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第21話 バトルロイヤル

 今日の天気は、晴れ時々砲弾の雨。所によりパイル。


 地下基地ではアリが相手だったが、今日の戦場は地上、対人戦だ。フィールドはおなじみ廃棄都市。時間帯は昼で、太陽が空に輝いていて、地下で溜まったストレスを浄化してくれている。

ああ、やはり人間は太陽の下で活動するべきなのだと心から感じるが、これはバーチャル空間の偽物の太陽ということを忘れてはいけない。


 視点を地上に戻す。今日は速攻に失敗してちょっとマズイことになっている。


「アヌスレイヤー! 逃がすな、見失えばケツを掘られるぞ!」


 敵はVCボイスチャットで連携を取って襲ってくる。本来は全員が敵のバトルロイヤル形式だってのに、この場に限っては一対七のチーム戦だ。さすがにこの劣勢で攻撃に回るのは厳しい。

 四機が盾と機関砲、狙撃砲を構えて方陣を組み、残り三機が遊撃として自由に動きまわって追いつめてくる。組んで動く連中を狙えば背中を遊撃隊に撃たれ、遊撃隊を狙うと逃げに徹して、残りが妨害をしてくる。撃破どころか接近も難しく、逃げの一手だ。

悔しいやら楽しいやら、と手近な路地にブーストで飛び込み、射線と視線をカット。マップを開いて隠れられる場所を探す。反撃プランを考えるにも一度落ち着かないと。


「おっと」


 さっそく敵が追走してきた。単独行動はせず、三機仲良く。落ち着いて考える暇は与えてくれないらしい。数の不利だけなら地下で嫌になるほどひっくり返してきたが、今日の敵は蟻と違って人間だ。しかも即席で連携を取れるくらいにはゲームに慣れている。つまり強敵。突っ込んで暴れるだけじゃ倒せない。

 これでこそ戦場。心が躍る。

 足を止めていてはハチの巣になるので移動を再開。いくつか隠れられるポイントがあるから、一度そこに身を隠そう。


 追手をなんとか撒き、廃墟の中で動きを止めて反応を消す。こうしてしばらく隠れて居たら仲間割れとか起こさないかな。名案だ。名案だが……待っているだけというのは性に合わない。もうひと手間加えよう。


「すまない。一時の別れだ……必ず取りに戻るから」


 パイルは置いていく。この作戦を実行するにはパイルがあってはだめなのだ。


 すこしの間センサーとにらめっこ。敵はこちらを見失って、仲間割れこそしないものの散開して捜索を始めた。好都合だ。ずっと固まられていたらプラン変更の必要があったが、やはり即席の連携ではボロが出るらしい。

 敵の位置に向けて、静かに移動を開始する。そして角の向こうに敵を見つける。


「この向こうだな。よし」


 ゆっくりと姿を表す。


「!!」


 敵はこちらを見て銃口を向ける。


「待て! 俺は味方だぞ!」


両手を上げて降参のポーズ。騙されてくれなければプランB。このまま斬り殺す。すでにここは格闘戦の間合いだ。


「……パイルは、ないな。武器は」

「弾切れで捨てた。それより奴は見つかったか」


 あっさり騙されてくれたことに喜び、内心でほくそ笑む。ゲーム内の声は数パターン登録されていて、プレイヤーは皆声帯を借りている。だから声だけで個人を判別するのは難しい。

 システムを利用するのも戦術だ。悪く思うなよ。


「いや、まだだ。この近くに居るはずだが……ッ!」


 コアにブレードを突き刺して、撃墜。相手が装備していたライフルを拾って空に撃つ。マガジン一本撃ち尽くしたら地面に捨てて、パイルの場所に戻りつつ一芝居。


「やったぞ! アヌスレイヤーを仕留めた!! 仕留めたんだ!!」


 と、叫んでVCボイスチャットをオフにする。我ながら迫真の演技だった。あとは放っておけば勝手に仲間割れを起こしてくれることでしょう。

 ほどなくして銃声が鳴り出し、作戦の成功を知る。のんびりしてたら獲物が減ってしまう、と急ぐ。


「よーしよし。これからたっぷりオイルを吸わせてあげるからね―」


 パイルを再び装備して、鉄の手で優しく杭の表面を撫でる。返事をするようにバチッと雷光が走った。それでこそ相棒だ、愛してるぜ。


「さあ、遊ぼうか」


 正面突破の大騒ぎも好きだが、今回はひっそりと行く。せっかく策に陥ってくれているのだから、邪魔しては悪い。

 鬼さんこちら、手(銃声)の鳴る方へ。楽しそうな気配に釣られて鬼がやってきましたよ。路地の角で、盾を構えて楽しく撃ち合いしている敵機を発見する。ローラーダッシュ、速やかに忍び寄り、振り向かれる前にパイルでバッテリーごと中身を貫く。


「ふたぁつ」


 撃ち合いをしていた片割れが、弾が飛んでこなくなったことに気付き射撃を中断する。撃破した、と安心したのかどうかは知らないが。抜け殻を押しのけてブースト、景色が飛び、瞬きの間に敵が目の前に迫る。

 迎撃のライフルをいくつか受けたが、こちらはほぼ無傷の状態だった、撃墜されることはない。

 至近、パイルのリロードはまだ終わっていない。じゃあ蹴ろう。

 機体の全重量と、ブーストの最高速度をぜんぶ載せた膝蹴りを盾にぶちこむ。


-Hit-


 ゴシャァ、と激しい衝突音。盾が原型をとどめたまま吹っ飛ぶ。どうやら支える腕が持たなかったようだ、と。着地。相手はバランスを崩しながらも、狙いをしっかりと俺に合わせている。

 しかしもう間合いに入っている。反撃よりも回避を優先するべきだったね、とブレードで腕を切り落とす。


「みーっつ」


 ガードもできず、反撃の手段も失った相手に死刑宣告。パイルをコアのど真ん中に打ち込んで、撃破。丸くてきれいな穴が空きました。


 残る団体様も仲良く楽しく仲間割れ。四機居た敵も内二機がスクラップになり、残る二機も至近距離での殴り合いでボロボロになっている。俺一人を倒すためだけにあんなに一致団結していたのに、目標が消えた途端これか。戦場での友情はどこへ行ったのやら。

 呆れているうちに片方が撃墜され、最後の一人が残った。そしてこちらを見るや否や。


「降参する!」


 なんだつまらん、とは言うまい。それも戦略の一つだ。撃破されれば自分が撃墜した敵機のスコアをすべて奪われるが、降参すれば半分は自分のモノになる。スコアを上げたはいいが、消耗が激しくて勝ち目がないとか。相手が強すぎるとか、そういうときには、自分のスコアの半分を失う代わりに降参を選択できる。


なおこちらにはなんのメリットもない。でもマッチ勝利したら名声とお金をいっぱいもらえるから気にしない。


-You Win-


 画面が暗転し、収支画面に移行する。弾薬費少々。修理費少々。スコアいっぱい。

 恒例の黒字収入です。収支を確認したら機体を降りる。するとそこはチーム格納庫、自分の機体以外にもメンバーの機体が勢揃い。カッコイイ。


「チームメニュー。チーム用口座に入金」


 今回の出撃で得た金額の半分を払い込んで、『今月の仕送りです。母より』と遊び心あるメッセージを残してログアウト。今日も楽しかった。


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