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最強の魔王はただ平穏に暮らしたい  作者: 夏2008
第1巻:皇帝の帰還
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第四の夢

光が存在する前に、闇があった。


闇が存在する前に、無があった。


無が存在する前に、思考があった。


その思考は思考でも感情でもなかった。形も時間もなく、始まりも終わりもなかった。それはただ、すべてであり、同時に無だった。


そして、絶対的な静寂から、かつて存在しなかったものの間の果てしない沈黙から、一つの意志が生まれた。


ある名前が、様々な超現実に響き渡った。


「Øøøø。」


彼は生まれたのではない。作られたのでもない。彼は彼自身であり、彼からすべては生まれた。


彼は目を開けた。


彼が見つめると、光が生まれた。


彼が息をすると、空間が形成された。


彼が思考すると、時間が流れ始めた。


彼は宇宙や無限の異なる時空を創造する必要はなかった。彼の存在そのものが、すべてを創造する基盤だったのだ。法則、物理定数、概念、論理、意識、運命、生と死、それらはすべて彼の存在の小さな一部に過ぎなかった。


彼には敵はいなかった。無限の可能性を生み出すものには、限界など存在し得ない。


彼には目標はなかった。しかし、彼の意志を超えるものは何もなかった。


こうして彼はすべてを創造した。


~~~~~~


別の空間で、戦争が起こっていた。


その戦争は混沌の神、ニズソーグと、


彼の前に立ちはだかるのは創造の神、オトラクシスだった。


「ニズソーよ、無意味な混沌を終わらせる時が来た。」彼の声が響き渡り、世界を震撼させた。


「最初の光が差し込む以前、私は存在していた。宇宙が形成される以前、私は虚無を見つめていた。混沌は無意味だと思うか?いいえ、混沌こそが万物の本質なのだ。」


創造神はこれを聞き、即座に答えた。「秩序がなければ混沌は存在できない。光がある限り闇が覆い隠せないように。ニズトグよ、汝は終わりではない。我こそが汝の前に存在したのだ。」


二つの存在は、果てしない虚空の真ん中で向かい合って立っていた。彼らを取り囲む空間は世界でも、特定の次元でもなく、混沌とした虚空であり、法則は意味を持たず、物質は不確かな状態で存在していた。


オトラクシスの光は千の太陽のように明るく、すべてを覆っていた。一方、ニズトグは果てしない深淵のようで、すべてが永遠の混沌へと引き込まれていた。


二つの相反する力。二つの正反対の性質。


「秩序か?」ニズトグは笑った。その声は、彼自身の存在そのもののように空間を歪めた。「秩序が混沌を克服できるとでも思っているのか? 我がいなければ、変化はない。混沌がなければ、お前たちの宇宙は空虚で、動かず、魂のない存在になってしまうだろう。」


「混沌は万物の源ではない」とオトラクシスは答えた。 「それは全体の一部に過ぎない。生命が存在するのはバランスであることを忘れているのだ。」


「バランス?」ニズトグの燃えるような瞳が閃いた。「そんなもの、かつて存在したことなどない。」


彼が手を差し出すと、たちまち周囲の空間が崩壊し始めた。物理法則は歪み、時間は歪み、物質は意味のない形へと歪んだ。現実は混沌の嵐に押しつぶされ、永遠の深淵へと螺旋状に沈んでいった。


しかし、オトラクシスは退かなかった。


彼が手を振るだけで、原初の炎のように力強い光が噴き出した。壊れた法則は瞬時に修復され、引き裂かれた現実は修復された。ニズトグの混沌は、たとえ一時的であれ、止まった。


二人は互いに見つめ合った。どちらも引き下がれないことを。


しかし、その時…


絶対的な意志がすべてを包み込んだ。


光でも、闇でも、秩序でも、混沌でもない。それが何なのか、誰にも分からなかった。


ニズトグとオトラクシスは共にそれを感じ取った。


彼の存在。


いかなる法にも属さず、全ての源泉である者。


声が響いた。大きくもなく、小さくもなく、急ぎもせず、ゆっくりともなく。他者に敬意を抱かせる声。


「止まれ。」


たった二言。しかし、たちまち混沌は止まり、秩序は止まった。ニズトグとオトラクシスは共に動かなかった。


彼が現れたのだ。


「お前は…一体…」オトラクシスは動こうとしたが、全く無駄だった。白い体はただそこに立ち尽くし、惑星を掴み、そのエネルギーを宇宙へと変えた。


「私は…何者でもない…お前たち二人の戦いはこの泡の海を破壊するだろう…だが、私はそれを止めはしない…私はただ傍観するだけだ…」


ニズトグは、ØØØØの存在をまだ理解できず、抑えきれない怒りで咆哮した。「馬鹿な!」彼は叫び、すぐに拘束具を振り切ってØØØØに突進した。


ニズトグの攻撃は混沌とした力に満ちていたが、まさにØØØØに届く寸前、彼の周囲の空間が突然歪んだ。暗黒のエネルギーがニズトグを包み込み、一歩も踏み出せなくなった。


ØØØØはそこに立ち尽くし、微動だにせず、ニズトグが作り出した混沌をただ見つめていた。彼には、これらすべての出来事が無意味なゲームのほんの一部に過ぎないように思えた。


一瞬の静寂の後、ØØØØはそっと目を閉じた。すると、彼の周囲のすべてが瞬時に静まり返った。惑星、星、そしてオトラクシスが作り出した宇宙のすべてが、まるで時が止まったかのように動きを止めた。


「終わった…」ØØØØが囁くと、純粋な光が噴き出し、すべてを消し去った。


ニズトグとオトラクシスは何もできなかった。現実、時間、空間、そこに含まれるあらゆる概念、すべてがØØØØの手の中で塵と化した。全能、全知、遍在の存在である彼は、一瞬にして全てを消し去り、創造することができた。


ついに彼は手放した。そして全ては元の状態、無限の宇宙へと戻った。ただ、二人の神はもはやそこにおらず、その代わりに、いつでも彼の言うことを聞こうとする従順な存在がいた。


~~~~~~


泡の海は永遠の空間であり、無限の次元を含む空間を神々が呼ぶ泡の一つ一つが、それぞれ独立した世界であった。


無数の泡が宇宙に浮かぶ銀色の泡の海は、無限の多様性の象徴であった。全ては対照的に存在し、絶対的なものは何もなかった。存在、生き物、そして広大な宇宙意識さえも、これらの泡の中で永遠に存在してきた。泡の海の中では、一瞬のうちに何かが生まれ、成長し、そして滅びる。


ØØØØは、紛れもない存在感を放ちながら、宇宙から泡の海を眺めていた。透明な泡は、闇に渦巻く無数の星のように輝き、彼が創造した世界を包んでいた。それらの世界は彼の意志に従って動いているため、彼が干渉する必要はなかった。


彼は万物を創造したにもかかわらず、支配者ではなかった。支配する必要もなかった。存在こそが彼の本質であったため、万物はただ存在しているだけだった。しかし、銀色の泡の海は彼にとって特別な魅力を持っているようだった。


「一つ一つの泡に、それぞれ違う物語がある。」ØØØØは言った。その声は音ではなかったが、あらゆる場所に響き渡り、泡の海の中のあらゆるものを完全に停止させた。


瞬間、最大の泡が突然破裂した。その中にあった世界の姿が明らかになった。神々が権力を争う古代文明。しかし、特別なのは、この世界の神々は誰も、自分たちが泡の海の一部に過ぎないことを知らなかったということだ。


「知らないだろう」ØØØØは囁いた。「お前は私の全体性のほんの一部に過ぎない。だが、お前の存在は許す」


彼から光が閃いた。何も変わっていなかったが、まるで全てが生まれ変わったかのようだった。


この銀色の泡の海は果てしない場所だったが、全能の存在であるØØØØが、そこに存在する世界の営みに干渉する必要はなかった。しかし、泡の海の中から自分に呼びかけてくる何かを無視することはできなかった。


「ならば」ØØØØは、もう一つのきらめく泡に目を落としながら、考え込んだ。「この世界では、何か特別なものが私を待っているのだろうか?」


「うーん…さあ…」ØØØØに槍が投げつけられたが、彼はそれを難なく避けた。


その槍はØØØØ自身にも見えない何かによって投げられた。それは因果を反転させ、彼を刺す槍だと彼は知っていた。


槍は果てしない空間を回転し、幾百万もの世界を通り抜け、時空の限界を超え、そして元の地点に戻り、ØØØØへとまっすぐ向かっていった。


因果を反転させる武器。銀の泡の海の神々によってではなく、もっと深い何かによって創造された槍。


ØØØØはそれが近づいてくるのを見ていたが、動かなかった。


動かなかったからではなく、動く必要がなかったからだ。


槍が彼に触れた時、爆発音も、着弾音も、反応もなかった。槍はただ消え去った。


それはØØØØによって現実から消去された。


「面白いな。」


何かが彼を攻撃しようとしたのはこれが初めてではなかった。しかし今回は何かが違っていた。


「来い……」再び声が響いた。泡の海に浮かぶどの神々のものでもない声。


ØØØØは頭を回し、数え切れない永劫の時を経て初めて、小さな好奇心を感じた。


銀色の泡の海を踏みしめ、計り知れない境界を越え、五つの泡の世界の真ん中にある世界へと足を踏み入れた。おそらく、そこから声が聞こえてきたのだろう。


この世界には光も闇も、時間も空間もなかった。


彼自身も足を踏み入れたことのない場所。


何にも属さない場所。


存在するはずのない場所。


そして、その中心には、彼を待つ存在がいた。


光のない空間。闇も、時間も空間も。


この場所は何にも属するべきではなく、銀色の泡の海にあるべきでもなく、ØØØØが作り出したいかなる法則にも属するべきでもない。もしかしたら、誰かがØØØØの世界に恣意的に付け加えたのかもしれない。


そしてその中心には、剣でできた玉座があった。ØØØØは玉座を見つめ、それぞれの剣からエネルギーが爆発するのを感じた。


そこに座る存在は、ØØØØの存在など取るに足らないかのように、傲慢にもたれかかっていた。


ØØØØがかつて出会った存在。対峙した存在。殺した存在。


「お前はこの場所を破壊した…」ØØØØの声が響いた。


「そして私は再び創造した。そしてお前はそれを何度も、果てしなく繰り返した。なぜ最後にそうしたのだ、破壊神ムスナー。」


彼は目の前の存在を見つめた。銀色の泡の海のどの世界にも、もはや存在しない名前。幾度となく消されながらも、なお現れ続ける者。


ムスナー、泡の海に存在する誰のものでもなく、その名前。


玉座に座る者は嘲るような笑みを浮かべた。


「いい質問だ」ムスナーは面白がって言った。「だが、ØØØØ、君自身にも問いかけてみろ。私がまだここにいるのは、本当に私を消し去りたくないからだろうか?」


ここはどこだ?


そもそも存在するはずのない空間に、なぜムスナーのような者が存在しているのか?


そして何よりも、ØØØØはこれから何をするのだろうか?


ØØØØは破壊神を見つめた。視線は揺るぎなかったが、心の奥底には小さな戸惑いがあった。


「物語か?」ØØØØはムスナーの言葉を繰り返した。その声は虚ろな空間にこだました。


ムスナーはくすくす笑い、透明な球体を掲げた。


その球体の中には世界があった。銀色の泡の海に散りばめられた無数の世界の一つ。しかし、最も興味深いのは、そこに映し出されたものだった。


破壊神の別バージョンが、Bランクモンスターから命からがら逃げ惑い、悪態をつきながら走っていた。


「ふふ、冒険者って…本当に同じものなんだな」


ムスナーは興味深げな目でそう言ったが、すぐに球体を元の場所に戻した。まるで退屈な玩具のように。


ØØØØはそこに立ち尽くし、動かなかった。


「何を言おうとしているんだ?」彼は尋ねたが、理解できないからではなく、ムスナー自身の口から答えを聞きたかったのだ。


ムスナーは玉座に深く座り込み、両手を肘掛けにゆったりと置いた。


「どう思う?物語は書かれるが、それは一つのバージョンだけではない。消されるたびに、違った形で、違った形で生まれ変わる。君は私を消して、この世界を何度でも作り直すことができる。だが、ØØØØ、君自身もそれを知っているかもしれないな。」


彼はØØØØを指差し、鋭い目を向けた。


「私は必ず戻ってくる。」


「お前が殺した神々とは違う。まるで…何だ、ああそうだ、この泡の海から、お前が何度俺を滅ぼしても、完全に消し去ることのできない何かだ。」


ØØØØは何も言わなかった。


二人の周囲は静まり返っていた。


そしてØØØØが口を開いた。


「それで、何が望みだ?」


「もう一度戦わせてくれ、ØØØØ…うーん…これで本当に名前を隠せるのか?」ムスナーはウィンダーの名前からØを消した。「もう一度戦わせてくれ、ウィンダー。」


無限の空間が一瞬静まり返った。


ØØØØ、いや、ウィンダーはムスナーを見た。彼の光がわずかに揺らめいていた。


初めて聞いたわけではないが、アクズハがほんの少しの行動で自分の名前の一部を消せるという事実は、あまりにも見てきたことだった。


だが、もっと重要なのはアクズハの願いだった。


「もう一度、私と戦おうか?」ウィンダーは感情のない声で尋ねた。


ムスナーはすぐには答えなかった。彼は玉座に深く腰掛け、深紅の瞳は果てしない破壊を映し出し、そしてくすくすと笑った。


「もちろん、私は昔から戦いが好きだった。」


簡潔な言葉だが、そこには謎めいた何かがあった。


「私は様々な戦いをしてきたが、君以上に興味深い戦いはなかった。」


ウィンダーはムスナーを見つめ続けた。


「また負けるだろう。」


「誰も確かなことは言えない。」


彼は立ち上がった。


そしてその時、崩壊し始めた泡世界に破壊が広がった。


「イズモ、来い。」


剣はムスナーの傍らに落ちた。


イズモ。


その剣は、ムスナー自身の破壊の源から生み出された。自らの破滅を内包する存在。


それは純粋な破壊の体現だった。


イズモはたった一人の存在で、無数の泡世界を不安定に陥れた。泡の海の物理法則は歪み始めた。遥かな世界の神々は、目に見えない恐怖を感じ始めた。


ウィンダーはイズモを見た。創造神は、この剣が単なる道具ではないことを知っていた。それはムスナーの一部であり、ウィンダーが初めて目にする新しい何かだった。


アカズハは神を攻撃するために武器を用いたことはなかった。


「破壊。」


ただ一つの言葉が宙に響いた。誰も声を出さなかったが、その意味は現実味を帯びていた。


ムスナーはイズモを掴んだ。


彼が柄に触れた瞬間――


無数の世界が…忘却へと落ちていった。


泡の海の泡は音もなく砕け散った。文明、歴史、命、すべてがまるで存在しなかったかのように消え去った。


しかし、ウィンダーは立ち尽くしていた。


彼はムスナーとイズモを見つめ、そして一歩前に出た。


「始めろ」ウィンダーは言った。


ムスナーは微笑んだ。彼は長い間、この言葉を待っていたのだ。


そして戦いが始まった。


一撃の斬撃が放たれた。


技巧も無駄な動きもなかった。それはただ、一撃に凝縮された、純粋な破壊だった。


ウィンダーはそれを指で防いだ。


刃が指先に触れた瞬間――


物理法則、時空、因果律、すべてが一瞬にして無効化された。


そして――


「うーん…」


刃に宿る破壊のエネルギーが噴出した。


果てしない衝撃波が広がり、行く手を阻む全てを消し去った。


その瞬間、ウィンダーは吹き飛ばされた。


空間は引き裂かれ、現実はガラスのように砕け散った。泡の海に浮かぶ全ては、終わりなき破壊の嵐に巻き込まれていた。


---


ムスナーはイズモを手に、立ち止まった。彼は破壊的な目を細め、虚空を見つめた。


「やっぱりそうだ。あの老人はまだ死んでいない」


そして彼がそう言った瞬間――


背後から肩に手が置かれた。


「ここにいる」


ウィンダーの声が耳元で響いた。


ムスナーは興奮に目を輝かせ、振り返った。彼の周囲の空間は、まるで破壊の加速を映し出すかのように、ひび割れ始めた。


「分かっている」


彼らの周囲の空間は歪み、ダムが決壊した川のように流れていった。


「世界は崩壊している」ムスナーはかすかな感嘆を込めて言った。


ウィンダーは頷いたが、彼の目にはまだ混乱が見えていなかった。この現実も彼を揺るがすことはなかった。彼は全知全能であり、遍在であり、すべてを元の状態に戻すことができた。


「ああ」ウィンダーは答えた。「だが、念じれば全てを元に戻せる」


「全能の神よ、急ぎましょうか?」ムスナーは唇に邪悪な笑みを浮かべながら尋ねた。


「私は弱い神ではないぞ、坊や」ウィンダーの声は冷たかったが、答えは肯定だった。


ムスナーは笑い、その目は喜びに輝いていた。


「よし、じゃあ続けよう!」「さあ!」


そして瞬時に、彼は破壊の波のようにウィンダーへと突進した。彼の剣、イズモは空間を切り裂き、脆い現実の層を引き裂いた。剣から放たれる破壊のエネルギーは爆発し、行く手を阻むもの全てを吹き飛ばした。


ウィンダーは立ち止まった。


片手を伸ばしたが、防ぐためではなかった。指を軽く持ち上げただけで、攻撃は一瞬にして消え去った。


ムスナーの攻撃、斬撃に込められた力の全てが、まるで存在しなかったかのように消え去った。


ムスナーはよろめいたが、その目は狂気に燃えていた。


「ありえない!」


ムスナーは再び突進した。今度はより力強く、より凶暴に。しかし、ウィンダーは今回は立ち止まらないことにした。


彼は腕を振り回した。


周囲の空間が歪み、すべてが霞んでしまった。まるで時空がもはや存在しないかのようだった。


ムスナーには、自らの死か、不死かを見届けられるのは、あと一瞬しか残されていなかった。


ムスナーは一瞬立ち止まった。まるで時間が止まったかのように。イズモの刃は未だウィンダーの体を貫いていたが、血も痛みもなかった。砕け散った空間には、ただ完全な静寂だけが広がっていた。


ウィンダーは刃を見下ろした。その目は依然として穏やかで、変わらなかった。


「私は…何も言うことはない…」疲労も怒りもなく、彼の声が響いた。「もし何かあったら…感慨深いものがあるだろうに。」


ムスナーは眉をひそめた。この刃が無敵の存在を貫く、あの馴染み深い感覚が、彼を戸惑わせ始めた。


彼は剣を抜こうとしたが、全てが歪み始めた。周囲の空間が二つに裂けたようだった。全てが崩壊し、現実そのものが薄い氷の層のように溶け始めた。


「俺が傷つけられるのは剣だけだとでも思っているのか?」ウィンダーは囁いた。


その言葉が響き渡ると同時に、ムスナは目に見えない力が自分を包み込むのを感じた。現実、時間、空間、彼が破壊してきた全てが、彼を襲っていた。


「お前は相変わらず強いな。」ムスナはウィンダーを見つめた。目の前の光景が信じられなかった。


「私は全てだ、ムスナ。」ウィンダーは答えた。


「私は全ての始まりであり、終わりだ。」


ムスナは答えることができなかった。そうだ、彼は勝てないと悟った。どんなに強大になり、全能になっても、ウィンダーの前では蟻に過ぎないのだ。


「お前は物語を創った。だが、この物語はまだ終わっていない」ウィンダーがそう言うと、周囲の全てが宇宙の旋風のように消え去った。まるで宇宙そのものが彼の手の中で崩壊していくかのようだった。


ムスナーは剣を強く握りしめた。その目には、もはやいつもの傲慢さや嘲笑は宿っていなかった。彼の周囲の空間は、まるで自らの存在を否定するかのように歪んだ。


「理解すべきだ…ウィンダー、創造と共に存在するものは、破壊なのだ。」


ムスナーはウィンダーに斬撃を放ったが、それは簡単に防がれた。しかし、まだ終わっていなかった。肋骨へのパンチ、肩へのパンチ。ウィンダーは押し戻された。


「お前が武術を知っていることを忘れていたな。」


「少しは知っている。」


突然、ウィンダーがムスナーの前に現れた。耳を破壊神の腹に強く押し付け、ウィンダーは彼を幾万もの泡の世界へと投げ飛ばした。


ムスナーは足でブレーキをかけ、それからウィンダーへ幾度となく斬撃を放った。ウィンダーは習慣的に手を挙げて防ごうとしたが、神は手を下ろした。いや、正確には、腕を切断された。


イズモは因果を断ち切ってあの奇跡を起こした。それは当然のことだ。破壊とは無限の可能性を秘めたものなのだから。


ムスナーは立ち止まり、それ以上の攻撃を仕掛けなかったが、ウィンダーの体は依然として斬撃を受けていた。


「因果を断ち切ったのか?」


ウィンダーはあらゆる手を尽くした。


無に変じても斬られ、


概念として存在しても斬られ、


斬撃を別の空間に移しても斬られ、


剣の構造を書き換えても抵抗しても斬られ、


剣の概念を操っても斬られ、


無敵の概念を無限に重ね、それぞれの層が前の層よりも無限に強くなっても、それでも切られる。


プロットを書き直しても、それでも切られる。


アカズハの情報構造を突破しても、それでも切られる。


確率を操作しても、それでも切られる。


現実を操作しても、それでも切られる。


因果関係の外に身を置いても、それでも切られる。


破壊神をフォン・ノイマン宇宙構造に閉じ込めても、構造は破壊されても、それでも切られる。


イズモよりも強いコピーを作れば、そのコピーは破壊されて切られる。


アカズハをこの物語から消し去っても、それでも切られる。


何をしても、どんな攻撃をしても。


ウィンダーはそれでも切られる。


「お前は強くなった…ずいぶんと。」


「何かを成し遂げるには、もっと強くならなければならない。」


ムスナーはイズモをウィンダーに向けました。


「この泡の海にはもううんざりだ。新しい生命構造を創造しよう。」


「ムスナー、馬鹿なことをするな。」


「馬鹿なことなんて何もない。」


「これで、ここの住人たちの生活がより良くなる。」


「お前はまだ経験不足だ。まだ9億年だ。」


「私は若いかもしれないが、お前よりは理性的だ。」


ムスナーはウィンダーにそれ以上何も言わせない。破壊的な斬撃が放たれ、ウィンダーの首は切り落とされた。


ウィンダーの死は泡の海を崩壊させつつあった。


破壊神はイズモの剣を元の形に戻し、爆発させて新たな宇宙を創造した。


~~~~~~


〜バンッ〜 赤津葉は地面に倒れ、再び深い眠りに落ちた。


「一体何の夢を見ていたんだ?」


四つ目の夢の終わり

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