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第61話 ライバル(?)現る

 腕に武器パーツを取り付けられるなら、足にも取り付けられてもいいじゃない。実際蹴りの威力が上昇するパーツもあるんだし。ということで、新カテゴリ脚部用拡張パーツが実装されました。知らない間に追加されていたらしい。あの侍にどう勝つかのトレーニングにばかり時間を費やしているから気づかないのだ、愚か者め。

 ということで、その拡張パーツを求めてダンジョンに繰り出そうとしたのだが、ナメクジ君に「戦ってほしい相手がいる」と呼び止められた。


「ダンジョンアタック前のウォーミングアップにちょうどいい。ギャラリーは?」


 無観客でも楽しいが、観客が居れば気分は一層盛り上がる。見られてるほうが燃えるだろう、というと変態っぽいので自重する。


「そう言ってくれると思ってた。間違いなく公開処刑になるだけだから、プライベートマッチで」

「なんだ、初心者の訓練か? それなら俺じゃなくても……」

「向こうのご指名だから」

「じゃあ仕方ない。早く済ませよう」


 ナメクジくんからの招待を受け取って、ルームに参加を選択。チーム用の部屋が暗転して、次の瞬間にはナメクジくん以外に街道のど真ん中に降り立っていた。何度となくこの場所で戦っているから、すっかり見慣れた光景だ。実家のような安心感がある。

 メニューを開いて、機体セットを選択。いつものパイル&ブレードセットを呼び出す。空からいつもの武器を装備した愛機が目の前に降ってくるので、正面装甲を開いて乗り込み機体を起動、戦闘準備OKだ。あとは相手がやってくるのを待つだけ。

 そう待つこともなく、空から敵と思しき相手の機体が降ってきた。


「あれか?」

「あれだ。軽く〆てやれ」

「軽くってなあ……?」


 軽く〆れるような相手だとしても、それを口に出すのは失礼だぞ。死体撃ちよりはマシだけど。そんなことは成長したナメクジくんならわかってくれるはずだが。あえて言うのは何か理由があってのことか。


「あんたがアヌスレイヤーか。偉そうにしやがって、マジで強いのかよ! 今日で後進に道を譲ってもらうぜ、老害が!!」

「ああ。うん……わかったわかった」


 ちゃんと理由あってのことでした。いきなり人を罵倒してくるようなマナーのなっていないプレイヤーは大体キッズか荒らしと相場が決まっている。どちらも実力がないくせに口ばかりでかいザコ……このゲームではあまり見かけないが、それでも確かに居るのだ。

ナメクジくんとか。最初はこんなザマだったが、あれは試合後に送られてきたファンレターで、今回は試合前のラブコールと違いはあるが、似たようなもの。しっかりと格の違いをわからせてあげよう。しかしその前に。


「ところでナメクジくん、あれは知り合いだったりする?」


 わざわざ「戦ってやってくれ」と頼んでくるあたり間違いないとは思うが、一応確認。


「恥ずかしい話だけどその通り。なんとクラスメイト」

「なんでそのクラスメイトに俺が喧嘩を売られてるのか。説明を求む」

「告白されたけど振ったら、高い金を出してプレイ環境用意したのにって逆切れしてる。かわいそうだからフレンド登録はしてあげたけど」

「知らんがな……」

「ほんとにねー」


 もしかしてあの子か。いや、確かに仲良くなるきっかけとして提案はしたけど、それを実行して振られたのは俺のせいじゃないし、ましてナメクジくんのせいでもないだろう。逆恨みが過ぎる。そんな性格だから振られるんだ、でもゲーム内でフレンドに離れたから一歩前進? 進展あったじゃないか。よかったな若者、頑張っていい所見せて挽回したまえ。手加減はせんがな。


「おい早くしろよ!」

「じゃあ……やるかぁ」


 メニューから出撃準備完了を選択……完了。相手も準備をすでに終えていたようで、すぐにカウントダウンが始まる。

 ここからはもう装備を変更できないので、相手の機体は今見えているものが確定で出てくるので、十秒の間に相手のとるであろう戦術を予想する。

軽量フレームにブースター、両手にマシンガン、両肩にロケランの重装備。重量オーバーだが、初手ロケランぶっぱして片方パージすれば重量は許容範囲内で収まる。そのあとはブースターでジャンプして空中からもう片方のロケランで爆撃。殺しきれなければブースターを使った三次元機動を行いつつマシンガンで削り殺す……今対戦で人気の空中戦アセンブリ。エネルギー消費が激しく、武装もロケランがなければチマチマ削ることしかできないので、著しく戦闘継続力に欠けるほぼタイマン専用。空中での操作が可能な上級者向け。

初めて何週間だかは知らないが、初心者に扱いきれる機体ではないと思うが。基本地べたを這いずり回るゲームだし……ということは、それなりに腕はある? それとも強いと聞いて適当に使ってるだけ? 判断に困るが、それは戦えばわかることか。油断はしない。相手の出方を見てしっかり対応してしっかり殺す。


 カウント0。初手ブースターを使って大ジャンプ、同時に相手の肩に乗ったロケットランチャーの内、片方が火を噴き、ロケット弾が噴煙を吐きながら射出される。狙いは一応こっちを追ってはいるが、しかし空中にいればロケランなんて当たるもんじゃない。余裕で全弾回避。跳躍が頂点に達したところで、もう一度ブーストを使用。落下のベクトルを変えて、相手にまっすぐ突っ込んで踏み潰しにかかる……機体が砲弾めいて加速し、地面に着弾。が、相手はこれを後ろ上方へのブーストジャンプで回避。そのまま空中からロケラン発射を狙い、放たれる。

 このまま突っ立っていれば、ロケット弾の直撃または爆風で大ダメージを負うところだが、そんな隙は晒さない。相手の影を追ってもう一度ブーストダッシュ、着弾点で起きる爆発を置き去りにして、相手の真下へと飛び込んだ。

 ロケット弾は威力はあっても弾速が遅い。ブースターを装備しているなら見てから回避が余裕で間に合う。不意打ちか鈍重な機体ならともかく、格闘機相手には牽制程度にしかならない。

 ともかくこれで相手はメイン火力を使い果たした&急所を狙われ放題の位置を取られた。


「これで詰みだな」


 真下は完全な死角で、あちらの視界にこっちは映っていないのは間違いない。対してこちらは見上げれば相手の無防備でセクシーな下半身がよく見える……死角に潜り込まれたら即逃げるのが定石だが、待ってやる理由も、狙わない理由もないな?


「昇龍拳!」


 右手に装備したパイルバンカーを高く突き上げながらの、ブーストジャンプ! 股下からコックピットをまるごと太くて固くて長い杭で串刺しにしてぇ……


「ぶっ殺した!」


HIT! -DESTROYED !-


敵撃破のアナウンスが画面上に流れる。そしてボイスチャットに接続。


「対戦ありがとうございました。大変良い戦いでした、次も是非よろしくおねがいします」


こういうときには、あえて煽らずに。大人として丁寧に謝意を込めたメッセージを送ってあげたほうが相手へのダメージが大きいのだ。女の子の前で汚い言葉を使って煽り散らすのもどうかと思うしね。


「……」


 なんとルームから出て行きやがった。しかも無言。スゴイ・シツレイだ。思わず「全く最近の若いものは……」なんてジジくさい台詞を口走りそうになったが、そんなことを言うほど年食ってない。口に出したが最後、俺も立派な老害の仲間入りだ。老害呼ばわりされるにはまだ30年くらい早い。

 ……さて。全く物足りないことこの上ないが、一応フレンド依頼を送っておく。もしもフレンド登録してくれるなら、布教した責任もある。せっかく高い金を払ってゲームを始めて、女の子に振られた挙句「こんなクソゲーやっとられへんわ」じゃあまりにも可愛そうだし。対戦だけでなく、それ以外の楽しみ方も見つけてもらえるように協力する。


「どうだった」

「今後の成長に期待だな」


 あの機体なら下手に飛ばずに、マシンガンでの引き撃ちに徹されたほうが厄介だった。軽量フレームにブースターなら格闘機相手にも負けない機動力がある。それに気づかずにロケットランチャーでの削りにこだわったのは、初心者なら仕方ないことだ。

 死角に入られた瞬間に逃げなかったのも初心者ならではのミスだし。


「最初に会ったときの私とどっちが強かった?」

「あの頃とは環境が違うからどうとも。あえて言うならどっちも弱い」


 あの頃にはブースターなんてなかったから、地面を這い回って戦うゲームだったし、壁にクモじみて張り付く四脚や、バカみたいな装甲と火力を持つタンクもいなかったし、ブースターを使ってぴょんぴょんウサギやカエルみたいに飛び跳ねる二脚もいなかった。もはや別ゲーに近い。比較は無意味だ。


「やっぱり雑魚だった? こっちも一発で蹴り殺したし」

「悔しさをバネに成長してくれることを期待してる。ナメクジ君みたいになってくれればうれしいよ」


 自分にあった戦い方を見つけられれば成長も早い。あとはそれを突き詰めていけば、あの侍のようになれるかもしれない。格闘部門では間違いなく俺よりも強い、あの侍のように。そんな強者の卵であることを期待している。そうなる日が楽しみだ。


「さて、じゃあ本番のダンジョン探索と行こうか」

「おう。誰か呼ぶ?」

「今ログインしてるのは……ガンナーと侍か。どっちも呼ぼう」

「いいねえ。楽しくなりそうだ」


 そうと決まれば話は早い。早速招待だ。


前回の更新から二か月以上。大変長らくお待たせいたしましたが、ようやく執筆できる環境が戻ってきたので再開します。これまで通りに応援してくださるとうれしいです。

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