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永久の自己嫌悪

――醜き浮世を繭で排し、胡蝶の夢を見続ける。完結した常世の少女は、それでも青い夢を見る。



 少女は繭の中で目覚めた。


 その背に生えた、アゲハの翅を広げようと白い暗闇を突き破る。


 抱いていた理想の成就を確信し、逸る気持ちを心地よく感じながら、外にある愛しい夢想を馳せていた。


 差し込む光、開ける景色、そこは――。


「なんで……どうして……やだっ……やだっ、いやだいやだ、いやだぁああああっ!!」


 金切り声が木霊する。狂乱と絶叫が無数の糸となって吐き出され、街に張り巡らされていく。


「こんなんじゃないっ! ボクが望んだのはこんなんじゃ……違うっ

! ボクはこんなの望んでない! 望んでないのにぃっ……!」


 それは常世の牢獄。もはや誰にも声は届かず、もはや誰にも手は届かない。


「やり直さなきゃ……もう一度……いや、何度でも、やり直せば、きっといつかは、いつかはきっと……」


 永久に続く悲劇のなかで、たった一人泣き叫ぶ少女の瞳はいつしか金色の狂気を纏う。

 煌びやかな翅を揺らし、霧中の夢を貪るように何度も頬張って。


 穢れなき純白が残酷な浮世を隔て、空虚の中に架空を注ぐ。

 群青色の架空に溺れ、揺ぎ無い現実から眼を背け続けた。

 身体の内から這い上がる、黒い蜘蛛に怯えながら。

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