幼馴染みがほのぼのと恋人になる話。
ガッツリとよくある恋愛小説書いてみたくて挑戦しました。
広い心で読んでいただけると嬉しいです。
町のはずれ、森への入り口のすぐ側に住み、狩りをして生計をたてている家族がいる。町の人々は森への知識の広さや狩りの腕前から森の門番と呼んでいた。そんな家の娘サラはとても活発で天真爛漫。いつも茶色い髪を後ろの高い位置で一つにまとめ、シャツにズボンと言う姿で走り回っている。普段は可愛らしい顔をしているが獲物を前にしたときの顔はとても凛々しくそこが彼女の魅力になっている。
(今日は大好きなパンが買えたわぁ!このパン、サクふわでバターの香りもちょうど良くて食べると幸せになるのよね~!店で一番人気の商品だから、売り切れてる事多いんだけど今日は2個だけ残っててラッキーだったわ~!)
サラは今日の朝の狩った鹿の角や魔獣の牙等を馴染みの工房へ卸し、お気に入りのパン屋へ立ち寄った後家へ続く道をスキップしながら帰っていた。すると少し前に黒い髪の見慣れた後ろ姿を発見した。
「エド!!今日はどうしたの?」
「あーサラ、おはよう。ほら、母さんが畑で取れた野菜持ってけって。」
「わーい!エドの家の野菜甘くて美味しいのよね!って、エド!おはようってもう夕方近くよ?さっき工房へ行ったけど居なかったわよね?また明け方まで納屋に籠って作業してたの?」
「しょうがないよ。気がついたら朝になってるんだ。」
製作に集中すると寝食を忘れ明け方まで作業していることが多くて心配だとエドの母親がよく言っていたことを思い出した。
幼馴染みのエドとは昔は一緒に木登りしたり落とし穴を作って野生の動物を捕まえたりと遊んでいた。と言ってもマイペースでボーっとしている事の多いエドは、活発でお淑やかとは程遠いサラに付き合わされていただけとも言える。木に登って叫ぶサラを見上げた後、エドはその木の下でサラが飽きるまで本を読んだりしていた。町の領主の貴族様は優しい方で週に一回町の子供を教会に集め文字の読み書きを教える学習塾のようなものを作った。そして文字が読めるようになると本を貸し出してくれる。エドは本を読むのが大好きな男の子だった。そんなエドは成長すると家の営む工房を手伝うようになり、サラの家から仕入れた角や牙等で工具や防具等を作っている。最近エドがアクセサリーや髪飾りを作るようになり、それが意外にも好評で納屋を片付けそこで製作に励むようになっていったのだ。
「そうだ!ちょうど2個あるしパン食べていくわよね?」「うん。サラは本当にそこのパン大好きだよね~」
家にたどり着くと、2人で外に置いてあるベンチで先程買ってきたパンを食べることにした。週に一度はこうして2人でパンやお菓子、お茶を飲みながら最近あった事を話している。森は美味しい実がなる頃だとか、近所のおじさんがぎっくり腰になったとか、そんな話をしている時ののんびりとした空気がサラはとても大好きだった。家族と話している時とはまた違う暖かみを感じるからだ。
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ある日、珍しい魔獣が獲れたのでウキウキした気分で町へ卸しに行った。工房まで後少しと言うところで、見慣れた姿を見つけたサラは大声で名前を呼ぼうとしてやめてしまった。エドが可愛い女の子と見慣れない照れたような笑顔で話していたからだった。週に一度のエドとの団欒タイムは続いていたが、恋人が出来たとか好きな子がいるような話は聞いていなかったし、サラと居るときのエドは気が緩んでいるのか表情が少なくあまり笑わない。よくサラの話をボーっと聞いていることが多い。だからあんな風に笑うエドの事をサラは知らなかった。
あんなエドの姿を見ていたくなくて、エドの家族が営む工房へ逃げ込んだ。
「おぅ、サラちゃん!今日は何を持ってきてくれたんだい?」
「おじさん、こんにちは…今日はね、久しぶりにカティクシュが獲れたの!結構大きくて、牙も毛皮も良い状態で持ってこれたわ。」
「おぅ!これは、これは!創作意欲が沸くような上等な代物をありがとな!!最近はエドの始めたアクセサリー類も評判でな、隣町からも客が来るようになったんだ!こんなむさ苦しい店に女性の客も増えてなぁ…」
「おじさん!!今日は急いでるからもう帰るわね!いつもありがとう!」
「おぅ!こちらこそありがとな!!気を付けて帰れよー!」
サラは慌てて工房を飛び出し、家への道を走っていた。エドの作るアクセサリーが評判なことも、女性客が増えたことも今は聞きたくなかった。一緒にパンやお菓子を食べるエドは昔から知ってるエドなのに、町で見たエドは別人のようで知らない人みたいだった。家族以外でエドの事を一番理解しているのは私だと思っていたのに、なんて自惚れだったんだろう。
本当は週に一回の団欒タイムも私だけが楽しくて、エドは幼馴染みの為に優しいからわざわざ付き合ってるだけなのかもしれない。
(よし、次エドが来たときにはしっかりと話をしましょう。忙しいなら無理しなくても良いと伝えるのよ。いつまでも幼馴染み離れ出来ないなんて困るわよね。)
次の日、いつものようにエドがサラの家へやってきた。
「サラ~昨日美味しいお菓子を貰ったんだ。サラが好きだと思って持ってきた。」
(一人で考えすぎてどんな顔で会えば良いか悩んでいたのに、普通すぎて拍子抜けだわ…)普段通りのエドに少しだけ落ち着いたサラであった。
「いらっしゃい、エド!うわー!美味しそうなお菓子ね!!お茶を入れるわ。先にベンチに座ってて!」
「分かった。先に座っておくね~」
お茶を入れたコップを2つ持ちベンチに向かう。
(これが最後になるかもしれないのよね…。お菓子を食べる間は楽しい時間を過ごすの。一息ついたら話を切り出すのよ!頑張るの、サラ!!)
「お待たせ~!さぁ、食べよう!」
こんな時に限ってたいした話題もなく、お菓子はすぐに無くなってしまった。
「ねぇサラ?昨日カティクシュが獲れたんだろ?結構大きかったみたいだし怪我はしなかった?」
「えっ?あ~大丈夫だったよ!昔と違うもの。あれくらいの大きさなら朝飯前よ!」
「それなら良かった。あの牙僕がもらって指輪に加工してるんだ。カティクシュって夫婦になったら死ぬまで一緒にいるだろ?恋人通しでつける指輪にどうかなって思ったんだ。」
「……そうなの。」
「?サラ?どうした?体調悪い?帰ろうか?」
「待ってエド、帰らないで。今帰られたらきっと話せないわ。…私昨日エドが可愛い女の子と2人で居るところ見ちゃったの。私といる時には見せないような笑顔してた。ごめんなさい、正直今まで2人のこの時間が楽しくて好きだったから何も考えてなかったの。エドに好きな人とか恋人が居たら止めなきゃいけなかったのに…考えないようにしてたみたい。それに、エドのお母さんが最近朝方まで作業してるって言ってたし、仕事が忙しかったら無理して時間作ってくれなくてもいいのよ?2人で座ってお話しするの好きなのよ、だけど我慢とか無理はして欲しくないの。エドが大切だから。」
サラは昨日考えていた事を早口で話しきり、そっとエドの方を見つめた。
エドはいつものようにボーっとした顔をしていたが、少しずつ言われた言葉を理解したのか驚き目を見開いた。
「ねぇ…サラ…?それって僕の事が好きって事で間違いないのかな?」
「えっ?…んっ!?…好き…なのかな?…うん?2人でいることが好き…と言うより…エドが好きなのかも。」
今度はサラが驚いて目をまんまるに見開いた。
「………かもなの?」
「ううん、好き。私、エドが好き!大好き!!エド、結婚しましょう!」
「うん。僕も昔からサラが大好き…って…うん?……結婚?!」
「そう!結婚したらいつでも一緒に居られるでしょう?私エドと2人で話してる時間が本当に大好きなの!お互いの家族だって私とエドなら反対するはずないわ!!だから、結婚しても良いと思わない??」
「…いいよ。僕も結婚したいと思ってた。………実は、サラの父さんと母さんにはもう結婚の許しはもらってあるんだ。後は君にいつ告白とプロポーズをするか考えてたんだ。」
サラは嬉しさからエドに抱きついた。久しぶりに抱きついた体は思ってた以上に逞しくてドキドキした。赤くなった顔を隠したくて、サラは走り出した。
「じゃあ後はエドのお父さんとお母さんだけね!そうと決まれば、今から行きましょ!!」
「えっ?今からじゃなくてもよくない?って…待って!もう少し幸せを噛みしめたかったのに…」
その後はエドの根回しのおかげか、着々と結婚まで進み、2人はエドお手製の指輪で愛を誓い合った。
結婚式後、エドは独立しアクセサリーや髪飾り、小物等を作る工房を開いた。意外にも結婚指輪を求めるお客が多く驚くことになるのはその後のお話。
年老いても2人は、家の外にベンチを置きお菓子やお茶を楽しんで2人の時間を大切に過ごした。
エドは小さい頃読んでいた絵本をサラが横から覗き込み、絵本の中の女の子が着けていた髪飾りが可愛いと言ったことを覚えていてサラの為にアクセサリーや髪飾りを作り始めました。
初めて作った作品は大事に置いていて、サラに思いを伝えた後渡そうと決めていましたがトントン拍子に結婚までいってしまったので結婚式の夜に渡してます。
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恋愛小説大好きで書いてみましたが、なかなか上手く纏めれず苦戦しました。見るのとやるのでは大違いですね。
エドとサラの住む町の他の人のお話も書いてみたいですが、こればっかりはいつになるやらという感じです。
拙い文章を最後まで読んでくださりありがとうございました。