46.遊園地グループデート(4) ☆
「……なあ。神崎」
彼がぼそりと呟いた。
「お前……誰か好きな男、いるの」
「好きな……人……?」
「そう。好きな奴」
彼はまっすぐ前を向いていて、瞳を合わせなかった。
好きな……人……。
私は──────
「いるわ。好きな人」
ゆっくりと私は答えていた。
そう。
私の好きな人は……。
「そっか」
そう言ったきり、彼は何も言わなかった。
吉原君。
どういう意味で、そんなこと私に聞いたの……?
そんな問いかけを胸に秘めたまま、観覧車は地上へと無事に到着した。
「ほら。神崎、手」
彼は、降りる時、私をサポートする手を差し伸べてくれた。
「あ、ありがと……」
恥ずかしくて、俯く。
その時。
アッ……!と、私は声を上げそうになった。
彼が私の手を強引に引っ張り、私を引き寄せたのだ。
顔が近づく。
私は、背の高い彼の顔を間近にしていた。
一瞬の抱擁──────
私の耳元で、
「頑張れよ」
と、一言囁くと、彼はくるりと私に背を向けて徳郎達の方へ歩いてゆく。
吉原君──────
彼のそんな後ろ姿を私は見つめていた。
***
「ジューンちゃん! 観覧車の中で「らぶらぶ」だったじゃない」
と、また舞が悪戯っぽく笑っていた。
「舞……。あんたってデバガメ?」
「何? なんか純、またあったの?」
と、ゆうが顔を出す。
「聞いて! 純ちゃん、観覧車の中でね……」
「ちょっと、舞!」
「まあまあ。もういいじゃない。これも純の青春よ」
と、お杏がまた場を取りなした。
「見てみて! 西の空」
舞が可愛い声を上げた。
その舞の声で気がつく。
山の端は真っ赤に彩られ、それは刻一刻、瑠璃色のグラデーションへ、そして、薄闇へと変化していく。
暫しの華麗なトワイライト・タイム。
その一時の猶予も待たない様はまるで、十七歳の青春そのものだと、私は思った。
そう。
私の好きな人は……。
「何、黄昏てんの? 純」
ふと私の顔を覗き込んだお杏に、私は、
「女心ってまるでこの夕闇みたいよね」
と、呟いた。
この「遊園地グリープデート」編のスピンオフ作品
・「そしてマフラーはひとすじの糸となる」ゆう視点
・「失恋トレイン」吉原君視点
を、後日、短編として投稿する予定です。
そちらも併せてよろしくお願いします。




