甘い夜
どうしてこうなったのだろうか─────
今、俺は湯船の中にいる。
そして後ろには同じく湯船に浸かったレニーがいて、俺の頭の上に顎を乗せ、抱きついている。
─────いやどうしてこうなった!?
▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲
遡ること数時間前、宿屋をまだ取っていないアスタルテに、レニーがならうちに泊まってはどうかと提案してきた。
流石にそこまで厄介にはなれないと遠慮したが、装備だけじゃ恩は返しきれないからと半ば強引に泊めてもらうことになった。
…まぁ、実際にお金は無かったし行き場が無いのもまた事実だったので助かった事は助かったのだが。
その後は手伝いながら夕食を作り、美味しく頂いた。
食後に出された紅茶がやけに甘ったるいというか若干ケミカルな味だったが、泊めさせてもらっているのもあるし、残すのは失礼だと思い頑張って飲み干した。
その様子をレニーはやけに気にしていたのがアスタルテは気になったが、恐らく獣人族の料理が口に合うか心配だったのだろう、飲み干すとすごく嬉しそうにしていたのでそうに違いない。
するとレニーがお風呂を勧めてきたので、一番風呂に負い目を感じつつもありがたく頂くことにした。
お風呂に大きな鏡があったので改めてしっかりと自分の姿を見てみたのだが、脇腹の後ろからミニサイズの羽が生えている以外は人間とそう変わらなかった。
これで身体中に紋様などがあったなら度肝を抜いていたことだろう。
そして気になる胸なんだが…案の定、ぺったんこだった。
いや一応添える程度にはあるんだが…
まぁ別に大きくなりたい願望とかがあるわけではないので気にしないでおこう。
それにしても、元は男のはずなのに何故か女性になった自分の裸を見ても何も感じなかった。
なんというか、まるで元からこの身体だったかのような違和感のなさというか…
すごくしっくりくるのである。
でも、それもそうだ。
この身体の意識が自分に変わったわけではなく、この身体として自分が生まれ変わったのだから。
そんな事を考えながら髪と身体を洗い終わり湯船でまったりしていると、突如風呂場の扉が開いたのである─────
アスタルテはびっくりして扉の方を見ると、そこにはレニーが立っていた。
…全裸で。
慌てて顔を戻すと、レニーは普通に髪を洗い始めた。
状況がまるで分からず湯船の中で体育座りをしていると、洗い終わったのかレニーが湯船に入ってくる。
「ほらアスタルテさんっ、そんな縮こまっていないでこっちに来てくださいっ」
そう言ってレニーに抱き抱えられたのだった─────
─────うん。きちんと思い返しても、なんでこうなったのか分からん。
幸いなのは、まだレニーが後ろにいるということだ。
いくら女性になったとはいえ、アスタルテの心はまだ生前と変わらないのである。
目の前に全裸の少女がいたらとても目のやり場に困るのだ。
(落ち着け、落ち着くんだ俺…!眼前に裸体があるより全然大丈夫だ…だいじょうb)
─────ふにっ
背中になにやら弾力のある物が触れた。
(だああああああ!!全然大丈夫じゃあねええええ!!)
「そそそ、そろそろのぼせそうだから、さささ先に!あ、あがるね!!」
そう言ってアスタルテは某RPGのメタルなスライムが如く、高速で脱衣所まで駆けた。
そして用意されていたフリフリのパジャマを見て一瞬フリーズするが、それしかなかったため袖を通しリビングへと戻った。
「妹みたいなものだと思われてるのかな…」
それくらいしかあの行動の理由が思いつかなかった。
「もぅっ…びっくりしちゃいますよぅっ」
振り向くとパジャマを来たレニーが立っていた。
ぷくーっと頬を膨らませているのが可愛らしい。
「ご、ごめん、なんだか恥ずかしくて…」
レニーの裸体が脳裏にフラッシュバックしてしまい、顔が熱くなるのを感じる。
「ところでアスタルテさんっ、身体熱くないですかっ?」
レニーが聞いてきたが、意図がよく分からず首をかしげる。
「熱い…?いや特には…」
そう言うと、レニーが不思議そうな顔をする。
「あれっ?例えば息苦しかったりとかっ、お腹がムズムズしたりとかしませんっ?」
「え、いや全然…」
何のことだろう…アスタルテは全く身に覚えがなく困惑する。
「そうですか…あっ、ちょっと待っててくださいねっ」
レニーはそう言うと台所へ向かっていった。
(もしかしてご飯が合わないかもとか心配してくれてるのかな?普通に美味しかったけど…)
考えていると、レニーがティーカップを持って帰ってきた。
見ると、さっき飲んだ紅茶だった。
「これっ、寝る前に飲むとぐっすり眠れるんですっ、どうぞっ!」
そう言って紅茶を差し出す。
何故かレニーの分は無かった。
「あ、うん…じゃあ…」
正直あまり好きじゃないんだけど…
そう思いつつも口に運ぶ。
茶葉の濃い部分だったのか、さっきよりも更に甘ったるくきつい。
覚悟を決めて一気に飲み干すと、それを確認したレニーがティーカップを片付けた。
「それでは寝ましょうっ」
どうやら寝る部屋が一つしかないらしく、ベッドに促される。
流石に女の子と寝るのは恥ずかしい…
そう思って床でも大丈夫と言ったがそれは却下され、結局一緒に寝ることになってしまった…
「電気消しますねっ」
そう言ってレニーが電気を消し、ベッドに入る。
(お、落ち着け!落ち着くんだ俺!そうだ、羊を数えよう…羊が一匹、羊が二匹、羊が…ん?)
なにやら太ももが触られている気がする。
チラッと横を見ると、すぐそこにレニーの顔があった。
暗くてしっかりは見えないが、明らかに様子がおかしい。
「ふふっ、アスタルテさぁんっ?」
レニーは甘えるような声を出すと、太ももにあった手をアスタルテのパジャマの中に入れ、おへその辺りをツーっと這うように動かす。
「れれ、レニー!?」
ただならぬ気配を感じベッドから出ようとするも、一足先に動いたレニーがアスタルテに覆い被さりそれを阻止する。
「今度は逃がしませんよぉっ?」
両手を握られ、身体にはレニーが乗っているせいで動くことができない─────
アスタルテの力ならば強引に押しのける事も出来るのだが、力加減を誤るとレニーを傷付けてしまう。
そう思うと行動にも移せずでどうしようもなかった。
アスタルテが抵抗しないのを見ると、レニーはアスタルテの首元に顔を近づけ、パジャマのファスナーを口で咥えそのまま下に下ろした。
両手を繋いだままだったからか最後までは下ろさなかったが、アスタルテの胸がはだけてしまう。
恥ずかしさからアスタルテは顔が熱くなるのを感じた。
「れ、レニー…ななな、なんでこんな…」
レニーの行動が理解できず、しどろもどろになりながらもなんとか声を出す。
それを聞いたレニーが再びアスタルテに覆いかぶさると、レニーは甘い声で囁く─────
「なんでって、アスタルテさんが可愛いからですよっ?」
レニーが耳を甘噛みする。
「こんなにも可愛くてっ、なのに無防備で─────」
レニーがアスタルテを見つめる。
もはや鼻と鼻が付きそうな程の近さだった。
「なのでっ、そんな無防備でいたらどうなってしまうかっ、教えてあげますねっ」
「無防備って、そんな事な…んむぅ!?」
アスタルテが言い終える前に、その口はレニーの口で塞がれてしまう─────
抵抗しようにも、両手も身体もガッチリと抑えられうまく動かすことができない。
レニーの舌が口の中に侵入し、時に優しく、時に激しく舌が絡み合う─────
「ん、ん~!!」
最初はなんとか抜け出そうともがいていたアスタルテだったが、次第に力がどんどん抜けていってしまい、未知の快感に身を委ねてしまっていた。
体感にして数十分にも感じられた果てにレニーが顔を離すと、お互いの舌は一筋の透明な糸で繋がっており、それがまた心臓の高鳴りを加速させた─────
「きもち…よかったですかぁっ?」
レニーが甘く囁く────
その声にドキドキするアスタルテだが、慌てて首を横に振る。
しかし、この選択がアスタルテには凶と出てしまう─────
「ならっ、アスタルテさんがきもちいいって認めるまで…続けないといけないですねっ?」
そう言うと再び舌と舌が結ばれる。
「んちゅっ…ちゅるる…あふたりゅてさぁん…」
レニーが声を出すと同時に膝を動かし、それがコツンっと当たる。
─────その瞬間アスタルテに雷が流れるような感覚が走る。
レニーが器用に足を動かし続けると、やがてアスタルテは押し寄せる波に耐え切れずに跳ねてしまった。
高ステータスのはずなのに呼吸は乱れ、息切れしてしまう─────
まるで力を封印されたかの如く、動くことができなかった。
(どう…なってるんだ…俺の身体は…)
─────夜はまだ始まったばかりである。
この日、レニーの道具屋では二つの花が散るのであった─────
どうも、あすれみです!
あの~、これ…セーフなんでしょうか…
朝っぱらからすみません笑
次はいよいよギルドですよ!
ではまた!




