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第29話 模擬戦(アヌスレイヤー対リーダー)

 週半ばでのログイン。リーダーと俺以外に誰もログインしていなかったので、今日は模擬戦でもしようかという話になった。

 俺は楽しめればなんでもいい、断る理由もないので当然引き受けた。が、なんだか様子がおかしい。

 まず相手の機体だが、いつものリーダーは狙撃型を愛用していて、出撃時はそれを使うことがほとんどだ。

 しかし今日はどういうことか、軽量二脚フレームに実体ブレードとレーザーブレード、ブースターを背負っただけの超漢前仕様。いつもと真逆の装備に少し戸惑い、その次に放たれた言葉でまた驚かされた。


「貴様に妹はやらん!」

「は?」


 予想外の連続に完全に呆けてしまい、ブーストの煌めきを垣間見たと思ったら次の瞬間には自分の胸に深々と実体ブレードが突き刺さり。完全に遅いが、カウンターを、と思ったら次いで視界が圧倒的光量で埋め尽くされ、頭を焼き切られた。

 感動するほどきれいな死体蹴りだよ。


 YOU LOSE


 負けは負けだが、不満の残るものであった。しかし負けは負けだ。認めねばならない。


「弱い! こんなに弱い奴に妹はやれんな!!」


 負けを認めたアヌスレイヤーに、油断したリーダーが口を滑らせた。


「…………後半はともかく。前半は聞き捨てならんな」

「なんだ。やるのか。もう一戦やったところで結果は同じだが」

「負けは認める。だからこそ」


 先程は迷いを突かれた。それを言い訳にするつもりはない。予想外に戸惑い、隙を晒したこちらが悪い。その上相手は普段とは違う装備で、全力ではなかった。言い訳の余地がどこにある。

 だから今度は迷わない。必中必殺の一撃をご覧に入れよう。


「来い負け犬! 何度でも叩き潰してやるよ!」

「上等だリベンジマッチだオラァ! 」


 なお、負けは認めても腹が立たないと言ってない。そりゃあ自分の一番得意なフィールドで負かされたらプライドも傷つくよねって話。すぐさま再戦の申込みをして、秒で承認。即機体選択、ブーストとパイルのみ。敵は一機で副装備は一発必中一撃必殺なので不要。

 そして、あちらの装備は今度は本気で殺す気(マジカル)な狙撃仕様。レーザーキャノンとスナイパーキャノンの二本持ち。砂キャを怖がって踏み込むのを躊躇えば、必中必殺のレーザーのチャージが完了する。チャージが終われば詰みとなる。

 詰みを回避するために速攻を仕掛ければ、一直線の軌道を予測されて砂砲で貫かれる。


 カウントが始まる。選択肢は開幕ブーストで正面突撃あるのみ。砂キャは連射ができない。一発外させればあちらの詰みなのだから、気合で避ければこっちの勝ちだ。脚部の積載量的に隠し玉はない。安心して懐に飛び込もう。


 カウントが0になる。瞬間、ブーストを使用。景色が飛び、同時に正面の砲口が光る。時が止まった、というのは比喩であり、そのように感じた。実際は着弾までは数フレームの猶予もなく、その刹那に横ブースト。慣性を無視して真横に機体が飛び、砲弾はなにもない空間を飛翔していくのを見送って、直後に前方ブースト。真正面、射程圏内に敵機を捉え、右腕を胴体に叩きつけて、打ち貫いた。

 レーザーキャノン? 撃たせたら負けなのに撃たせるわけねえだろ。


-HIT-

-ENEMY DESTROYED-

-YOU WIN-


 模擬戦終了後、チームロビーに戻る。


「発砲炎見てから回避余裕でした」

「変態め」

「誰が変態だ失礼な」


 模擬戦が終わり、お互いアバターになった状態での会話だがなんかムカついたので銃殺。即リスポーン。


「なにしやがる」

「とりあえず気は済んだので説明を要求します」

「言葉は不要か」

「獣でも言葉を使うのに人間が言葉を放棄するんじゃねえ」

「さあ来い! 来ないならこっちから行くぞ! チェストォー!」


 ナイフを抜いて斬りかかってきたので、こちらも拳銃を抜いてヘッドショット一発。銃は剣よりも強し。名言だなぁこれは。しかしパイルは銃よりも強い。よってパイルは最強。パイロット用パイルバンカーもあればいいのに。アクセサリでもいいから運営さん実装はよ。

 拠点内なのでリーダーは即リスポーン(蘇生)。襲いかかってきたのでまた射殺。リスポーン、射殺。FPSだったらリスポン狩りとかリスキルとかでさらし者にされてたかもしれないが、ゲームが違うので問題ありません。


マガジン一本分、12発撃ちきって、リーダーの死体も12個重なって、リロードして13個目の死体を重ねようとしたところで。ガンナーくんがログインしてきた。

 状況を見て何を思ったか、目にも留まらぬ速さで抜き打ち。二人揃ってヘッドショットをもらい、そしてリスポーンした。

 仲裁のつもりか、それとも喧嘩両成敗的なやつか。第三者の介入でお互いに頭も冷えて、互いの武器をしまう。


「事情を聞かせてもらえませんかね。一体何があってこんなコトしてたのか」

「俺が知りたい」

「俺の妹に手を出したから兄としてあいつにふさわしい男かどうかを見極めていた所だ。邪魔立てするなら容赦はせんぞ」

「アヌスレイヤーさん心当たりは?」

「人違いじゃないですかね……」


 我が心に一切の淀みなし。返事もまた曇りなし。

 いや全く心当たりがないんですけど。もしかして人違いで襲われたのか俺。


「いや間違いない。毎週土曜日、会ってる子が居るだろう」

「あぁ。もしかして。そりゃ誤解ですよ」


 それなら思い当たる節がある。決して手は出していない、やましいことは一つもない。いらぬ誤解を受け続けて問題が起きては困るので、そうとはっきり伝えねば。

 しかしその前に確認だ。リーダーに個人メッセージを送信。


『リーダーってナメクジ君のお兄さん?』

『貴様に兄と呼ばれる筋合いはない!』

「呼んでねーよ」


 ツッコミ待ちか? それともマジで言ってるのか? と軽く頭を抱える。クレーマーの相手するよりめんどくさい事態になってるぞ、俺に一体どうしろっていうんだ。

 ……まあいいや。なんとかしよう。


「謎が解けた。誤解だこれ。ちょっとメッセージでやりとりするから黙ります」

「手助けが必要なら言ってくれ。できることはする」

「ありがとうございます」


 ガンナーさんに頭を下げる。今この人が聖人に見える……というのは嘘だ。それからリーダーにメッセージを送信。『ナメクジ君とは一緒に飯食って話するだけの仲ですよ』

『ナメクジに手を出したくなる魅力がないだと! 許せん!』


 なんだこいつめんどくせえ。めんどくささのあまり表情筋から一切の力が抜けていく。今鏡を見れば、これ以上ない虚無顔になっていることだろう。


『えー……ナメクジ君は美少女だと思います、魅力はあります。ありますが、立場上手を出すわけにはいかんでしょう。手出ししたら社会的に死にますし』

『うっきー!』


 何故猿。まあいいや。


『うきっ! うきゃきゃ! うきゃー!』

『うほほ、うほっほほうほう』

『日本語でOK』


 よくわからんが理解してもらえたようだ。そういうことにしておく。この話はコレでおしまい。長く苦しい戦いだった。


「で、結局なんの話だったんです?」

「痴情のもつれ」(byリーダー)

「違います」

「ナメクジに手を出した鬼畜外道かと思ってたらただのジェントルメンだった」

「いっそ聖職者と呼んでほしい」


 嫁は居ますが三次元では触れません。なので実質清い体です。聖職者に相応しいとは思いませんか。聖職者にしては俗っぽいけど。まあリアル聖職者も俗物の極みだしいいかなって。


「尻を掘る聖職者か。リアルだな」

「言われてみればそうだな」


 そこまで考えて言った言葉ではないが。わいわいわちゃわちゃ。当初の恐ろしい雰囲気はどこへか消え去り、仲良し三人で出撃して、共同出撃で他のチームをたくさんぶっ殺してきた。ソロもいいけど協力プレイもやっぱり楽しいね。という話だ。


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