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アスタルテ、覚醒




「……かく…せい…!!」




アスタルテがスキルを唱えたその瞬間、彼女達は眩い光に包み込まれた。





そしてアスタルテが次に目を開けた時に映ったものは、驚いた目でこちらを見つめる3人だった。




「ア、アスタルテ君……その見た目は一体…?」




(え、見た目?ケガのことじゃなくて…?)




レーネの言葉を聞いたアスタルテは自分の手足や身体を見るが、特に変わった様子は無い。




「えっと、多分背中の事ですわ…」

「……背中?」




アスタルテが後ろを見ると、羽の大きさが大人の姿の時のように大きくなっていた。




「羽が大きくなってる…?」




いや、でもそんなに驚くことなのだろうか…?

そんなことよりも、ケガが治った…!とかそういう反応が普通な気がするんだけど…。





「……違う…。……背中…」

「ん…?」




アスタルテが疑問を浮かべていると、今度はコトハから指摘が飛ぶ。

確かに背中と言われて見たのは腰の羽だけど……背中?





アスタルテは背中を反って首を回し、なんとか背中へと視線を移す。




「……!?」




なんとそこには天使のような真っ白の翼が生えていたのだ。




(もしかして……“魔神”の、“神”部分が出てきたって事…?)




「アスタルテ君って()()……だったよね?」

「えっと……」




どうしよう……実は魔神だって言うか…?

レーネさん達とは今後も一緒にいるわけだし、そろそろ話してもいい気がする…。

でも、今はそんな場合じゃない!





「これが終わったら……全部話しますね!」

「あっ、ちょっと!アスタルテ君!?」





そう言ってアスタルテはノレスの元へと飛ぶ。




まぁ、全部って言ったけど元が男だったっていうのは伏せておこう、うん。





「そうだ、今のうちにステータスとか確認しておこう…」




確か覚醒のスキルの説明に、ステータスの上昇と専用スキルが出現するって書いてあったはずだ。

いざ戦闘になってからスキルを見るような余裕はないだろう。




状態確認(ステータスチェック)






○●○●○●○●○●○●○●○●






✩ステータス(覚醒中)


HP(体力) -

MP(魔力) -

STR(物理攻撃力) -

INT(魔法攻撃力) -

DEF(物理防御力) -

RES(魔法防御力) -

AGI(素早さ) -

LUK(運) -






○●○●○●○●○●○●○●○●






(え、なにこれ……)




そこには()()表示されていなかった。




どういうことだ…?

でも、確かに以前よりも強大な力は感じるのだ。




困惑しながらも、アスタルテはスキルの欄を見る。

すると、そこには<覚醒専用スキル>というタブが追加されていた。




アスタルテは軽く深呼吸をすると、そこを開く。






○●○●○●○●○●○●○●○●






✩スキル一覧


《任意発動スキル》


・神の獄炎 消費MP - ▽神の炎は術者の意思でしか消えることはない。

・神の光 消費MP -  ▽神の光は周囲へ恵みをもたらす。

・滅尽の裁き 消費MP -  ▽裁きは対象を死へといざなう。

・無への扉 消費MP -  ▽その扉をくぐったものは二度と戻ることはない。

<以下覚醒レベル2で開放>

・???

・???

・???

・???



《常時発動スキル》

・魔法強化(終) ▽魔法の威力が極限に強化される。

・属性反転~獄炎~ ▽獄炎スキル使用時、効果が反転する。

・神のオーラ ▽周囲の友好な者を回復させる

・魔のオーラ ▽周囲の敵対する者へダメージを与える。






○●○●○●○●○●○●○●○●






「ええぇ……」




それを見たアスタルテはさらに困惑が加速する。

まず、任意発動スキルの説明が何をするかではなく、されたらどうなるかなのだ。

よってどんなスキルなのか、それとも魔法なのかが全然わからない。




そしてその下にあるハテナマーク、どうやら覚醒レベル2で開放されるようだが……




(覚醒レベルってなんだ…?覚醒の強化版があるのかな……)




どうしよう……自分のことなのに全然わからない……。

まぁでも、とりあえず実際に使ってみるしかないか……。






そうこうしているうちに、ノレスの元へと到着する。

が、そこにはノレスだけでクエンの姿が見当たらなかった。




「あれノレス、クエンは?」




なんだか異様な雰囲気を放っているノレスの背中に問いかける。

すると一瞬ビクッと反応すると、ゆっくりとこちらに振り返った。




「アスタルテか……?」

「へっ? うん、勿論そうだけど───んんむぅ!?」




ノレスの問いかけに答えてる途中のアスタルテだったが、ノレスに口を塞がれ言葉が止まる。




それは唇同士が触れ合うだけのキスだったが、ディープキスよりも熱くノレスの想いがアスタルテの中に流れ込んできた。

雰囲気的に無理に引っ剥がすことも出来ずアスタルテが硬直していると、やがてゆっくりとノレスの顔が離れた。




「え、えっとぉ……」

「この大うつけ者がっ!!」

「えぇ!?」




キスしてきたと思ったら急に怒鳴られ、アスタルテは困惑する。

すると、今度は思いっきりノレスに抱きしめられる。




「とんだ馬鹿をしおって……死んだらどうするつもりだったんじゃ貴様は……!」

「だ、だって……あんなのが直撃したら国どころか世界が……」

「世界が救われたとて、貴様がいなかったらそんな世界……我にはいらぬ!」

「でも……」

「約束しろ、二度とあのような無茶は犯すな…! 我を……我を置いていかないでくれ……」

「ノレス……」




ノレスの震える声を聞いて、アスタルテはその背中をさする。

そういえばさっきレーネさんにも色々言われたな……。




こうなってしまったのは自分の力を過信しすぎたからだ。

もう二度と皆に心配をかけたくない。泣いてほしくない。




────そのためにも、もっと強くならないと……この世界の誰よりも……!





「私は……まだ……負けてなんか…ない!!」




その時、下の方から声が聞こえた。

慌ててノレスとアスタルテがそっちを見ると、それはボロボロになった血まみれのクエンだった。





「クエン貴様……まだ生きておったか!!」




ノレスが叫ぶと、手元に槍が出現する。




(あの槍……)




それは、アスタルテがノレスに初めて会い、そして戦った時に持っていた槍だ。

それ以降一切武器を使っていなかったから忘れていたけど、ノレスって武器使うんだ……。





「タダで…私が死ぬと思うなあぁ!!この世界も……道連れにしてやる!!」




そう叫んだクエンがキャノン砲に手をかざす。




「一体何を……?」

「まさかクエンのやつ、己の魔力を全て流してもう一発放つ気か!」




慌ててノレスが槍を投げる。

その槍は見事にクエンの腹に突き刺さったが、クエンは歪んだ笑みを浮かべていた。




「もう……遅い…。滅びろ……」




クエンは最後の言葉を発して力尽きた。

その身体からはもう一切の魔力も感じない。





ゴゴゴゴゴゴゴゴ………





嫌な音が聞こえる。

その音の発生源は当然、キャノン砲からだ。




でも、今は状況が違う。

アスタルテもノレスも覚醒しているし、何よりも二人いるのだ。

アスタルテは拳を握りしめると、ノレスの方を見る。





「────最後の一仕事、片付けよう」




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