魔族
すると、今度は別の方向から違う人物の声が聞こえてくる。
「おい、お前何者だ!? なぜここに居る!!」
村長だった。
どうやらこの子を警戒しているようだ。
少女は不敵な笑みを浮かべるとこう言った。
「私は魔王の娘よ。あなたたちのことは知っているわ。だって私のことを倒しに来たんでしょう? わざわざ殺されに来るなんて馬鹿な人間ね!」
やっぱりか・・・ 俺は納得し、そして同時に理解した。
目の前にいる子は間違いなく敵だと。
おそらくここで倒さないと村に被害が出る可能性がある。
ならばやるしかない! 覚悟を決めて剣を構えた。
それを見た村長も杖を構える。
少女の方を見ると余裕そうな表情をしていた。
おそらく自分の力に相当自信を持っているんだろう。
だが、そんなものは関係ない。
全力で倒すのみだ。
先手必勝とばかりに俺は駆け出した。
まずは様子見も兼ねて魔法で攻撃を試みる。「炎よ、我が敵を撃て《ファイアボール》」
手から火の玉が出現し、一直線に向かって飛んでいく。
だが、少女に当たる直前、何か見えない壁に阻まれてしまったかのように消滅した。
「えっ!?」
予想外の出来事に動揺してしまう。
もしかして結界のようなものでもあるのか? なら直接斬りかかるまでだ! そう判断して一気に距離を詰める。
しかし次の瞬間―――ドスッ!! という鈍い音が耳に響いた。
「ぐあっ!?」
腹部に強い衝撃を受け吹き飛ばされてしまう。
なんとか受け身を取り立ち上がる。見ると腹からは血が出ていた。
まさかあの一瞬の間に攻撃をされたっていうのか? まったく見えなかったぞ・・・ その後も何度か攻撃を仕掛けるが結果は同じだった。
逆にこっちの攻撃は全て防がれてしまい、相手は一切ダメージを受けていないように見える。
一方的な戦いが続く中、俺は焦っていた。
このままじゃ勝てない・・・どうにかしないと・・・ 必死になって考えるが全くいい案が浮かんでこなかった。
そんな時、ふと脳裏にある考えがよぎった。
待てよ・・・確か魔王って言っていたよな。ということはつまり・・・ その可能性を信じて実行に移すことにした。
「村長さん、頼みたいことがあります」
「なんだい?」
「俺のことを囮にしてあいつを引き付けてください」
「君は一体何を言っているんだ?」