夢の中で
手遅れにならないうちに書かなきゃと、雪菜は寝床に入って考えていた。「今日家族で話していた事を思い返して書こっかな〜」と思いながら、お金が無かった昔の時代風景や、沢山のお金が国民皆んなに配られている風景を思い浮かべているうちに、夢だか現実だか解らない世界が訪れてきた。
何故か友也君が白衣を着て理科室みたいな所で色んな物の重さを量っている。雪菜がそこに現れて「あっ、友也君何やってるの?」って聞くと「あっ、丁度良かった。色々と量りたい物があってさ。雪菜ちゃん、ちょっとこの天秤に乗ってくれない?」って言ってきた。雪菜と友也は初対面の筈なのに、全く違和感が無い。
「乗ればいいんだね」と用意された大きな天秤の一方に腰をかけた。すると友也は札束とかコインとかを何処からか沢山集めてきて、天秤のもう片方の皿に乗せ始めた。「あー、出来るだけ沢山集めてきたんだけどな。全然足りない。ごめん、ごめん。命の重さ、今のオレには量れないや」
そんな事を真面目に言っている。雪菜も「大金持ちになれば量れるのかな?」なんて真剣に考えている。
ビクッとして目が覚めて「変な夢」と思いながら再び眠りに落ちた。
翌朝、雪菜は目を覚ました時、自分の背中に何か重い物がズッシリと乗っかっているような、それでいて自分が何かちょっと強くなっているような感じがした。
明け方に見た夢がそんな気分にさせていたのだ。
雪菜は「うーーーん」と言いながら大きく伸びをした。
「あー、何だったかな?何かヒント貰った気がする。小説の。
んーーーー。思い出せ、思い出せ……
FOX先生が何かを告げに来てたな」
FOX先生は雪菜が朝散歩をしているとたまに現れるキツネだ。そのキツネを見ていると、自然との調和というものを色々教えて貰えるような気がして、雪菜はそのキツネをFOX先生と呼んでいるのだ。
「FOX先生、何か謝ってたな。でも励ましてくれてて、私は何か責任を感じていた」小説にならなくても良いから夢を思い出しながら書いて欲しいと言われていたような気がした。気がしただけかな?
少し違う気もする。
日の出前、雪菜は秘密の場所の石の上に座って、スマホのまだ何も書かれていないメモ画面を開いて暫く睨めっこしていた。主人公の名前を考えていたのだが、あまりいいアイデアが浮かばなかったので雪菜でいいやと思って書き出した。