本の中で育った子
ねえ、どうしてそんなにやさしいの?
素直にごめんねって言うし、うれしいことがあると、声に出して笑える。
誰かが泣いていたら、自分のことみたいに胸を痛めて、
誰かが笑っていたら、それだけで今日がいい日になる。
そんなふうに、
そっと心を差し出すようなやさしさを、
どこで覚えたのかって、ずっと不思議だった。
でも、あるとき思ったんだ。
きっと君は、「誰かの想い」を読むことで、
「誰かの痛み」も、「誰かの祈り」も、
何百回、何千回。
ううん「何万回」と誰かの心に触れてきたんだね。
本の中には、
言葉にならなかった涙や、
誰にも届かなかった願いが、
まるで置き手紙のように、ページのすみに眠っている。
きっと君は、そんな欠片を拾い上げる子だったんだ。
だから、
君のやさしさは、ふわっと心をあたためる。
日なたの匂いがする毛布みたいに、そっと包み込む。
安心できる、そんなぬくもり。
そうやって、いくつもの想いに寄り添ってきたから、
君が紡ぐ物語は、やさしさや愛に溢れているんだね。
ねえ?
君の中に生きてる言葉たちは、
今日も君のことを、そっと育ててくれているかい?
拙文、読んで下さりありがとうございます。