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SSランク、Sランクの怒りに触れる




「こちら紅茶になりますにゃ…」

「あら、頂きますわ」




おずおずとチリアが紅茶を差し出し、マギルカが一口飲む。




「これは…いい茶葉を使っておりますのね」




(普通の価格で市場に売ってる茶葉なんですけど…)




対面に座るアスタルテも紅茶を飲みながら静かに思う。

でもチリアの挿れ方が良いからだろう。

いつも通りの美味しさだった。





「それで?」

マギルカはカップをテーブルに置き、アスタルテを見る。




「ここの主であるSランク冒険者はどこですの?客人でもありSSランクの私を待たせるとは中々の根性ですわね」




それを聞いていたチリアはハテナマークを頭の上に浮かべていた。




(うん、分かるよチリア…)




アスタルテは小さくため息を吐くと、マギルカを見る。





「私が一応ここの主をさせて頂いてます。Sランク冒険者のアスタルテです」

ペコリ、と頭を下げ挨拶をしたアスタルテだったが、顔を上げるとマギルカは固まっていた。




「えっと…?」

「貴方、使用人なんじゃありませんの…?」

「いえ、先程申した通りSランク冒険者ですし、ここの主です。正確には他のSランク冒険者達とお金を出し合ってここを購入したので主ということには私も疑問ではあるんですが…」




チラリとマギルカの反応を見ると、マギルカはどこかを見ていた。




(ん…?視線の先は…腕?)




そこでアスタルテはハッとする。




「あ!ダイヤのアームレット!ご存知でしょうが、これはSランク冒険者にしか装着できません!」

アスタルテは腕を前に差し出す。




そう、アームレットは一人一人特注で、特殊な魔法がかけられている。

そのため、所有者以外の人が付けたりする事は不可能なのだ。




アスタルテはこれで納得してもらえるだろうと思ったが、帰ってきたのは予想外の返答だった。





「貴方がSランクだということは分かりましたわ。でも、どんな姑息な手を使ってなったんですの?」

「え…?」

「そうじゃありませんの?だって貴方からはSランクになりうる力を一切感じませんもの。というより、そこらのDランク冒険者の方がまだ貴方より力を感じますわ」




(え、この人何を言ってるの…?)




むしろ普段からオーラをバンバン溢れさせている自己顕示欲の塊みたいな人の方が少ないわ!

アスタルテは呆れてため息をつく。





「あら?図星ですの?ギルドの昇格審査も甘くなったものですわ、あらかたここに住んでいる他のSランク冒険者に魔物を狩らせてその手柄をもらったのでしょう?」

「そんな事してないですし、レーネさん達はそういう事に手を貸す人達でもないです!」




アスタルテの言葉に、マギルカは目を閉じ頭を横に振る。




「ああ、ここに住んでるSランク冒険者ってレーネ達なんですのね。私も少しは彼女らの実力を評価してましたが、所詮はどうしようもない人達だったんですのね。ガッカリですわ」




マギルカの言葉を聞いて、アスタルテの頭部からブチッという音がする。




「にゃ!?」




その様子を見てチリアがキッチンの方へと飛んでいったが、アスタルテはそれに気付かないほど煮えていた。





「さっきからあることないことをベラベラベラベラと……」

「……え?」




物音に気付いたマギルカが紅茶のカップを見ると、カタカタと震えていた。




「私はどう言われようが別に気にしませんよ……誤解はされたくないですけどね……でも、」




やがて震えはテーブルへと移り、床へと移る。




否、床は最初から震えていたのだが、揺れが大きくなるまで気付かなかったのだ。





「レーネさん達を証拠もなく勝手に悪く言うことは、許容できませんねぇ…!」

「ひっ…!」




アスタルテから発せられる尋常ではない力のオーラと怒気を帯びた声に、流石のマギルカも恐怖の声を上げた。




そのオーラは空気をも震え上がらせ、アスタルテを中心とした周りの空気がビリビリと震撼する。





「おっとそこまでじゃ、アスタルテ」

「……ノレス」

「何があったのかは知らぬが…まぁおおよその予想はつく。こやつも懲りたじゃろうし、何よりチリアが失神しかけとるぞ」





ハッとキッチンの方を見ると、チリアはキッチンの端っこで気の毒なほどに縮こまって震えていた。

髪や尻尾は逆立っており、耳はぺたんと倒れてしまっている。

足元に広がる水溜りは紅茶を落としてしまったに違いない……。





マギルカはというと……。

完全に恐怖で顔が引きつってしまっていた…。


















▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲















「すみませんでした…」

「いいえ…こちらこそとんだ非礼でしたわ…」




アスタルテとマギルカはお互いに頭を下げる。





「それにしても」

ふとマギルカが顔を上げ、ノレスの方を見る。

「魔王ノレス、貴方もこちらに来ていましたのね」




マギルカの言葉に、ノレスは飲んでいた紅茶のカップから口を離す。




「来るもなにも、我はここでアスタルテと住んでおるぞ」

「えっ…?」




困惑を浮かべたマギルカの表情が段々と驚きに変わっていく。

「アスタルテさん、魔王ノレスと一緒に住んでいるんですの!?」

「え、まぁそうですけど…」

「なんせこやつは我が惚れた相手じゃからな」

「ほ、惚れ…!?それは真ですの!?」

「そうらしいです…」





マギルカが頭を抱え、椅子の背もたれに寄りかかる。




「あの魔界どころか人間界でも名を知らぬ者はいないと言われる魔王ノレスが…」

マギルカが小さく呟くと、突然ガバっと起き上がる。




「というか、アスタルテさんはまだ子供ではありませんの!」

「あ、私こう見えて200歳です…」




アスタルテの言葉に、マギルカはあんぐりと口を開ける。




「えぇっと…申し訳ありませんが、今日はもうお休みになってもよろしいかしら…」




マギルカは考えることを翌日の自分に押し付けたのだった─────



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