第31話 イベントミッション告知
運営からのお知らせ
プレイヤーの皆様。近日開催予定の大規模PvP(プレイヤー同士の戦闘)イベントに向けての準備はお済でしょうか。まだの方には朗報、お済みの方にもお得な情報です。
明日15時より、大規模PvE(プレイヤー対エネミー)イベントミッションを開催いたします。
ミッション内容・大量のアリをできるだけ多く撃破し、大量の報酬を獲得せよ。詳細はゲーム内クエストカウンターにて。
参加資格・なし。全プレイヤー参加可能。
最大参加人数 50人
本ミッション限定の特殊条件。弾薬費・修理費が不要。補給線も完備。撃破されてもプレイヤーキャラが死亡していない場合、補給線まで後退すれば再出撃可能。
また、頭のシェルターに蟻の軍勢対策室が解放されます。チーム勧誘の場として。プレイヤー同士の交流の場としてご活用ください。
では皆様、奮ってご参加ください。
(大地を黒く塗りつぶすアリの軍勢と、複数の女王アリの画像)
以上
公式HPのお知らせを見て、チーム用掲示板に書き込みがないかチェックする。
「俺は出ないからな! 絶対に出ないからな!!」byナメクジ
残念ながらナメクジ君は不参加らしい。虫が苦手って言ってたし、まあそうなるか。でも前回はなんだかんだ言って出てくれたから、今回もそうなってくれると賑やかで嬉しい。無理は言わないけど。
ほかのメンバーの書き込みはまだナシ。自分は参加する旨だけ書き込んで、ヘッドセットをかぶって、椅子に深く座り、リラックスして……音声操作でログイン。
ローディング、と表示されてすぐ。視界が切り替わり、肉体の感覚も変わる。説明を読んでも聞いてもよくわからない謎技術だが、ゲームを楽しむのに理解する必要はないので科学技術ってスゲーと感動だけしておく。
手を握って開いて、身体感覚の同期に遅延がないかをチェック。よし。深呼吸して、ホコリ臭い空気を胸いっぱいに吸い込んだ。自分はプレイヤーではなく、この世界のスカベンジャーの一員になりきる。
割れた鏡、破れて中から灰色の綿がはみ出ているボロいソファ、ガラスの代わりに打ち付けられた安っぽいプラ板……そして真っ白な美少女……美少女?
「げ、ログボちゃん……」
部屋の隅っこに居たのは、初心者にとっては恐ろしく、慣れてくるといい準備運動になる殺し屋、あるいは猟犬とも呼ばれる。普段はアースに乗ってやってくる彼女が、なぜここに居るのだろう。
警戒しながら近寄ると、口を開いた。
「運営チームからのお知らせです。本日15時より特別任務が開始されます。途中参加も可能で、出撃に関するすべてのコストが不要となります。詳細は任務カウンターにてご確認ください。皆様の参加をお待ちしております。以上、お知らせでした」
ログボちゃんからインフォちゃんに転職したらしい。警戒して損した。その直後、彼女の頭上にウィンドウが開いた。
追い出しますか。
>YES
NO
(どちらを選択しても定期襲撃はなくなりません)
家に美少女が居ると不快になる人向けの配慮だろうか。そんな人間が存在するかはさておいて。
とりあえず任務を受けに行こう。チームのメンバーはまだ誰もログインしてないみたいだし。
「行ってらっしゃいませ」
扉から出ていくと、後ろから声がかかった。美少女に送り出されるのは気分がいいな。追い出すのはやめにしておいてやろう。
家から出ると、そこは世紀末。空には濃いスモッグがかかり太陽を覆い隠し。道には黒い煤が雪のように積り、往来の数だけ足跡が残っている。雰囲気を堪能したらメニューを開いてファストトラベル。行き先は任務カウンターで、瞬きすればその入口に立っていた。中に踏み込み、カウンターで依頼を受けに行く。
今日の依頼
※特別任務
作戦名 対アリ殲滅戦
依頼内容 コロニーに接近するアリの撃破。
敵詳細 大量のアリ・女王アリ
依頼者 頭
報酬 総撃破数に応じて
依頼文 地下基地以外にも大アリ共の巣がどこかにあって、繁殖していたらしい。何匹かの女王アリが仲良く、地上を埋め尽くすほど大量の兵隊アリを引き連れてこのコロニーに向かっている。一部隊だけでどうにかなる量じゃない、スカベンジャーは最低限の人員を残して全員出動! 総力戦だ。弾も修理費も、補給も全部こっちで出す、もちろん報酬も出すからあいつらをなんとかしろ! 一匹もコロニーに入れるな、いいな! 俺は虫が嫌いなんだ!
参加者数 1エリアにつき50名
参加資格 なし
鬼気迫る依頼文を読んだら参加登録をして。他の任務はいつもと同じラインナップなので、他のメンバーが来るまで街の散策に出ることにする。
出ない理由は来るイベントに向けてチーム戦の腕を磨いておきたいから。前回の出撃でわかったが、俺にはチームプレイの経験が足りてない。おかげでうまく連携した相手にボロボロにやられたのが……チームワークを食い破る卓越したプレイスキルがないことが悔しい。力がほしい……というわけでショップを覗いて新しい商品が入荷してないか見ることにする。
「ちわー。新商品ないっすかー」
「いらっしゃーい。面白いもの入荷してますぜお兄さん」
ミッション報酬で手に入れたアイテム、装備品に限らずアクセサリとか家具とか。そういったものをユーザーが路上で販売する露天市に遊びに来ました。パイルもここで仕入れた。はじめて任務に成功して、その金で買ったのだ。それから使いこなせるようになるまで修理費に泣いてたけど。
「面白いものって?」
「自爆装置。起動してから二秒でドカンだ。効果範囲は半径数十メートル、開けた場所で格闘機を道連れにするならまず逃げられん。もちろん味方も巻き込むから注意がいるがそんなもんはロマンの前じゃどうでもいいことだ。違うか」
「些細な問題だな」
「だろぅ? 先着一名様一個限りのレアモノだ。ぜひ買っていってくれ」
「俺は使わんが、チームメンバーに好きそうな奴が居る。いくらだ」
「10万」
「買った」
少々。いや結構高いが、普通に払える範囲だ。近接機は弾代が浮く分金が貯まりやすい。パイルは一発あたりは少々高いが、ガトリングや機関砲みたいに大量の弾をばらまくワケじゃないからそこまでじゃない。被弾しなければ修理費も発生しないし。
ソロ時代に荒稼ぎした貯金がたっぷり残ってるし、買うことに迷いはなかった。
「お買い上げあざーーーーっっす!! またよろしくブラザーーーーーー!!!」
「Yeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeee!!! 次も頼むぜブラザー―――――!!!」
超ハイテンションでハイタッチ! そして買った商品はチーム倉庫に転送。どこからともなくガタガタブンブンとやかましいトラックがやってきて、ガスマスクのオッサンたちが荷物を積み込んで走り去っていく。
あとはお任せしとけば倉庫に送られるって寸法よ。他のゲームじゃ売買が済んだらどこかへと消えていつの間にかインベントリに入ってる味気ない部分にこんな演出を仕込むなんて。俺たちの運営は最高だぜ……!
その後も色々探したがめぼしいものはなかったので撤退。Bタイプフレームの値が下がってきてたから、そろそろユーザーの大部分に行き渡ってきたんだろうと感じた。今後手強い敵が増えてくるだろうなぁ、パイルの腕を磨かないとなぁ。と思った午前の部だった。




