ノーム
作戦通り引き付けてくれている間に詠唱を始める。
「我求めるは大いなる大地の力、今こそその力を示せ《アースウォール》」
地面が大きく揺れたと思うとそこから土の壁が現れた。
さらに続けて唱える。
「大地の精霊よ、我が呼びかけに応え姿を現せ《ノーム》」
すると今度は足元に大きな魔方陣が現れ、その中から身長50センチほどの小さな人型の生き物が出てきた。
これが精霊か・・・初めて見たけど本当に小さいんだな。
驚いている暇はない。今は急いでやることを済ませよう。
「ノーム、君の力でこの壁をもっと大きくしてくれないか?」
するとノームと呼ばれた精霊は無言でコクっとうなずき、すぐに行動に移ってくれた。
どんどん壁は大きくなっていき、やがて少女がいる場所を完全に覆いつくしてしまった。
よし!これで準備完了だ。後は上手くいってくれることを祈るだけだ。
しばらく様子を見ていたが特に変化はなかった。
失敗したかなと思ったその時、突然壁の一部が粉々に砕け散り、中から無傷の少女が出てくる。
どうやら無事成功したみたいだ。
そのまま真っ直ぐこちらに向かって歩いてくる。
そして目の前まで来ると立ち止まり話しかけてきた。
「貴方、さっき私に言ったわよね?『お前のことを倒しに来た』って。なのにどうしてこんなことをするわけ?」
確かに言われたがそれは言葉の綾というものだ。それにあんな言い方をした時点で普通気づくだろうに・・・ まあでも、とりあえずは答えておくか。
「理由か?そうだな・・・あえて言うなら弱いものいじめをしているように見えたからだ。だから助けに入ったんだよ」
本当は違うんだけどね。
本当の理由はただ単に興味があったからなのだけれど。
「ふーん、そうだったんだ。だけど残念ね、私は弱くなんかないわ。むしろ強いくらいよ!」
「ああ、知ってるよ。さっきの戦いを見ていれば分かる。だからこそ聞きたいことがあるんだ」
「何よ?」
「君は魔王の娘と言っていたけど本当なのか?」
「ええ、そうよ」
「それじゃあさ、なんで人間の姿をしているんだ?」
見た目は完全に人間の女の子にしか見えないのだ。
もし仮に彼女が魔王の娘だというなら本来その姿は異形の姿であるはずだ。
「それは簡単よ。だってお父様から姿を変えるように命令されていたからね」
やっぱりか。ならば話は早い。
「それじゃあ改めて聞くよ。君の父親はどこに居るんだ?」
「そんなこと教える訳がないじゃない!」
ですよね~、そりゃそうだ。
だが、予想していた通りの回答だったのであまり驚きはしなかった。
それでは別の質問をしてみることにしよう。
「君はいったい何をしようとしているんだ?」
「そんなことも分からないの? 決まっているでしょ。人間を滅ぼすのよ」
やはりそうだったか。
おそらく彼女は父親からの命令で動いているのだろう。
しかし、そうなると疑問が残る。
「一つだけ聞かせてくれ。なぜそこまでして人間を滅ぼしたいんだ? 何か恨みでもあるのか?」
「別に恨んでなんていないわよ。ただ