」

「……宇宙人の『先輩、切れてます』は見て見たかった気もするが」「宇宙軍はどんなのだって出してくるでしょう」

「して、こちらの会議は」「それが、『日本ならではの競技』という所で意外な方向に」「ほう、それは」


 日本人だからこそ勝てるスポーツ、

 いや、競技でも良い、それはいったい……?!


「漫才です、漫才で宇宙人を笑わせて撃退しましょう」

「……正気か?」「はい、日本には笑いで競い合う文化があります」

「通用するとは思えないが」「逆に相手を、こちらも笑わなければ良いのです」


 なるほど、向こうがこちらを笑わない、

 こちらも向こうが笑わないとなるとだ、

 その競技の結果は、当然……引き分けか。


「宇宙軍は認めてくれそうか」

「事前の打ち合わせが何度か」

「では、ひとつはそれで行こう、他には」


 案は多い方が良い。


「eスポーツの結果を受けて浮かび上がった案なのですが」

「中国が敗れたときか」「はい、我々人類が宇宙軍に勝てないなら、

 ある意味、代理を立てるのはどうかと」「誰にだ」「AIにです」


 最新のAIに戦わせるのか。


「それはどのとうに」「やはり将棋かと」

「……漫才といい将棋といい」「スポーツではありませんね」

「だが、それを受けるかどうかは相手次第という訳か」「早速、それも手配を」


 しかし何だ、

 こうなると、きちんとしたスポーツで勝ちたい気もするが……


「それで次の国は」

「五か国目、パキスタンですがクリケットだそうです」

「やはりクリケット星人が出てきそうだな」「それだと将棋にも将棋星人が」


 結果、地球軍は五敗目を喫した。

=========================================

「ナイジェリアも駄目だったか」

「はい総理、レスリングで同じ階級にするというアイディアは良かったのですが」

「やはり体重が同じであっても、レスリング星人はレスリング星人だった、と」「ですね」


 地球六敗目の報告を聞きつつ、

 日本が宇宙人側とした打ち合わせについて聞く。


「それでルール調整は」

「はい、まず漫才ですが『それはさすがにスポーツでは無いだろう』という反応が」

「それはそうか」「もしやるとしても、審査は共同でAIを作ってそれにさせるとか」


 日本と、地球と共同か、

 そんなに早く出来るのかというのと、

 出来た所であきらかに宇宙人有利になるだろうと容易に想像できる。


「他に打ち合わせ内容は」

「駄目元で『すごろく』を提案しましたが」

「100%運だから無理だろう」「いえ、説明の時にとんでもないことが」


 サイコロを取り出して転がす官房長官。


「どうした」「このように普通はランダムなのですが」

「まさか」「はい、宇宙人がまず数字を指定して、その目を必ず出すという」

「凄いな」「瞬時に投げ方をマスターしたとでもいいますか」「選ばなくて良かったな」


 むしろ、宇宙軍が却下してくれた事に、親切心すら感じる。


「それで競技候補は」

「将棋でこちらがAIを使う事は許可が出ましたが、まだ決定ではありません、もちろんこちら側の問題です」

「他の候補か」「はい、対策本部では『盆栽』はどうかと」「それこそ共同AIによる審査になるな」「厳しいですね」


 そもそも本当に、

 AIに日本、地球の未来を託して良いのかというのがある。


「それと副総理が」「あの爺さんが、いや、鷲澤副総裁がどうした」

「とっておきのコネで、対策会議に助っ人を連れてくると」「それは誰だ」

「近々、総理にも会わせるそうです、信頼出来る方だと」「有名か」「らしいです」


 そしてテレビの画面では、

 ブラジルが破れたニュース速報が流れた。


「官房長官、ブラジルの選んだスポーツは」

「F1です、あらゆる技術的にも地球側が有利と思われたのですが」

「まさかF1星人が」「マシンは同等の物を用意したはずですが、やはり適応能力が凄まじいのかと」


 七敗目を喫した地球軍、

 いよいよ日本の出番が迫る。

==============================================

「やはりAIを駆使しても駄目だったか」

「はい総理、バングラデシュが各国の協力を得て、

 世界最強のAIで挑んだチェス対決、72秒で負けました」


 相手はチェス星人なのか宇宙連合AIなのか気になるが、

 こちらの科学力でも到底、及ばないという事実を突き付けられた。


「次はロシアか、何で行くと」

「フィギュアスケートか、耐久コサックダンスか、もしくは戦争だと」

「そんなの地球にでかい穴が空いて終わりだろう」「せめてもの抵抗かと」


 次の順番の事も考えて欲しい。


「芸術点の入る競技は共同AIが審査するのだったな」

「あとスキーのジャンプ競技も浮かんだそうなのですが」

「やはりスキー星人が」「いえ、空中に浮く宇宙人を見て、諦めたそうです」


 こうなると人間の、

 いや日本人ならではの特性を考えるべきか。


「こちらの、日本の案はどうなっている」

「これもスポーツとは言い難いのですが……投扇興とうせんきょうを御存じでしょうか」

「芸者遊びか」「点数を競う、日本独自のスポーツとも言えなくも無いです」


 さすがに『投扇興星人とうせんきょうせいじん』は想像がつかないな。


「勝てるのか」「神が、669戦669勝の猛者が」

「それに賭けるか」「今のところは」「しかしなあ」


 相手は振り方で好きにサイコロの目を出せる連中だ、

 扇子の投げ方ひとつ、軽い練習で完全習得されても、おかしくない。


「他の案は」「花札、紙相撲、ゲートボール」「ゲートボール星人が来るな」

「あとクイズ対決」「どうせ奴らは地球を知り尽くしているのだろう、無理そうだ」

「古代オリンピック競技にもなったオペラ」「オペラ星人は見てみたいな、この侵略に勝ったら呼ぼう」


 あいかわらずスポーツ一覧表を見るが、

 勝敗がつく物はどれも勝てる気がまったくしない、

 そして勝ち負けの無いスポーツは拒否される……これはもう詰みに近い。


「本当に起死回生の一手は無いのか」

「探しています、スポーツに限らず、にらめっことか」

「俳句、川柳」「それなら引き分けに持っていけるでしょうか」「いや、自分で言って何だが、スポーツじゃないと弾かれそうだ」


 頭を抱える総理、

 うなだれる官房長官。


(くそっ、誰か、誰でもいいから、助けてくれっ!!)


 なお、ロシアはサンボ対決で敗れた。

==============================================

「メキシコが負け、これで十敗、折り返しか」

「総理、他人事ではありません、次に戦うのは我々、日本です」

「そうだったな、宇宙軍との最終打ち合わせ、その前の対策会議だ」


 国会の地下にある秘密会議室、

 そこで様々な有識者や学者が集まり、

 知恵を絞るが『これぞ』というスポーツが出ないままでいた。


「官房長官、メキシコ敗戦の詳細を」

「はい、宇宙連合軍に勝つためメキシコ古来のスポーツ、

 馬術競技『チャレリア』を選びました、他にも闘牛が候補にあったそうですが」


 日本人には馴染みが無いが、

 メキシコでは有名らしい、なので条件は合っている。


「動物を使う競技は我々も考えたな、犬ぞりとか」

「宇宙人は地球側が用意した動物を、馬を難なく手懐けたようで」

「どうしようも無いな」「この分だと、こちらで用意した馬での『競馬』も負けそうです」


 何か無いのか……

 ここまでの十番勝負、

 善戦すら無いと言って良いようだ。


「このまま今日、アイディアが出なければ日本はどうなる」

投扇興とうせんきょうですね、宇宙側は、他に無くてどうしてもと言うなら、だそうです」

「……明らかに余裕だな」「負けるでしょうね」「負けるとわかって闘う馬鹿は居ないと思うが」


 何か、何か無いのか……!!


「ちなみに次から、十一戦目となる我々からは引き分けでも勝ちに」

「わかっている、引き分けの可能性の高いスポーツは無いのか、何か!」

「地球上のデータですとサッカーですが、無理かと」「どうせサッカー星人が出てくるな」


 ゴールマウスを全身で覆っていそうだ。


「いっそこうしてはどうでしょう」

「官房長官、何かここへ来て良いアイディアが」

「SASUKEはどうでしょう」「圧倒的な力で完全制覇されるぞ」


 しかも恐ろしいタイムで。


「それです」「どれだ?」「もういっそ、素晴らしいクリアを見せて貰いましょう」

「諦めろということか」「せめて、最高のお手本を」「闘う前に負けるのか」「良い物が見られますよ」


 コンコンッ


「誰だ」「ワシじゃよ」「副総理!!」


 タヌキ爺が今更、何を。


「ようやく見つけて連れて来たわい、入れ入れ」「失礼する」


 入って来たご老人に我々は驚く。


「知っている……貴方は、あの伝説のスポーツプロモーター……『ドン村林』では!!」


 日本人にして、世界最高の!!


「なんでも秘策があるそうじゃ、のう、村林」

「ああ、この戦争、宇宙人に勝てるスポーツは……ひとつだけ、ある!!!」

=============================================

 対宇宙連合軍と日本のスポーツ対決、

 最後の打ち合わせを前に万事休すといった所で、

 副総理が連れて来たのは伝説のスポーツプロモーターだった。


『ドン村林』


 十八歳からスポーツに関わり、選手の通訳やマネージャーから始まり、

 ありとあらゆるスポーツ興行で世界を股にかけて暗躍した、ビッグマッチ仕掛け人……!!

 確か最後は東京のプロサッカーチームのオーナーになり、優勝させた後、隠居したはずだが。


「その、宇宙人に勝てる、たったひとつのスポーツとは」

「お初にお目にかかる槙枝総理、交渉次第だがこの私に任せていただければ」

「そのスポーツは、この一覧表の中に」「ある、ごく普通のスポーツ、とあえて言わせて貰おう」


 では、何か見落としがあったとでも言うのか。


「いったい何で戦えば」

「交渉は難しいが簡単なことだ、そもそも考えてくれたまえ、

 もし宇宙人が本気で地球を侵略したいのなら、もうすでにされている」


 戦力差は、あきらかだ。

 官房長官が村林に問う。


「確か宇宙法か何かで、対決をしないといけないと」

「そんなのはあっちの押し付けだ、それよりも、これは我々地球人を試しているのだろう」

「と、いうと」「地球がスポーツの上で、力で征しようとするのか、知恵を絞るのか、それとも……」


 和平の道はありそうな言い方に総理がひらめく。


「すなわち、戦わない、という選択をするのが答えだと?!」

「確かに『戦わない』と言えば相手も『なら我々も戦わない』という可能性も無くは無い、

 しかし『では次の、人口十二番目の……と、あっさり不戦敗になる方が可能性としては、高い」


 やはり、無理か。


「では我々は何で勝てば、引き分けでも良いが」

「そこで交渉だ、私の選ぶスポーツならば、宇宙軍は負けるはずだ」

「ということは、それだけ日本に有利な」「日本が有利という訳ではなく、仕掛けてきた宇宙軍の負けだ」


 そんなスポーツが、

 果たして存在するのかどうか。


「ふぉふぉふぉ、彼を信じるしか無さそうじゃ」「副総理……」

「とりあえずこれからの最終打ち合わせ、この私に全権をいただこう」

「総理」「……わかった官房長官、日本の、いや地球の未来を、彼に託そう」


 そして翌日、戦いのゴングが鳴った。

 世界トップクラスのスポーツプロモーターが選んだ、

 最強の宇宙人達に日本が勝てる、たったひとつのスポーツとは……?!

==============================================

「ワン、ツー、スリー!!!」


 カンカンカンカンカンッ!!!!!


「49分27秒、勝者、日本!!」


 まさかまさかの決着に、

 大盛り上がりを見せる超満員の国立競技場、

 スタジアムが、いや日本全体が、いやいや地球が揺れた大勝利である!


「おおーーーっと、奇跡の丸め込みが成功した!

 猫日本プロレスのJrヘビー級王者、波田"ストレイキャット"修選手による、

 必殺のフィニッシュ『ジャンピングスモールパッケージホールド』が体重386kgの宇宙人からスリーカウントを奪ったーーー!!」


 まさかという表情の宇宙人達、

 セコンドの宇宙人は頭を抱えている、

 そして勝った波田選手が満身創痍ながらマイクアピールを。


「見たか、これだけは言わせてくれ、プロレスこそが……キング・オブ・スポーツなんだよ!!!」


 その言葉に巨大宇宙人プロレスラーの四人がやってきて……?!


「おおーーっとこれは、握手です、更にはハグを!

 これはまさに平和条約締結といった感じでしょうか、解説の銀澤さん」

「いやあ、99.99%負けだと思ったあの一瞬の隙で、プロレスはこれがあるから素晴らしい」


 宇宙人と日本人が交互に並んで、

 互いに手を繋いで挙げている、四方に挨拶、

 背の高さが、その高低差がまるで『宇宙人に確保された日本人』のようになっているが。


「以上を持ちまして宇宙連合軍とのスポーツ二十番勝負・第十一戦、

 四対四の八人タッグマッチ、日本選抜対宇宙選抜のプロレス無制限一本勝負をお送りしました、

 解説はコング銀澤さん、実況はわたくし、ヨシ=ツジナリでした、日本が勝ったぞヒャッホー!!!」


 国立競技場の特別観覧席、

 全身の力が抜ける程に安堵した槙枝総理の横で、

 ほくそ笑む副総理と、涼しい顔をした勝利の立役者、ドン村林。


「ふぉふぉふぉ、さすが世界の『ドン村林』じゃて」

「プロレスはかつて、戦後日本で野球と並ぶ二大スポーツでしたからね、

 私が若い頃はプロレスや総合格闘技のマネジメントもよくやったものです」


 と、してやったりのドン村林に、官房長官が尋ねる。


「いったい、どういう交渉を」

「プロレスですからね、プロレスの対戦というのは、

 多くの場合は対戦を申し込んだ団体が最初は寝る、すなわち負けるんですよ」


 場内では何度も勝利の瞬間がリプレイされている、

 AIによるアンドロイドのレフリーが完璧なスリーカウントを入れた場面だ。

 総理も続いて聞く。


「そう決まっているのか」

「大前提としてプロレスは勝敗がつくにも関わらず最初から勝者が決められるスポーツです、

 ありとあらゆるスポーツの良い所取り、まさにスポーツの頂点、それこそがプロレスなのです」


 日本でも一時はオリンピック競技に、

 という声が上がった程の人気スポーツだ、採用される訳は無いが。


「しかし、普通なら負けでは」

「そこがプロレスなんです、相手が大きいメジャー団体であれば、

 格下相手に試合を申し込んでも勝てたでしょう、しかし宇宙にプロレスなんてものは、おそらく無いでしょう」


 確かに、こういう色々と微妙なものは宇宙では無さそうだ。


「だから日本が、地球のプロレスが格上だと」

「過去の事例でも対戦したい団体が乗り込んでまず負ける、

 そして後で星を返す、ゆえに波田選手は宇宙で第二戦をやらされ、それは酷い負け方を呑まされるでしょうな」


 しかし、それはこの戦争とは関係なくなる。


「……それでも、よく負けを呑んでくれたものだ、宇宙軍は」

「そこです、この私、ドン村林としては引き分けで良かった、

 現に一回限りの試合であれば、引き分けで仲良しという話で終わるはずです、それが……」


 なぜか負けてくれたと。


「それは、何かのメッセージか」

「そうです、宇宙人はプロレスというスポーツを知ってはいたはず、

 つまり『勝敗をつけながら平和に導く』という選択を、待っていたのかと」


 現にリング上では記念撮影が始まっている。


「なるほど、我々は試されていたと」

「さて総理、宇宙人に対して、追い返すか、それとも対等に」

「そんなのは決まっている、星は返さないといけない……宇宙人だけにな」


 こうして地球は、

 ひとりのプロレスラーによって、

 いや、ひとりのプロモーターによって助けられたのであった。


「いくぞーーー! いーち、にーい、さーーん、にゃーーーー!!!」


 ありがとう猫日本プロレス所属の波田選手、

 ありがとう世界最高のプロモーター、ドン村林!!

 そして地球に平和が訪れましたとさ。


 おしまい。

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