表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/10

 第一章 召喚されて王宮から蹴り出された男

 朝倉アキラは孤児だ。今日は十五歳の誕生日。就職が決まったラーメン店に向かっている途中の出来事だった。突然まばゆい光につつまれて何も見えなくなった。

 まばたきをしていると周囲で歓声があがった。

「やったぞ! 召喚に成功した! 大成功だ!」

 目が見えるようになったとき石の床に立っていた。周囲にはローブをまとった人々がいた。西洋の城にしか見えない一室だった。一番奥の豪勢な椅子にすわっているヒゲのおっさんが声を出した。

「さっそく鑑定をしてみせい」

 ローブ姿のひとりが口を開いた。

「魔素よ魔素よ天地の精霊よわが命にしたがえ! 鑑定!」

 四角い画面が浮きあがった。レベル1。HP20攻撃力3防御力3魔力0素早さ1運1スキル『盗む』と書いてある。

 豪勢な椅子にすわっているヒゲのおっさんのあごがガクンと落ちた。

「なんじゃこれは! 攻撃力が三で魔力がゼロじゃと? 一般兵以下ではないか。おまけにスキルが『盗む』とな? 魔王を倒せる勇者を召喚せよと命じたではないか! これでは勇者でなく盗賊ではないか!」

 杖を持ったローブの男がうやうやしく前に出た。ローブ姿の中で一番えらいみたいな雰囲気だ。

「いえ王さま。占いではこの者こそ魔王を倒す勇者と出ております」

 王がせせら笑った。

「バカを申すな。魔王の命を盗めるのならともかく小銭を盗んで何の役に立とう。魔力がゼロでは魔王どころか四天王にすら行き着かぬわ。一年に一度の召喚をむだにしたというもの。まあよい。いまさら何を言ってもはじまらぬ。銀貨十枚をにぎらせて放り出せ」

 王が手をふった。アキラは鎧の兵士ふたりに両手をつかまれた。

「王さま! いま一度お考え直しを! この者が勇者で間違いありません!」

 杖持ちの抗議に王は眉を逆立てた。

「くどい。目ざわりじゃ。さっさとつれて行け!」

 アキラはふたりの兵に城の通用門から外へ蹴り出された。

「この役立たず! とっとと失せろ!」

 アキラはあまりの理不尽さに泣きそうになった。

「勝手に召喚しておいてその言いぐさはないだろ!」

「うるさい! これをくれてやるからどこへでも消えろ!」

 尻餅をついたアキラに兵のひとりが革の小袋を投げつけた。チャリンと硬貨の音がした。銀貨が十枚入っているらしい。

 吐き捨てると兵士ふたりは城内にもどった。

 アキラは地面に尻をつけたまま途方に暮れた。どうするべきか迷っているとまた城の通用門が開いた。出て来たのは杖を持ったローブ姿の男だ。

「私はマーリンと申します。王直属の宮廷占い師です。ここはグラディウス王国の王都グランディアですよ」

 アキラはようやく会話が成立すると思った。

「ぼ。ぼくは日本に帰れるんでしょうか?」

 マーリンの顔が曇った。

「無理だと思います。召喚に必要な星まわりは一年に一度。あなたが魔王を倒せば王は帰還を許してくれるでしょう。しかし力のない一般人に貴重な召喚の術を使ってくれるとは思えません」

 アキラはやっぱりと眉を寄せた。

「そ。そうですか」

「お気の毒ですがこの世界で生きるすべを模索していただくしかありません。私にできることはわずかですがせめてこの世界の文字が読み書きできる魔法をかけてあげましょう」

 マーリンが呪文を詠唱した。

「魔素よ魔素よ天地の精霊よわが命にしたがえ! 解読! それとこれは些少ですが生活の足しにしてください」

 小さな革袋を差し出した。受け取るとチャリンと硬貨の音がした。

「このまま坂をくだると庶民の街に出ます。もうすぐ日が暮れますからそこで宿を探すといいでしょう。明日になれば冒険者ギルドで職を求めるのがいいと思いますよ。私にできるのは以上です。申しわけありません朝倉アキラ殿」

 アキラは食ってかかりたかった。どうしてくれるんだよとだ。しかし肩をちぢめるマーリンにつめ寄ったとてどうにかなるとは思えない。王直属とはいえしょせんは勤め人なのだろう。何の権限もなさそうだ。

 あきらめてアキラは城に背を向けた。魔法が効いたのか看板の文字が読めた。街は人通りがまばらでさびれた印象しかない。

 城の近くは大きな屋敷が多かった。坂をおりるにつれて小さな二階建てが増えた。パン屋や武器屋といった看板もあらわれた。だが人の姿はすくない。宿屋の看板を見つけたので入ってみた。

 薄暗い店内にテーブルが十数個あった。一階は酒場らしいが客の姿はなかった。奥に階段が見えた。階段の横は厨房でエプロン姿のおばさんが椅子にすわっていた。アキラを見るとおばさんが寄ってきた。

「泊まりかい? メシかい?」

「泊まりで」

「一泊二食つきで銀貨一枚。前払いでたのむよ」

 兵士から投げつけられた革袋から銀貨を取り出しておばさんの手に乗せた。おばさんがニカッと笑った。

「わたしはエカテだ。あんたは?」

「アキラ。朝倉アキラです」

「アキラか。変わった名だ。アキラの部屋は階段をのぼった突き当たりだよ。荷物を置いたら降りといで。すぐメシだからね。ぐずぐずしてると食いっぱぐれるよ」

 暗い階段に足をかけた。木の段がきしんだ。古い宿らしい。のぼるにつれて暗さが増した。足元が見えない。足を止めて次の段をさぐっていると背後から女の怒鳴り声がした。

「階段の途中で立ち止まるな! あぶないだろうが!」

 アキラはビクッとちぢみあがった。

「さっさとあがれ! こちとら疲れてるんだ!」

 ふりむいたアキラの目におおいかぶさるような大女の影があった。片手には両刃の斧を杖がわりについていた。肩が盛りあがって筋肉隆々だとわかる。

 アキラはすっかりビビった。

「あ。あの。ぼく」

 足がガクガクふるえた。大女が片手をアキラの脇の下にまわして持ちあげた。そのまま階段の上まで運びあげた。

 大女が階段をあがり切ってすぐの部屋に消えた。取り残されたアキラの心臓はバクバクしたままだった。廊下は暗い。だが窓から日暮れの光が射してかろうじて足元が見えた。

 突き当たりの部屋に入るとベッドと机があるだけだった。置くべき荷物などなかった。所持品は王からもらった革袋とマーリンの革袋のふたつだけだ。マーリンの革袋にも銀貨が十枚入っていた。取りあえず十九日分の宿泊費は確保できたようだ。

 机の上にランタンが置いてあった。しかしどうやって灯りをともすのかわからなかった。

 ベッドにすわると途方に暮れた。いまの状況が現実に思えない。でも頬をつねると痛かった。財布には一万円強の現金がある。でも日本のおカネが使えるとは思えない。落ちこんで行く思いをふりはらって部屋を出た。晩ご飯を食べようとだ。

 一階におりた。やはり客はいない。テーブルにつくと厨房からエカテがスープ皿とパンを運んできた。ジャガイモとニンジンとタマネギと肉を煮こんだスープだが冷たい。スプーンですくって口に入れた。薄い塩味で水くさい。塩水で煮ただけのようだ。あつあつだとましだろうがすっかり冷めているせいでまずい。パンはカチンコチンでそのままでは歯が立たなかった。

 パンを汁につけていると階段のきしみが聞こえた。目を向けると先ほどの大女が降りてくる。アキラは身をちぢめた。

 大女がその動きに気づいた。

「男のくせにビビってんじゃねえ! しゃきっとしねえか!」

 大女が怒り声をはなつ。近づく大女に身体が硬直した。大女がテーブルをバンと叩いた。

 アキラの顔が青ざめる。なんで大女が怒っているのかわからない。その不可解さが悔しくて涙がこぼれた。

 大女がオロオロとうろたえた。

「おいおい。泣くなよ。あたしがいじめたみてえじゃねえか。よしよし」

 大女がアキラの頭をなでながらエカテに声をかけた。

「いつものやつを」

 厨房でエカテがうなずいた。すぐにスープとパンとコップを運んで来た。大女がコップをアキラの口に持って行く。

「飲め」

「えっ?」

「いいから飲め」

 うむを言わさずコップの中身をアキラの口に流しこむ。アキラはゴックンと飲みこんだ。ブドウの匂いがしたがジュースではなかった。酒だった。

「ぼ。ぼく未成年」

「気にするな。飲め」

 もうひと口飲むと頭がポーッとした。その間に大女がエカテに追加の酒を注文した。

「あたしは冒険者のイレーヌだ。おまえは?」

「ア。アキラ」

「アキラか。言いたいことがたまってるんだろう? 洗いざらい吐き出しちまいな。そんな暗い顔でいるとツキが逃げちまうぜ」

 イレーヌも酒を一気にあおって硬いパンをかじった。アキラの歯が立たなかったパンにイレーヌの歯形がついた。大女だけあってあごの力も強いらしい。

 アキラは酔った勢いを借りて今日一日の理不尽な思いを吐き出した。話しているとさらに泣けた。

「なんでぼくがこんな目にあうんですか! ひどいと思いません!」

「ああ。ああ。たしかにひでえ」

 イレーヌがまじめな顔でうなずいた。アキラは王宮関係者にぶつけられなかった鬱屈をイレーヌにぶつけた。

 そのころから客が増えはじめた。酒を飲みに来るらしい。スープとパンと酒で銅貨五枚だった。銀貨一枚は銅貨十枚のようだ。酒場の喧噪を耳にアキラは夢の中にいるような心持ちだった。

 アキラが次に気づいたときはベッドの上だった。昨夜どうしたんだろうと記憶をたどる。イレーヌにくどくどと愚痴をこぼしたのは憶えている。そのあとどうなったのかわからない。どうやら酔いつぶれたアキラをイレーヌが部屋まで運んでくれたらしい。誰かに抱かれて階段をのぼったような気がする。

 戸にノックの音がした。

「起きてるかアキラ」

 イレーヌの声だった。

「うん。起きてるよ」

「朝飯を食ったら冒険者ギルドにつれてってやる」

 朝飯も昨夜と同じ冷たいスープとパンだった。アキラはやはりパンに歯が立たない。スープにつけて無理やり飲みこんだ。

 冒険者ギルドに着いた。こわもての男たちや魔法使い姿の女たちがたむろしていた。アキラは身をちぢめながらイレーヌに手をひかれた。

「こいつを冒険者登録してほしい」

 イレーヌがアキラの背を押す。受付嬢がうなずいた。

「ではこちらに必要事項をお書きください」

 記入を終えるとF級の登録証を手渡された。

「これで今日からあなたも冒険者です。E級までの依頼を受けることができます」

 イレーヌが掲示板に顔を向けた。依頼のカードが幾枚もピンで留められている。

「初心者用の依頼ってどんなのがある?」

「薬草の採取かスライムの討伐でしょうね。初心者だと薬草の採取からがよろしいかと」

「なるほど。薬草の採取ね。それで行こうか」

「ではこれをお持ちください。採取した薬草はこちらにお持ちいただければ買い取らせていただきますので」

 受付嬢が紙をアキラに渡した。薬草の絵と説明が描かれていた。説明には森に入れば魔物に注意するようにとなっていた。

 ギルドを出るとイレーヌがその紙を取りあげた。

「ふーん。これが薬草か。たしかポーションの原料になるんだよな」

「イレーヌは薬草の採取ってやったことがないの?」

「ない。あたしは力まかせだから魔物の討伐ばかりだ。魔物と言ってもスライムかゴブリンの小物だけだがな」

「スライムとゴブリンか。ぼくにも倒せるかな?」

「大丈夫だろう。だが剣がいるんじゃねえか? 丸腰じゃスライムすら倒せねえぞ? 格闘技のスキルはねえんだろ?」

「なるほど。じゃ武器屋に行ってみようか」

 武器屋では一番安い剣が銀貨十枚だった。イレーヌが武器屋のおやじとかけあって鞘とあわせて銀貨八枚に値切った。アキラは腰に剣をさげるといっぱしの冒険者になった気がした。

 王都の城門を出るとすぐ森が広がっていた。日本では春だった。ここでも季節は春らしい。

「森の浅いところに出るのはスライムばかりだ。強い魔物は出ねえから安心しろ」

 アキラはイレーヌとそこで別れると思って心細くなった。だがイレーヌに別れる様子はなかった。どうやら薬草の採取にも同行してくれるらしい。イレーヌは口こそ悪いが面倒見のいい大女のようだ。

 アキラとイレーヌは森にわけ入った。頻繁に人が通るみたいで細い道が踏み固められていた。王都にもどる冒険者たちともすれちがう。

 アキラとイレーヌは森の下草と薬草の絵を見くらべながら探索した。しかしまるで見つからない。

「目につくところの薬草は採り尽くされてるみてえだな。どこにもねえぞ」

 道をはずれて森に踏みこんだ。下草を検分しながら起伏の多い大地を進む。やはり薬草はない。

 しばらく進むと目のすみで何かが動いた。ハッとした瞬間だった。アキラの顔に何かが貼りついた。べったりと口や目をおおわれた。息ができない。

「ちっ! スライムか!」

 もがくアキラの顔からイレーヌが力まかせにスライムを引きはがした。地面にたたきつけたスライムをイレーヌが両刃の斧でとどめを刺す。

「し。死ぬかと思った」

 必死で息をしながらアキラがつぶやいた。引きはがされた頬やひたいがヒリヒリした。強い力で貼りつくらしい。

 両断されたスライムの死骸からイレーヌが何かをほじくり出している。

「魔石だ。魔物は体内に魔石を持ってる。スライムは核に魔石がある。ちなみに核を切るか突けばスライムは死ぬ。核以外はどれだけ切っても死なないから気をつけろよ。そうそう。見た目に反して案外すばやい。スライムをなめて窒息死した冒険者も多いから注意するようにな」

 アキラはゾッとした。イレーヌがいなければ死んでいた。あらためてスライムの死骸を見た。ゼリーみたいにプルンプルンとして愛らしい。スライムは最弱の魔物だと思っていた。だが魔物は魔物。命にかかわる危険物みたいだ。

「スライムの魔石は一番安い。銅貨一枚だ。十匹倒さねえと宿屋の一泊分にならねえ。だが顔に貼りつかれるのさえさければ倒せる。この森には大量にいるから一日狩れば二十匹は楽々だ」

 その後も薬草は見つからなかった。イレーヌの指導でスライム狩りに切り替えた。アキラは最初倒せなかった。剣が思うところに進まない。剣をふる練習からはじめないとだめらしい。最初の一匹を倒せたのは日が暮れはじめたころだった。

「今日はこれくらいにしようか」

 一匹倒せたアキラを見てイレーヌがうながした。アキラは核から魔石をほじくり出す。スライムの死骸はそのまま放置だ。

「ねえイレーヌ。スライムって食べられないの?」

 切り裂いたスライムはゼリーより硬かった。クラゲに近い。クラゲなら食べられるはずだ。

「食えるのは食える。だが油がギトギトでうまくないぞ。あたしも一度食ってみた。ひとくちすら飲みこめないまずさだったな」

「ふうん。そうなんだ。食べられる魔物っているの?」

「いるよ。ゴブリンは食えねえがオークは高級肉だ。コカトリスもうまいらしい。オークもコカトリスもあたしは狩ったことがねえけどな」

「どうして狩らないの?」

「オークは二匹以上で行動するからさ。あたしは単独だから狩れねえんだ。コカトリスは石化の毒持ちだから手を出せねえ。石化の毒消しは高すぎるんでな」

 ギルドで魔石を換金した。イレーヌが十八でアキラが一だ。受付嬢に薬草が見つからなかった話をした。

「薬草はかたまって生えてるそうです。慣れてる人はどういった場所に生えるかわかってるから簡単でしょうけどね。植物の知識のない初心者にはむずかしいのかもしれません」

 なるほどと感心した。お金儲けに楽なものはないらしい。森に行けばそこいら中に薬草が生えていると思ったのは初心者の浅はかさなようだ。

 宿にもどるとそこそこ客が入っていた。日はすっかり暮れている。アキラとイレーヌがテーブルにつくとエカテが料理を運んできた。やはり冷たくてまずい。

「ところでさイレーヌ。どうして冷たい料理しか出て来ないの?」

「うまくねえってか?」

「うまいまずいは別にしてあつあつだとうれしいな」

「あつあつの料理を毎食食えるのは貴族だけだ。薪が配給制なんだよ」

「配給制?」

「そう。料理に使う火は薪しかねえ。その薪は森の木だ。みんなが好き勝手に森の木を切ればあっと言う間に森がなくなる。森がなくなりゃ王都はおしまいだよ。パンすら焼けなくなっちまう。だから代官が森を管理して薪を配給してるのさ。最低限の薪しかもらえねえから一日に一度料理を作るのが精一杯でな。作ったときだけあつあつが食える。だがあとは冷めた料理しか食えねえってわけだ。ちなみにな。勝手に木を切るのは大罪だ。最悪死刑だな」

「そんなに?」

「ああ。森がなくなれば王都を捨てざるをえなくなる。森の木を切るのは殺人よりも重罪なのさ。あつあつの料理が食いたきゃ貴族になるんだな。貴族だと男爵でも配給量は庶民の十倍だ」

 がっかりした。街にラーメン屋がないわけだ。露店でもあつあつの食べ物を売る店はなかった。そういう事情だったのか。

「じゃ魔石って何? どう使うの?」

「スライムやゴブリンの魔石は燃料だな。ランタンの芯にする」

 イレーヌがテーブルでぼんやりとした光を放つランタンに手をのばした。

「この光ってるのが魔石だ。スライムの魔石だと半日。ゴブリンだと一日光る。大きな魔石だとほかの魔道具でも使える」

 ランタンの胴にあるボタンをイレーヌが押しこんだ。光が消える。ふたたび押すと光がともった。なるほど。ランタンってああ使うのか。

 翌日もイレーヌとスライムを狩った。イレーヌの指導でなんとかスライムの核を刺せるようになった。しばらく狩っていると頭の中で声が聞こえた。

『レベルがあがりました』

 ステータスと唱えるとレベルが2になっていた。他の数値もあがっていたが魔力だけは0のままだった。

 余裕ができたのでスライムを狩りながら『盗む』とつぶやいてみた。だが何も変わらない。ステータス画面に変化はなかった。お金が増えるわけでもない。魔石を盗めたのでもない。スキル『盗む』が何の役に立つのかわからなかった。

 イレーヌがいつまでつき合ってくれるのかわからないまま数日がすぎた。アキラも一日に十匹以上スライムを狩れるようになった。なんとか生きていけるみたいだった。風呂に入れないなどの不満はあったがおおむね順調と言えた。

 ひとつだけどうしても許せないのが食事だった。硬いパンに冷えたスープがたまらない。せめてあつあつのスープにしたい。

 ふとひらめいて露店の道具屋で火打ち石を買って森に入った。

 スライムから魔石を取り出した。次にスライムの死骸に火打ち石で火花を飛ばしてみた。

「何をするんだアキラ!」

 イレーヌがアキラの肩をつかんだ。アキラが錯乱したとでも思ったらしい。

 予想どおりスライムの死骸が燃えあがった。よく燃える。

「これいけるんじゃない?」

「何がいけるんだ? 森を燃やすのも大罪だぞ! 早く消さねえと!」

 燃えるスライムに土をかけて火を消した。イレーヌがアキラをにらみつけた。

「死刑になりてえのか! 二度とするなよ!」

「ご。ごめん。あんなに燃えるとは思わなかったんだ」

 気まずいままスライムを狩った。アキラは三匹のスライムの死骸を袋につめた。

「スライムの死骸なんかどうするんだ? 持って帰るのか?」

「うん」

 イレーヌが首をかしげたまま帰路についた。

 宿にもどるとアキラはエカテに声をかけた。

「エカテさん。厨房を貸してくれない?」

「おや? 何をするんだい?」

「スープをあたためる」

「はあ? 今日の分の薪は使っちまってもうないよ?」

「いいんだ。薪はいらない。鍋とスープがあればいい」

 かまどの底に切断したスライムを敷いた。火打ち石で火をつける。火力が強い。スープが沸騰をはじめた。

「やった。成功だ。これであつあつの料理が食べられる」

 あっとイレーヌが声をあげた。

「それでスライムを燃やしたのか。じゃ肉とかも焼けるかな?」

「焼けると思うよ。パンもあぶれば柔らかくなる」

 その夜は酒場の客全員のスープがあつあつになった。好評だった。

 翌日は持てるかぎりスライムの死骸を持ち帰った。エカテは生肉を仕入れて焼きたての肉を客に出した。アキラとイレーヌにも肉が配られた。塩をかけただけだがあつあつの肉はうまかった。

 数日したら口こみで酒場が満員になった。エカテは肉を焼くのに追われた。

 翌朝テーブルについたアキラとイレーヌのもとにエカテが来た。

「毎日ただでスライムをもらうのは悪い。わたしが串を作ったげるからさ。露店で串焼きの肉を売っちゃどうだい? 朝からスライムを狩るだろ。昼から露店で串焼きを売る。スライムを狩るより儲かると思うがね」

 なるほどとアキラは思った。

「でもさ。それエカテさんがやればいいんじゃないの?」

「わたしゃこの宿で手いっぱいさ。食う分はかせげてる。これ以上カネを貯めてもしょうがない。あんたらはスライムを狩るだけじゃ日々の宿代で消えちまうじゃないか。商売をはじめりゃ貯金もできるよ」

 朝食を食べながらイレーヌと相談した。露店をはじめることに決めた。

 商業ギルドで屋台を借りて広場で串焼きを売る。塩と甘ダレの二種類だ。あつあつの屋台は一軒だけ。たちまち売り切れた。

 一週間がすぎた。行列のできる店になった。ひと串銅貨一枚だが一日の売り上げは銀貨四十枚になった。銀貨四十枚は一般人の十日分の給料に相当する。毎日が売り切れだから仕込みを増やせば売り上げはさらに多くなるはずだった。エカテと三人で作る串は一日に四百本が限界だ。儲けを増やそうとすれば誰かを雇う必要があった。

 しかし屋台を借りる金もある。人を雇う余裕はまだない。しばらくはふたりで続けると決めた。

 そんなある日の夕暮れだった。店じまいをして宿にもどる途中だ。うしろから声をかけられた。

「待てよ」

 ふり向くと四人の男が立っていた。ニヤニヤ笑いの三人が手に剣をかまえていた。ひとりは魔法使いの姿だった。

「その手にあるものを置いてきな。断れば命がねえぜ」

 アキラは自分の右手を見た。売り上げの革袋をさげている。銅貨が大半なのでずっしりと重い。銀貨四十枚相当だ。強盗するほどの額ではない。でも行列のできる屋台の売り上げだから大金に思えたのだろう。

 銀貨四十枚でケガをしてもつまらない。アキラは悩んだ。おとなしくわたしたところで無事にすむ保証はない。かといって抵抗すれば斬り合いは必至だ。あきらかに相手のほうが慣れている。

 決断できないまま相手がジリッと足を進めた。見物人が数人いるものの助けてくれそうもない。遠巻きに興味深そうな目を向けるだけだ。

 魔法使いがぶつぶつと何かつぶやいているのが聞こえた。呪文を詠唱しているらしい。

「魔素よ魔素よ天地の精霊よわが命にしたがえ! ファイアーボール!」

 魔法使いの杖がアキラに向いた。杖の先から炎がアキラに飛んだ。アキラはとっさで右手を出した。手を離れた革袋が石畳にジャラッと硬貨をぶちまける。アキラの右手が火に包まれた。燃えあがる炎を消そうと必死で手をふった。そのとき頭の中で声がした。

『魔法ファイアーボールを盗みました』

 なんだ? と思ったが右手の火を消すのが先決だった。どうにか火を消せたものの右手はズキンズキンとして使えない。

 その間にイレーヌが両刃の斧で三人と対戦をはじめた。力はイレーヌのほうが強い。だが三人は戦い慣れていた。ひとりがイレーヌの正面に立って囮になる。イレーヌが正面の敵に切りかかる。そこへ背後からふたりが剣をふるう。

 イレーヌがあわてて振り向いて斧をなぎはらう。すると今度は背中を向けたもうひとりが背後から斬る。イレーヌの正面に立つ者は逃げるだけだ。剣をふるうのは背後からのみ。卑怯きわまりない戦法だった。

 深手は負ってないもののイレーヌは血にまみれた。

 アキラは左手で剣を抜いた。魔法使いが杖をアキラに向けた。

「魔素よ魔素よ天地の精霊よわが命にしたがえ! ファイアーボール!」

 だが杖から炎が出ない。

「ええ? ファイアーボール! ファイアーボール!」

 声をかぎりに叫ぶ。しかし何も起こらない。

 アキラは剣を腰だめに魔法使いに突進した。魔法使いの腹に剣を突き立てる。

「うぐえっ!」

 魔法使いの手から杖が飛んだ。バタンとあおむけに倒れた。剣が魔法使いの腹から抜けて血がローブに染みはじめた。

 アキラはイレーヌに目を向けた。イレーヌはひとりを倒して残りふたりと対峙中だ。しかし肩を大きく上下させて息をあえがせている。ひとり倒すのが精一杯だったようだ。

 アキラの右手はズキンズキンとしびれて剣を持てそうにない。左手では剣をふれない。突進して突き刺すしかないらしい。アキラはふたたび剣を腰に固定した。

 突進をはじめたアキラは見た。イレーヌの背後の男が『斬る』から『突き』に切り替えたのを。

 イレーヌの筋肉にはばまれて『斬る』では致命傷を与えられないみたいだ。アキラが男に剣を突き立てる前に男の剣がイレーヌに突き刺さる。どうすれば男を止められるか?

 アキラは右手を前に持ちあげた。一か八かやってみる。

「魔素よ魔素よ天地の精霊よわが命にしたがえ! ファイアーボール!」

 炎のかたまりがアキラの右手を離れた。一直線に男の背中に飛んだ。男の全身が火に包まれた。男が剣をほうり投げて地面に転がった。その間にイレーヌの両刃の斧がのこりひとりの男を両断にした。

「終わった。うまくいってよかった」

 アキラは剣をにぎる左手をだらりとさげた。

 そこに鎧姿の兵士の一団が走って来た。見物人が通報したのだろう。アキラはホッとした。

 アキラとイレーヌを兵士たちが取り囲んだ。先頭に立つ男が宣言した。貴族っぽい豪華な服を着た男だった。

「そこのふたり武器を捨てろ!」

「なにっ! あたしたちは被害者だぞ!」

 イレーヌが戦いの興奮のままかみついた。

「つべこべ言わずに武器を捨てろ! 調べはついてるんだ!」

 おいと貴族男がうしろにいた魔法使いのかっこうをした男に指示をした。魔法使いが詠唱とともに杖をふった。

「魔素よ魔素よ天地の精霊よわが命にしたがえ! 拘束!」

 アキラは身体が硬直して動けなくなった。頭の中で声がする。

『拘束を盗みました』

 イレーヌも斧をふりあげたまま動けないらしい。アキラとイレーヌは縄で縛られて馬車に乗せられた。

 王宮近くの大きな屋敷につれこまれた。アキラとイレーヌが動けるようになったのは牢屋にほうりこまれたあとだった。

 イレーヌが看守に対してわめいた。

「なんであたしたちが逮捕されるんだ! あたしたちは被害者だぞ! 早くここから出せ!」

 すぐに兵士が六人あらわれた。アキラとイレーヌは手を縛られて二階に連行された。

 豪華な机にさっきの貴族風の男がいた。かたわらには執事風の男がひかえている。机には未決済らしい書類が山と積まれていた。

 貴族男が口を開いた。

「私は代官のリプリー・グランディア公爵だ。被害者とはどういうことか? 説明してくれ」

 イレーヌに目くばせされてアキラが話した。リプリーがうなずく。

「なるほど。売り上げを狙った四人組に襲われたと。あいつらを殺傷したのは正当防衛だと言いたいわけだな?」

「そうです。逮捕されるのはぼくらじゃありません」

「ふむ。おまえたちはかんちがいしておる。おまえらが逮捕されたのは伐採容疑だ。街で乱闘した件じゃない」

「は? ばっさい容疑? なんですそれ?」

「だから伐採だ。つまり森の木を違法に切った容疑だな」

「はい? どうしてです? ぼくらは森の木なんか切ってませんよ?」

「おまえたちは屋台で串焼きを売っておった。それにちがいないな?」

「ええ。それが?」

「あつあつの串焼きを作るのには森の木が必要だ。しかしおまえたちは森の木の配給を受けておらん。ではどこから木を手に入れた?」

「ああ。なるほど」

 串焼きの燃料が森の木だと思いこんでいるわけだ。

「申しあげます。串焼きを作るのに森の木は使っておりません。あれはスライムを燃やして作っております」

「スライムを燃やして? 嘘をつくな。スライムが燃えるはずがなかろう」

「嘘じゃありません。スライムは燃えるんです」

「でたらめを申すな! 森の木を伐採して暴利をむさぼれば死刑まちがいなしだ。苦しまぎれに口から出まかせをほざいておるのであろう。もうよい。牢にもどしておけ。処刑は一週間後だ」

 リプリーがこれでお終いとばかりにポンと書類にハンコをおした。アキラとイレーヌは兵士たちに押されて牢にほうりこまれた。

 牢の中でアキラとイレーヌは顔を見合わせた。

「どうしよう?」

「どうすりゃいいんだ?」

 燃料が薪しかない世界で弁護士なんて制度があるとは思えない。無実の罪なのに証明する手だてがなかった。スライムをつかまえて火をつける。それだけなのに頭から決めつけて来る頑固者の考えを変えさせるのはたいへんだと思われた。

 することがないのでステータスを見ることにした。ステータスとつぶやくと四角い画面が浮きあがった。レベル5。HP40攻撃力7防御力7魔力5素早さ4運4スキル『盗む』魔法『ファイアーボール』『拘束』と書いてある。

 スキル『盗む』はどうやら魔法を盗むらしい。アキラは壁に右手を向けてつぶやいた。

「魔素よ魔素よ天地の精霊よわが命にしたがえ! ファイアーボール!」

 炎のかたまりに壁にはなたれた。

 イレーヌが目を見張った。看守も何ごとかと牢の鉄格子まで来て中をのぞきこんだ。

「いまだ! 魔素よ魔素よ天地の精霊よわが命にしたがえ! 拘束!」

 アキラは右手を突き出した。看守に向けた右手はまだしびれているががまんできないほどではない。

 看守の全身が硬直した。アキラは鉄格子のすき間から動きを止めている看守のポケットをまさぐった。カギの束が出て来た。牢の戸をあけた。

 牢から出たイレーヌがアキラの顔を見た。

「逃げるか?」

 アキラは思案した。

「逃げてもすぐ捕まるんじゃない? それより」

 アキラは看守を見た。しばらくは硬直したままのはずだ。

「イレーヌ。看守さんを抱きかかえて二階まで運べる?」

「ああ。だが看守を二階に運んでどうするんだ?」

「一か八か交渉してみようと思う」

 二階の執務室に看守を運びこんだ。リプリーは書類にハンをおすのに忙しいらしかった。アキラとイレーヌに対する反応が遅れた。

「なんだ? おまえらは?」

 事態が飲みこめてないリプリーとちがって執事姿のおじさんが机の上の呼び出しベルをたたいた。階下までひびくベルの音にすぐ兵士たちが入室して来た。

 人質に取っている看守の首にイレーヌが手をかけた。

「動くな! 一歩でも動けば看守を殺す!」

 大女のイレーヌの力こぶがググッと盛りあがる。簡単に首の骨など折れそうだ。

 リプリーがやっと事態を飲みこんだ。落ち着こうと努力しながら声を絞り出す。

「誰も動くな。それで要求はなんだ?」

 アキラはリプリーの顔をうかがう。問答無用で乱闘にという表情ではなかった。聞く気はあるらしい。

「スライムが燃える実験をしてほしい。誰かが森に行ってスライムを一匹持ち帰って火をつけるだけだよ。簡単だろう?」

 リプリーがあきれ顔になった。

「まだそんなことを言ってるのか。スライムが燃えるはずはなかろう。往生際が悪いにもほどがある。兵士どもこいつらを取り押さえろ!」

 このわからずやめとアキラは奥歯をかみしめた。

 イレーヌの力こぶがまた隆起する。

「看守が死んでもいいのか!」

 動き出そうとした兵士たちの足が止まる。

 リプリーとアキラがにらみあった。どちらも一歩も引けない顔だった。 

 そこに執事のおじさんが口をはさんで来た。

「私は執事のセバスチャンです。リプリー様。ここはひとつ彼らの言うことを試してみてはどうでしょう。スライムを一匹つかまえて火をつければわかる真偽です。ここで大女が暴れれば看守の命はもちろんのこと兵士にも被害が出るやもしれません。スライム一匹の手間をおしんで人命を散らしては代官としての名声に傷がつきますぞ」

 リプリーが思案顔で考えこむ。しばらくして肩から力が抜けた。

「ふむ。そうかもしれん。では兵士たちよ。スライムをつかまえてまいれ」

 アキラが口を出す。

「死骸でけっこうですから」

 兵士たちが出て行った。アキラとリプリーはにらみ合ったまま無言で時間だけがすぎる。

 神経にさわる長い空白のあと兵士たちがもどって来た。手にスライムの死骸をさげている。アキラはホッとした。

「全体に火をつければ大火になりますから一部を切り取るのがよいでしょう」

 兵士が剣をスライムに入れる。セバスチャンが灰皿を差し出した。スライムの一部が入った灰皿にリプリーが着火用の魔道具で火をつける。ボッと音がしてスライムが燃えた。

 リプリーが思わず顔を遠ざけた。

「なんだこりゃ? 燃えてるぞ?」

 信じられないという顔だった。セバスチャンもうなずく。

「燃えてますな」

 リプリーとセバスチャンが顔を見合わせた。リプリーが口を開く。

「スライムが燃えた。それは認めよう。だがおまえたちが森の木を切ってないという証明にはならないな」

 アキラはため息を吐いた。

「ぼくらは冒険者です。毎日スライムを狩ってます。死刑になるかもしれない森の木を切る危険を犯すよりもスライムの死骸を持ち帰るほうがはるかに楽です。串焼きを半日作るだけでどれだけの薪が必要でしょう? それだけの量の薪を持ち込めば門番に見とがめられるはずですよ。街の人たちからも奇異に見られるでしょう。ぼくらに森の木を切るメリットはありません。一日に銀貨四十枚の売り上げで死刑だなんて愚かもいいとこですよ」

 リプリーが計算顔になった。

「ふうむ。言われてみればそのとおり。ではおまえたちは無罪ということか?」

「天地神明に誓って無罪です」

「わかった。しばらく監視をつけるということで放免しよう。看守を放してやってくれ」

 イレーヌが看守の首にかけていた手をどけた。硬直の続く看守が床にドサッと倒れた。

 灰皿で燃えるスライムを見つめていたセバスチャンが口を開いた。

「リプリー様。スライムが燃えるということは森の木に代わる燃料になるということです。一日三食あつあつの料理が食べられるということでしょう」

「おお。なるほど。冬に寒い思いをしなくてすむな」

「しかし人の口に戸は立てられません。スライムが燃えると知るとこぞってスライムが狩られるでしょう。あっと言う間にスライムが絶滅する事態を招きかねません」

「そうか。では許可なくスライムを狩るのを禁止するか」

「それはうまく行くとは思えませんな。取り締まるのが厄介になるでしょう。森の木はかさばって持ち運びがしにくい。しかしスライムは簡単に門を通ることができましょう。出入りする者のすべての荷物をあらためるとなるとどれだけの時間がかかるやら」

「ではどうすればいい?」

「スライムを養殖すべきでしょう。スライムは残飯でも育ちます。スライム牧場を作って燃料用のスライムを増やしてはいかがでしょうか?」

「ふむ。生ゴミ対策にもなるか。それで行こう」

 こうして事件は収束した。アキラとイレーヌは武器と売り上げを手渡されて代官屋敷を出た。長い夜だった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ