1 ゆっくりに転生というマジキチジャンル(偏見)
ゆっくりしていってね。
なにも見えない。聞こえない。だが、ふんわりと温かく居心地がいい場所で眠っている感覚がある。
「…………!!ま………………う…………れ……!」
遠いようで近いような場所から嬉しそうな声が聞こえてくる。どうしたのだろうか?なにかいいことがあったのか?そんな俺の思考はすぐさま強烈な浮遊感によって上書きされた。
「!? ピゃァァァァ!!」
突然の出来事に自分でも驚くほど高い声が出た。てか、これほんとに俺の声か?いや、そんなことを考えている場合じゃない!なにが起こっているんだ!
俺の疑問に答えを見せるように謎の場所から光が差し込み、その光の中に吸い込まれる。そして、そのなかから俺は飛び出した。擬音にするから、ポーンだろうか。
急な光に目がなれていない俺は眩しさにより目を開くことができない。しかし、その間にも、俺の体はどこかに向かって飛んでいく。まだ状況が飲み込めていない俺を、なにか柔らかにものが包み込む。
……受け止められた?誰に?なんで?てか、俺はなんでこんなところに……
「ゆゆ~ん、ゆっくりしたおちびたちがうまれたよ!」
「ゆ!れいむ、よくがんばったのぜ!おかげでゆっくりしたおちびたちが生まれたんだぜ!」
……この声はゆっくりか?この街で、野生のゆっくりなんてまずいないだろうに……。ん?おちび?
「ゆ?このおちびなんかへんなのぜ。こんなゆっくり見たことないのぜ。」
へん?見たことのないゆっくり?訳がわからない。
「ゆ!いもーちょ!ゆっくりしていってね!」
「ゆっくち!」
……妹?あれ?なんか嫌な予感がして来た。俺はやっと慣れてきた瞳を開き、回りを見回す。
するとそこには、俺を覗き込む大小様々な4つの影があった。体感サッカーボールほどの大きさの体に黄色と黒の髪を生やし、汚い帽子とリボンをつけている二体の大きな個体。小さいが、同じような背格好をしている二体の小さな個体。
ゆっくりれいむとゆっくりまりさの一家だろうか。しかし、問題はそこではない。そのゆっくりたちが俺を見ながら《妹》といっているのだ。
俺は口をひきつらせながらも、視点を下ろし自分を見る。
そこには、モチモチの肌にピコピコの動く髪を腕として使っているゆっくりの姿があった………………!?
「にゃんでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
俺はまだ未発達の声帯を精一杯使い、叫んだ。
俺はゆっくりに転生してしまった。
小説家になろうにて、異世界系の作品を書かせていただいています。もし興味のある方は見ていっていただけると嬉しいです。
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