雪菜が書く物語〜第7部分 ただいま〜
雪菜は約束通りに戻ってきた。何かが解決して戻ってきたわけではない。読者の皆さんに「待っててね」って約束したから戻ってきただけだ。
北斗は逢いにきてくれなかった。
「小説家になっちゃう?」の読者の方も助けてくれなかった。誰かアドバイスくれたり、励ましてくれたりするかな?なんて密かに期待してたけど、そんな事もなかった。
「そりゃそうだよな。私だって投稿してるだけで、他の人の投稿なんて殆ど見ないし、コメントを入れた事なんて一度も無い。『いいな。何かコメントしようかな?』なんて思っても、見ず知らずの人に何か書くのは勇気いるし。コメント入れなくも『雪菜、頑張れ!』って思ってくれてる人はきっといるはず」と最後はプラス思考に持っていった。
ここからこの物語をどういう風に書いていこうか、まだいい案は浮かんでいなかった。それでも雪菜は、ここで投げ出さずに書き続ける決心だけはしていた。
「来年に延期された東京2020が終わるまではこの物語に向き合おう。何でそう思うのかは解らないけど、北斗がそうしろって言ってるような気がしたから」
ここからどんな風に書いていこうか、答えは出ていなかったけれど、雪菜はもっともっと考えてみようと思っていた。「私は何を書きたいのか?」って事を。
「書き始めた、コロロンウイルスの事。首都圏に出されていた緊急事態宣言は全国へと広がった。長期戦となる事は否めない。
現実とは切り離して、私が自由に物語を作っていこうか。例えば、ある植物の種が薬になる事が発見されて平和が戻ってくるとか。キツネがウイルスを食べて無毒化している事が解ったので人々はキツネを大切にするようになったとか。このウイルスが原因であちこちで戦争が起こり、ウイルスは消滅したのに戦争で人類が滅亡するとか。ストーリーは色々浮かんでくるけれど、だから何?って感じ」
「ただ物語を作っていってどうするのかな?最終的にその物語をどうしたいのか。伝えたい事があるのか。読者と一緒に考えたいのか。なぜ私は物語を書くの?」
「小説はストーリーや結末が先にあるべきなのか。小説自体が生きているように、「今」「今」を繋げていけば良いのか?」
雪菜はそんな事を考えていた時に、ある人が言っていた言葉を思い出した。
「小説は自由だ」
……その言葉を心に留めておきたいと思った。
「そうだ、立派な小説を書こうと思わなくていい。今の自分にそんな力が無い事は解ってる。結末は見えなくても、私は書く事から逃げずに向き合おう。コロロンウイルスの現実を見ながら、1年後に私は何を思い何を書いているのか。主人公は私?
……物語と一緒に成長していけるように頑張ろう。少しずつ、少しずつ書いていこう」
雪菜はそう思っていた。




