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勇者パーティーの一日 ~ 魔王軍撃退業務

# 勇者パーティーの一日 〜魔王軍撃退業務〜


午前六時。王国勇者事務所の建物に、今日も「勇者パーティー第三小隊」のメンバーが出勤してくる。玄関には「魔物撃退実績月間No.1」の横断幕が掲げられているが、よく見ると「残業時間削減目標未達成」という張り紙も貼られている。


「おはようございます」


小隊長の勇者タナカは、コーヒーを片手に挨拶した。昨夜も魔物の夜襲対応で帰宅が午前二時。今朝も既に眠い。


「今日の出動予定は?」


「デビル・エクスプレスからの魔王軍上陸が予想されます。規模は中程度、撃退時間は約二時間の予定です」僧侶のヨシダが業務スケジュールを読み上げる。


「また電車か…」タナカは溜息をついた。「あいつら、なんで毎回同じ時間に同じルートで来るんだ?もう少しバリエーション欲しいよな」


事務所では、他の勇者パーティーも三々五々デスクに着いていく。しかし、その表情は決して正義に燃えているとは言い難い。


「今月もうスライム二百匹討伐してるぞ」戦士のサトウが呟く。「討伐ノルマきつすぎない?」


「せめて危険手当上げてくれよ」隣の魔法使いが同調する。「ドラゴン一匹倒しても基本給と変わらないって、やってられない」


館内放送が流れる。「本日も魔王軍撃退業務、お疲れ様です。なお、本日の作戦には若干の変更が生じる可能性があります。装備点検を忘れずに」


「また装備点検か」盗賊の一人がため息をつく。「昨日も剣の手入れで一時間残業だったのに」


実は、最近の魔王軍は妙に弱い。以前は手強い相手だったが、最近は戦う前から疲れた顔をしているし、攻撃も半端だ。むしろ勇者側の方が困っている。


現場指揮所では、ベテラン勇者の田中課長が苦々しい顔をしていた。


「三十年この仕事やってるが、昔の魔王軍はもっと強かったもんだ」彼は新人勇者に語りかける。「命がけの戦いで、やりがいもあったし、国民からの感謝も熱かった」


「今は定型業務みたいになってますね」新人のアライさんが答える。「出動→撃退→報告書、毎日この繰り返しで…」


勇者パーティーは魔王軍迎撃ポイントに向かっていく。道中、住民たちが手を振ってくれるが、最近は「お疲れ様」という労いの言葉が多い。


「課長、例の魔王城攻略の件ですが」中堅勇者のワタナベが上司に話しかける。「予算が半分に削られました」


「マジかよ」課長格のイトウが頭を抱える。「これじゃあ、せいぜい城の外壁を少し削るぐらいしかできないぞ」


一方、新人勇者たちは別の悩みを抱えていた。


「先輩、勇者って残業代出るんですか?」


「出ない」先輩格のヤマダが即答する。「『正義に休息なし』が建前だからな。慣れろ」


「でも、この前労働組合から『働き方改革』がどうのって通達が…」


「建前だよ、建前。実際は『24時間戦えますか』の世界だ」


現場に到着すると、予想通り魔王軍がぞろぞろと降りてくる。しかし、その様子がなんとも情けない。


「あー、今日も来ちゃった」オーク戦士が憂鬱そうに武器を構える。


「早く終わらせよう」ゴブリンが小声で仲間に言う。


勇者タナカは複雑な心境だった。


「なんか…可哀想になってきた」


「分かります」僧侶のヨシダが頷く。「あの人たち、絶対に心の中では『今日も負けるんだろうなあ』って思ってますよね」


戦闘開始。しかし、魔王軍の攻撃は明らかに手抜きだ。


「うおー、食らえー」(でも本当は早く帰りたい)


「我が必殺技を受けよ!」(威力30%くらいで勘弁して)


勇者側も、なんとなく手加減してしまう。


「ギガスラッシュ!」(でも致命傷は避けよう)


「ヒール!」(敵も回復してあげちゃった)


結果、予定通り二時間で魔王軍は撤退。お互い「今日もお疲れ様でした」的な空気で終了。


「なんか、俺たちプロレスでもやってるのかな?」


「台本のある茶番劇みたい」


勇者パーティーは事務所に戻りながら、今日も複雑な心境でいた。確かに正義の味方として働いているが、本当にこれでいいのだろうか。魔王軍も人間(?)なのだ。きっと家族もいるだろう。


「今日も一日、お疲れ様でした」


タナカは小さく呟いて、またため息をついた。勇者稼業も楽じゃない。

プロンプトはエピソード3にあります。

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