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第三話 Operation Broken Steel

「今日も元気に殺し合い~♪ 明日も元気に殺し合い~♪ 今日のボーナスはなんだろなー」


 ログインボーナス代わりに送られてくる猟犬と呼ばれるNPCをぶっ殺したので、本日のドロップアイテムを確認する。

 ゲームをプレイしていると溜まる名声ポイントが一定以上に達すると定期的に送られてくる猟犬ちゃんだけども、AIの設定がゆるいせいで道場通いしてるプレイヤーからするとボーナスにしかならないのだ。初心者にはちょうどいい難易度だけども、ちょっとゲームに慣れてくると物足りない……まあ、一撃必殺の40㎜キャノンを超反応で振り回す凸砂AIなんて怖すぎるけど。それをやらかすのが一部の変態ユーザーだ。


「40mmスナイパーキャノンに、軽量フレームのヘッドパーツね。悪くない」


 前回撃破したときは何もドロップしなくてもやっとしたが、今回はちゃんといいものが落ちた。キャノンは使う予定がないので市場に流す。必要な人が買ってくれるだろう。ヘッドパーツはセンサー性能に影響するので、スペアとして確保。慣れてても物陰から奇襲受けて撃墜判定もらうこともあるからな。


「おう、もう売れたか」


 アセンブル画面で頭部パーツの挿げ替えをしていると、ピコン、と入金の知らせが入った。さすが射撃タイプのロマン武器は需要がある。パイナップルメイスや射突ブレードももっと普及すればいいのに。そうすれば戦場がもっと楽しくなるのに……といっても、扱い慣れるまでに最低百回くらい撃墜される修行が必要だし、難しいか。

 まあ、他人にとって需要が無くとも俺にはあるのだから、それでいい。使いこなせば強いのだから。


 さて、ログボももらったことだし。今日も元気に殺し合いに行きましょう。マイルームから出てバイクに乗って、お仕事紹介所へ移動する。ちなみにリアルでは自動二輪の免許は持ってません。無免許運転ですが仮想現実なので警察も何も言ってきません。でも事故ると死んで、マイルームからリスタート。

 バイクから降りて建物に入ると、今日もガスマスクをつけたアバターがいっぱい。これがこのゲームの長所であり、短所でもある。あの人のアバターかわいい/かっこいいな、自分のアバターはかわいくない/かっこよくないな、と一々思う煩わしさがないが、しかし自分のアバターを見てほしい人には向かない。その分機体のアセンブル(装備変更)やらペイントやらで個性を出せるのだけど。

 ちなみにマイルームではマスクが外れるので、手の込んだキャラメイクが全く無意味というわけではない。最初からマイルームに置いてある鏡は蜘蛛の巣みたいに割れてるので、まともに見える鏡が欲しければ課金して買おう。チーム用ロビーでも外れる、という噂だが、真偽はわからない。ソロプレイヤーなので。


「ちはー。今日はどんな仕事がありますかー」

「いらっしゃい。あなたに紹介できる仕事はこちらです」


※特殊任務

作戦名: Broken Steel.

依頼内容:特殊兵器撃破

報酬:150,000Cr

依頼文:砂漠で発掘中に現れた戦前の無人兵器を撃破してほしい。これを撃破しないことには、砂漠にある戦前基地の調査・発掘は進まない。

なお、敵は極めて強力な武器を有しており、無駄な犠牲を避けるためにも本作戦は少数精鋭で行う。コロニーの発展のため、諸君らの勇敢な働きを期待する。

撃破した機体のパーツの処理は、依頼を受けた人間に任せる。

敵機詳細:全高10m以上の大型人形兵器。レーザー兵器を多用。機動力が極めて高い。20mm以下の弾丸を弾く重装甲。

参加可能人数:実働4名、オペレーター1名

参加資格:スカベンジランク 30以上


依頼内容:ミュータント部隊撃破

敵機詳細:Bタイプフレーム12機、狙撃型、突撃型の混成部隊。

報酬:50,000Cr

依頼文:身の程を弁えないミュータント共が懲りもせずにまたやってきた。一匹残さず叩いて潰せ。コロニー内には一歩も侵入させるな。

参加可能人数:4名

参加資格:なし


依頼内容:死都奪還作戦

依頼内容:死都を占領する敵対コロニー部隊の排除

報酬:0Cr

敵機詳細:不明

依頼文:まだ資源が多く残っている死都を敵対コロニーに占領された。敵に資源を奪われる前に奪還せよ。

参加可能人数:10名

参加資格:なし

備考:プレイヤーマッチ


 今日は特殊兵器撃破にしよう。つい先日実装された、凶悪すぎると掲示板をにぎやかしている特殊兵器。公式HPの動画で見た限りではホバークラフトかブースターを使って飛び回り、接近しては一撃必殺のレーザーブレードをブンブン振り回してくる恐ろしい機体だった……パイルとレーザーブレードのどちらが強いか、あるいは速いかの勝負になりそうだが。楽しそうじゃないか。


「機体登録、どうぞ」


 左手に埋め込まれたチップを、シートにかざす。自分の組んだ機体がホログラフで浮かび上がる。盾、射突ブレ、機関砲、ロケランの、いつもの装備。いつ見てもかっこいい。ほれぼれする。ちなみに、愛刀の銘は菊一文字。勝手にそう名付けた。ケツめがけて一文字を書くように突っ込むので、これほどピッタリなネーミングもないだろう。沖田さんに謝れって? 知らんよ。

 機体ペイントはデザート(砂漠)迷彩。これもかっこいいので付けている。熱や音で探知されるから実用性がないとか言わない。カッコイイから塗ってるのだ。カッコイイは正義。

 そんな愛機を選択し、登録。出撃メンバーの募集をかけて待つこと数分。命知らずの傭兵たちが集合してくれた。

 全員の準備が完了したら、画面が暗転し、装甲車の中へ場面が移った。車内に四機のメカと、そのパイロットが並ぶ。全員コートにガスマスク装備。全員同じ人間に見えて仕方ないが、機体にはそれぞれの個性が出ている。塗装しかり、武装しかり。


「作戦エリアに到着。スカベンジャーは機体に搭乗後、直ちに発進せよ!」


 あいさつをする暇もなく命令が下り、装甲車のハッチが開いて外が丸見えになる。コロニーとは打って変わって空は青く、所々に黒い岩が混じる、地平線まで続く白い砂漠。景色に見とれるのは後でもできる。

 機体に乗り込んで、起動。そして出撃。四機が隊列を組み、砂煙を上げて、目標地点まで邁進していく。互いにやることはわかっているから言葉は少ない。


『敵発見。当機はこの場所から狙撃支援を行う』


 一機が足を止め、折り畳み式の狙撃砲を展開する。20mmを弾く相手でも、それ以上の口径、30mmや40mmならなるほど有効だろう。当たれば、という但し書きはあるが、持ってるってことは、当てるってことだろう。当てられないなら……まあ、そんな奴もいるってことで。

 右隣に走る機体。巨大な砲身を4つ束ねた、30mmガトリング。ジャンク品はよく市場に出ているが、完全な状態のものはレアパーツという話で、かなり高額で出品されているのを何度か見たことがある。そして武器はソレ一つ。それだけで事足りるのか、それ以外に何も装備できないほどの重量なのか。ともかくかっこいい。棚に飾りたい。

 もう一人はパイナップル(爆発)メイスとグレネードランチャー、ロケランと。爆発物モリモリで、撃破されたらさぞかし派手な花火が上がりそうだ……アレが飛んでくる中を突っ込むなら、誤爆がないように願いたい。

 さて、戦友の観察もほどほどに前方に見える目標へカメラを戻す。砂漠の中、バンカーへの侵入を防ぐように佇む黒い塊、あれが今回の撃破目標だ。

 


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