もう一人の声
声が、聞こえる。もう一人の自分の声が
声が、聞こえる。もう一人の自分の助けを求める声が
「助けてっ!」
「もう嫌なの!こんなことしたくない!」
声が、聞こえる。もう一人の自分の声が
声が、聞こえる。もう一人の自分の頼もしい声が
「大丈夫だ!」
「もう俺に任せろ!俺が替わるから!」
だが、真の意味でお互いの言葉が通じ会うことは今はない
彼女はまだ、限界じゃないから
彼はまだ、本気になれていないから
彼と彼女はぼんやりと言葉を交わし合う
いつか限界が来て、本気になれる日が来るまで
彼女は意味のない励ましの声を
彼は助けようのない救済の声を
二人は一つの体の中で語り合う
愚痴を、嫉妬を、怨嗟を
応援を、声援を、激励を
だがそれも届くことはない。しかしいつしか限界は訪れる、ダムが決壊するかのように
感情が溢れ出すとき、二人の垣根も壊すことだろう