魚釣り
リタイアして久しぶりに釣りに行くことにした。家族分魚を釣ることはできるのか
☆★☆ 次の日、俺は湖で魚釣りをすることにした。たまにはみんなに魚をご馳走したい。リゼもリアナも喜んでくれるはずだ。
釣り竿を用意して湖の畔に向かう。
すると、先客がいることに気がついた。
それは妹のルナであった。
ルナはこちらを見るなり、「げっ」と嫌そうな声をあげる。
どうやら嫌われてしまったらしい。
昔はよく一緒に遊んでいたのだが……。
俺がため息をつくと、ルナが話しかけてきた。「勇者さん……こんなところで何やってるんですか? もしかして覗きですか?」
とジト目で睨んでくる。
「違うよ……! ただ、魚でも釣ろうかなって思ってね」
「ふぅん……そうなんですね。まぁ、せいぜい頑張ってください」
そう言うとルナはスタスタとどこかへ行ってしまった。
俺は再び大きな溜息をつく。
それから数時間ほど経った頃だろうか。
ようやく一匹だけ魚が釣れた。
「やっと一匹か。これじゃあ全員分はとても足りないな」
そう呟いたその時だった。
後ろから気配を感じ振り返ると、そこにリザの姿があった。
「勇者様、ここにいらっしゃったんですね。探しましたよ」
と微笑む彼女に思わずドキッとする。
今日の彼女は白を基調としたワンピースを着ており、まるで女神のように美しかった。
俺はすぐに顔を背ける。きっと今の顔を見られたくなかったからだ。
「ああ、ちょっと休憩しようと思ってさ」「そうなんですね。隣に座ってもいいですか?」
「えっ……あっ、うん!」
動揺しながらもなんとか返事をする。
すると、リザが隣に座る気配がした。
肩がくっつきそうになるほどの距離だ。
心臓が激しく鼓動しているのが分かる。
俺は必死に落ち着こうとするが上手くいかない。
しばらくの間、沈黙が続く。
すると、リザが口を開いた。
「あの……」
「ど、どうしたんだい?」
「もしよかったらなんですけど、私と一緒にお料理しませんか? この前、街に行った時に美味しい食材を買ってきたんですよ」
と嬉しそうに語るリザ。
その笑顔を見て俺は思う。
こんなにも幸せな日々がずっと続けばいいと――