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第17話 ダンジョンアタック再び フロア2

 第二フロア。前回の出撃では、一定ラインに進むと扉が下りて後退できなくなり、周囲に大量の蟻が湧いて出た。所謂初見殺し的な罠が仕掛けてある。残念ながら死ななかったけど。一人では苦労……はそれほどでもなかったが、大暴れで突破した包囲戦だが、果たして四人+一人だとどうなるか。


 四人で円陣を組んで前進。やがて、敵の出現位置まで到達する。

 事前に定めた作戦は、陣形を組んでの全方位攻撃。一方向からの攻撃と、多方向からの攻撃では密度が違うため有効だろうというリーダーの推測が、果たして当たってくれるかどうか。

 ぼこ、ぼこぼこと地面や床を食い破って、大量のアリが現れる。


「出たぞ! 撃て!」


 誰の言葉か、それを合図に全方位へ射撃開始。銃身が回るのに合わせ、陣形も車輪のように回転する。火線が螺旋を描き、放たれる砲弾が迫る蟻の群れを薙ぎ払う。リーダーの思い通りなら、それでうまくいくはずだ。

 さて現実は、辛うじてうまくいっている。近距離まで接近されるのはされるが、攻撃される前に敵は死ぬ。攻撃されても被弾はしない。蟻の酸を弾丸で撃ち落とす変態が居るからだ。液体を固体で打ち消すってどういう目と腕してんだか。変態だな。

 

 そんな感じでしばらく弾を撃ち続けて、残弾には少しの余裕を残して戦闘終了。


「……ヨシッ!」


 動くものがなくなってから、赤熱して煙を上げる砲身を持ち上げる。空気に冷やされ、少しずつ元の黒色を取り戻していくガトリングの姿は、なるほど確かにときめきを感じる。

 このときめきが、ロマンの正体だ。しかし、残念というか惜しくもというか、パイルに勝るロマンを感じることはなかった。これはこれで良いものではある。それは認める。だが、射撃武器は便利だ、だからこそロマンが足りない。

ちっとも論理的でない、わけがわからない、説明できないが、要するに身体がパイルを求めているのだ。ガトリングを手放して突撃したいほどに。


 ……禁断症状が出てしまっているので深呼吸。まだ二戦目だろう、先はあるんだ。パイルを振り回す機会はいずれある。今はその時じゃない。

 錯乱して味方を撃ち殺す前に、もう一度深呼吸。よし、落ち着いた。射撃武器は体に悪い。


「ご苦労様、弾薬の補給に戻ってくれ」


 気持ちを抑えて装甲車まで後退。補給とあわせて休憩タイムを取ることにする。

 ここからは装甲車の中でのティータイム。このVR内では原作再現として、ゲロ風味の合成食糧と、完全に無味無臭の蒸留水が味わえる。味がないのに味わえるとは如何に。ちなみに有料の消耗品。作中の登場人物の生活を追体験できる、優良な商品だ。

 ともかく、それを人に食わせるのも最低な楽しみだとSNSで見たことがある。楽しいかどうか、実際にやってみよう。車内に設置された四次元冷蔵庫からよく冷えた合成食糧のパックと、蒸留水の入った水筒を出して、全員に配る。一人が買うと、チームメイトには無料で配れるらしいのだ。「俺はこれを食べて強くなった」と言って配ると、皆ノリがいいのかマズイマズイと大騒ぎしながら食べてくれた。

 子供の小遣い程度の金額だが、出した甲斐があった。微笑みながら一人食べずに眺めていると。


「おい、どうして一人だけ食ってないんだ?」


 君のような勘のいいガキは以下略。目ざとく見つけたナメクジ君が、空になったパックを握りしめて俺を指さす。


「俺は一人で食べたからな」

「仲間外れはよくないよなぁ、リーダー?」

「そうだな。この味はみんなで楽しんでこそだ」


 リーダーが冷蔵庫からもう一個合成食料を取り出す。キャップを開けて、にじり寄ってくる。下がろうとすると、他三人が両腕と足をガッシリと掴んで逃げられない。チームだからってこんな時まで息ぴったりじゃなくてもいいんだぞ。


「いやぁ、やめてくれよリーダー。俺はそっちのケはないんだ」

「俺たちのためにわざわざ買ってくれたんだろ? それならお礼をしなきゃなぁ」

「貴様は包囲されている。抵抗は無意味だ。大人しく投降しなさい」


 満面の笑顔。もうこうなってはどうしようもないな、観念しよう。下手に抵抗して顔面ゲロもどきまみれにされても嫌だし。


 口にねじ込まれる生臭い物体。胃酸に似た酸味と刺激臭があり、食感はドロドロした液体の中にわずかな個体が残っており、胃からせりあがってきた消化しかけの食物を彷彿とさせる。

 ストレートに表現するなら、よく冷えたゲロだ。人肌に温められていたら完全なるゲロだろう。それ以外に表現のしようがない。味覚と触覚の疑似再現機能まで活用してこんなところまで原作再現しなくていいから。変態企業(誉め言葉)め。


「まっず」

「ママの味が恋しくなったならお家に帰えりな、坊や!」

「うーん。親の手料理なんてしばらく食ってないな」

「俺のお袋は風呂上りに顔面パックして妖怪になってる」

「リアルにいるんだな、そんな女性」

「そりゃあ居るさ。居なけりゃ商品が世に出てないだろ」

「それもそうか」


 そんな感じで、しばらく楽しく談笑して一休み。五分か十分か、そのくらいで切り上げて、それぞれの愛機に乗り込む。お次は第三フロア。前回の出撃でボス部屋の鍵は手に入れたから、倉庫には寄らずにボス部屋直行の予定らしいが。さて装備はどうするかな。


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