気付き③
「なあ、お前の人生って、どんな?今、幸せか?」
ある日ショウは真面目な顔をして私に訊いた。今、幸せか。
「よく分からない。悲しいとか苦しいとか今は気持ちが分からない。
でもショウに会ってお話ししている時間は好きよ。病院生活で唯一楽しいと思えるから」
「そっか」
ショウは嬉しそうだった。私も嬉しかった。
「でも残念」
「え?」
「俺、退院するんだ」
「あ……そう、なんだ」
ずっとじゃないのは分かってた。
ただお話しするだけの関係だったけど、退院という終わりが来るのは分かってた。
「けど、」
彼は笑う。
「またお前に会いに来るよ。まだ外来で定期的に通院しなきゃだし」
「そう、じゃあ、楽しみにしてるわ」
私たちはその時に連絡先を交換した。
いつでも連絡を取り合えるように。
私にとってショウの連絡先は宝物だ。
これがあればいつどこにいてもショウを感じることができる。
私が眠っていた三年の間で技術が進歩したから。
それから暑い夏が来て私とショウは熱中症にならないようにとショウの外来の日には私の病室がある十七階の食堂で会うようになった。
大体は私が食堂でショウを待っているのだけど、私が病室のベッドで眠っていたり本を読んでいたりすると、「おい」とカーテンの外から声をかけられる。
その声の主がショウだと分かると私は起き上がり、ショウと一緒に食堂に向かうのだった。