表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/16

9、それは一つの終わり

「……そう、覚醒したんだね。黄昏の炎は、どこにも行けない死者を導く優しい灯火。その羽を持つ者は――黄昏の導き手、だったかな?」


 ゆっくりと体を動かして、姿を人のものへと戻した。

 黄昏の炎によって浄化されたことで、この地に満ちていた呪いも、アンデッドも。還るべき場所へと送られた。

 ここにはかつて、美しい街があった。とある少女が愛した、大切な場所だ。けれどその面影は、遠い過去となってしまった。


「見て、サクラ。朝だ」


 眩しい陽光に目を細めて、瓦礫と化した地上へと降り立った。変色した石は脆く、腐った木材などが散乱していて。失われたものの大きさを僕へと伝えてきた。

 昨日の、賑やかな光景は。二度と帰って来ない。


「――うん?」


 静かだった精霊たちが騒ぐ。まだなにか、危険なものがあるのか? シズたちを守るために、その場所へと歩いた僕は。騎士たちを連れた、姉の姿を見つけた。


「……ウィル?」


 あっちも僕を見つけて、呆然とする。「人形王子か?」「でもあいつは、黒龍様の贄に……」だから、なんで僕が僕の贄になるんだよ。


「悪魔、なの?」

「なにを言うかと思えば、悪魔か。ならは君は、妖精かな? ルーナ王女」


 もしここにシズがいたら、絵本から出てきた女の子みたい、と喜ぶ気がして。姉のことを、妖精だと言ってみた。そしたら、ものすごい顔で睨まれた。


「……なにこれ。ゲームと違うじゃない」


 ボソッと呟かれたそれは、僕の耳にしか届かなかったようだ。

 侍女を殺して、僕を国から追い出した少女は。この世界のことをゲームだと言った。

 ただの偶然にしては、あまりにもおかしい。


「みなさん、惑わされないでください!! 私の弟、ウィル・クロノーズは黒龍様の贄となったのです! 今我らの前にいるのは、弟の姿をした悪魔なのです! この街を、呪いで滅ぼしたのは彼。みなさま、どうか討伐を!!」


 うん、なんとなく分かった。どうやら僕は、思い違いをしていたようだ。彼女は――敵だ。


「僕に魔術は通じないよ」


 兵士たちが飛ばした魔術が掻き消える。魔力さえも届かない。

 だから帝国は、たくさんの毒を用意した。

 ホムンクルスを使った。

 君たちの先祖は、必死だったんだ。自分たちに紛れ込んだ妖精を、根絶やしにするために。

 黒龍という安全装置を排除した。


 兵士たちの行動に、精霊たちが怒る。魔術を使えなくなった彼らは、剣を抜いて襲いかかってきた。

 誰も僕を、黒龍だと分かってない。人間に生まれ変わったことを知らないから、同じ過ちを繰り返そうとしていた。

 もしバレンティアがこのことを知ったら、今度こそ皆殺しにされてしまうよ。僕を守ろうとする精霊たちの突風が、周囲の音を掻き消した。

 こちらを見てるシズたちに、逃げろと。頭に直接声を響かせて、空へと飛ぶことにした。

 シズのように風を踏んで、遠い場所へと走っていく。

 いつか必ず、妖精たちのことを教えるから。どうか君たちも、バレンティアを探してほしい。

 黒龍の使徒となった君たちであれば、あいつもそれなりの扱いをするはずだ。


(いつか必ず、また会おう)


 そしてみんなで、世界を巡ろう。アーリャの想いは、僕たちのここにある。だからフェアリーは、たくさんの冒険をするんだ。

 きっとそれが、彼女の幸せに繋がる。


ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます。

これにて妖精の章は終わりになります。

次からはクロノーズ王国の知らせによって、他の国からも命を狙われることになります。


妖精の章は、この世界がどういう状況なのかの説明。プロローグのようなものです。


次の章からようやく、クロとカムラの恋愛になります。番とか伴侶って言ってますけど、無事に再会して一緒にいるようになったら……。

恋を自覚したばかりの乙女になると思うんですよね。

一緒にいたいけど、恥ずかしい。会話がまったくできない。自分を避けるクロに、まさか嫌われた? と青ざめるカムラの勘違いを早く書きたいです!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ