-2- 異端
お久しぶりです。
公言しましたとおり、更新が遅く申し訳ございません。
(しかもこんな序盤から)
細々と続けていきたいと思いますので、宜しくお願い致します。
ルルが教室に入ると、既にあらかたの生徒は到着していたのか、大体の席は埋まっていた。
辺りを見回すと、いくつかのグループが出来ているようで、何人かがおしゃべりに興じてる。
「や。ちょっといいかい?」
入り口付近で、そんな室内の様子を見ていたルルに、背後から声がかかる。
振り返ると、自分と同じくらいの背の女子が立っていた。
深紅と言えるほどの、紅い目を持った彼女は、右手を軽く上げながらこちらに微笑みかける。
ざんばらになっている髪の毛は、瞳と同じく真っ赤なもので、ルルは軽く目がチカチカとした。
「は、はい。なんでしょう?」
いきなり尋ねられたことに若干の疑問符を浮かべながら聞き返す。
普段から人と話す事に慣れていないルルは、やや後ろに引けながらではあるが、
目の前の彼女に対面する。
「いやー、ちょっとお使いでね。今時間ダイジョブかい?」
「え、えぇ。……まだ時間はありますから、少しなら。」
ちらりと自分の端末を確認してから答える。
規定の時間まで、恐らく立ち話程度ならば問題はないだろう、とルルは考えていた。
「ん、アリガト。あ、あたしは二年のアイファ。」
宜しくね。と左手を差し出してくる。
慌てて、出そうとした右手を引っ込めて左手で握り返す。
ほんのりと、熱を帯びた感じの彼女の手を握りながら、握手なんか久しぶりだな、とどうでもいいことを考えていた。
「あ、僕は一年の」
「ルル君、でしょ。知ってるわよ。」
名乗ろうとした時、被せる形で少女、アイファが言ってきた。
驚愕の表情を見せるルルに、いたずらが成功したような笑みを浮かべて、
こちらをのぞき見るアイファ。
「だって、あなたの腕輪にそう書いてあるじゃない。」
そう言ってからからと笑う。
揺れる体につられて、深紅の束が揺らめく姿はまるで火のようだった。
「……、それで、アイファさんは僕に何の御用ですが?」
やや憮然とした口調でルルはアイファに尋ねる。
時間まであまり無いことも加えて、彼女の態度に少しばかり気分を損ねたようだ。
「あぁ。ごめんごめん。
ンっと……、あったあった。ハイ、これ。」
「?」
もぞもぞとスカートのポケットから小さな紙切れを取り出し、こちらに差し出す。
どうやらメモのようで、走り書きのようになにやら書かれている。
「えーと、『明日の購買部の選考会、必ず来るように』って、何ですかこれ?」
「あ、うちの部長からね。それ。
なんだか最近人手が足りないらしくてさ。あんたにこれを渡すようにって。」
んじゃ、と用件は済んだとばかりに踵を返して立ち去ろうとするアイファ。
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!何でいきなり!?」
いきなりの事に呆然とするまもなく、そそくさと立ち去ろうとするアイファに向かって声を荒げる。
ルルの声に反応したクラスメートの数人が、こちらを見てくるのが分かった。
「ん?さぁ?部長の考えてることはわかんないけど、
あの人のことだからなんかあるんじゃない?」
あたしにはさっぱりだけどね、と付け加えると今度こそその場を後にする。
恐らく、時間的にもぎりぎりなのだろう、教室へと急ぐ他の生徒に紛れてその姿は消えていった。
残されたルルは、手に残った紙切れを見つめて溜息を一つ吐いた。
□
「…ルルです。出身はこの町で、趣味は機械弄りです。専攻は魔学です。
宜しくお願いします。」
パチパチパチ。
まばらな拍手。
まぁ、高校の自己紹介で拍手喝采を浴びても、それはそれで気味が悪いが。
がたん、自分の席に戻り安堵の息をつく。
あの後、担任として、先程壇上に上がっていたオノダが教室に入ってきた。
変わらぬ様子で生徒達を静まらせ、今の自己紹介となっている。
クラスの人数は二十五名。
全クラスその人数で固定されており、各学年十クラスで構成されており、
学年の総人数は二百五十名である。
男女比率はおおよそ同じで、ルルのクラスは男子が一名多い。
先程、ルルの紹介であったように、高校では共通の授業の他に、
『魔学』、『科学』のどちらか、別途専攻する科目を選択する。
魔学は、その名の通り魔法学を習得する。
全ての人間は、保有量を差異はあるが、魔力と呼ばれるものを持っている。
古くは、『気』や『丹』等と呼ばれていたこともあったらしいが、
現在は一般的に『魔力』とそれを呼ぶ。
それこそ、はるか太古ではその存在さえあるとされていなっかた魔力だが、
ある発明家が、ソレを視覚化できる装置を発明。
それを期に、爆発的に魔力の認識が広がる。
所詮、認識できていなかっただけのこと。
ひとたびソレが認知されてからは、そこからは早かった。
あらゆる分野からのアプローチで、瞬く間に一つの分野として確立してしまう。
それが現在の魔学である。
基本的に、『人間は』魔学を専攻する。
なぜか、と聞かれてもルルはそれに対する答えを持っていない。
答えられるとしても、「そういうもの。」という答えしか返せないだろう。
では、科学を専攻するものは誰か。
……それは、アンドロイド。
とはいっても、基本は人間となんら変わりない。
普通に食事を食べるし、睡眠を取らなければならず、子供も作れる。
唯一つ、人間と違うのは、その身に魔力を宿していないこと。
だが、代わりに人間以上の肉体的スペックを彼は持っている。
人間が持ちえる、能力、魔法。ソレを持たないアンドロイド。
故に、彼らは『科学』を求める。
自分達を生み出したソレを追求する。
自己紹介の、専攻を伝える事は己の出自がどちらかを暗に伝えるもの。
つらつらと続いているクラスメートの自己紹介を眺めながら、
『アンドロイド』のルルはあくびをかみ殺した。
短くてすみません。(汗
微速前進ですが進んでいきますので、宜しくお願い致します。
ではまた。