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13.思惑の放課後(2)

 最初の遠慮がちな態度はどこへやら、好奇心丸出しで喋る舞と、今更ながらの話の内容にウンザリして、突き放すようにそう言ったら、


「純ちゃん、ねえ。……怒った?」


 と、不安げに舞が上目遣いで尋ねてくる。


「オチコンダ」

「ごめん、ごめんね!」

 本気になって謝る舞。


 そんな舞を見ているとまるで自分が極悪人のような気になってくるから、慌てて言葉をつなぐ。

 可愛い舞を苛めたりしてはいけないノダ。


「と、ところでさ。今日、ゆう、どうかしたの? 昼休みえらく機嫌悪かったみたいじゃないの」

「う、ん。ゆうちゃんも、ちょっと……。あったらしいのよねえ」

「あった、て一昨日?でも、今朝はなんともなかったじゃない。それにゆう、二次会行かずに帰ったんでしょ?」

「その帰る時がモンダイなのよ」

「何があったの、一体?」


 話題を変えるだけのつもりだったのが、いつの間にか好奇心にすり替わっている。

 私もそうそう人のことばかり非難できない、てわけか。


「それがね。ゆうちゃん、あの後、山口君と一緒に帰ったんだって。山口君が「送る」って言ってきかなかったらしいのよ。それで……その帰る途中、ゆうちゃんの身がちょっと、危なかったとかで……」

「なによ、それ?!」

「あ、結果的には何もなかったんだって。でも、すごく嫌だったって、ゆうちゃんが……。それで、その時、彼。ゆうちゃんに「つきあってくれ」て言ったとか」


 なんてヤツ!

 打ち上げの最中は私にコナかけときながらあの男、一体どういうつもりなの?!


「で、ゆうちゃん、そんなのはシラフの時に言って、て言ってその場を逃れたらしいのね。そしたら彼、今日の昼休み、またゆうちゃんに「つきあってくれ」て、言って」

「それで?」

「もちろん、ゆうちゃん、断ったわよ。そしたらね。山口君、いつ抜き取ったのか知らないけど、例の写真……」

「写真?……ああ。あれね」


 その写真とは多分、「済陵祭」の写真。

 写真部の沢木さわき君が一人で撮りまくり、自分で現像して今日早々に持ってきて、少なからず「反響」を呼んだ問題のヤツ。

 何せ彼は写真部だけに良く撮れている。

 それがクラス写真だけだったら、彼は「名カメラマン」として皆に見直されたこと間違いなしだったのに、いかんせん、打ち上げの時の写真が殊の外、女子の不評を買ってしまった。 

 アルバムのページを捲るほどに思わず赤面してしまう写真が増えていく。

 女子は皆、自分の醜態は棚に上げ、「全く性格が知れるわよね、あんな写真撮るなんて!」「いつもそういうのばっか撮ってるんじゃないの?やーね」などと言いたい放題。

 お陰で彼は当分の間、ヒンシュク男として女子の冷ややかな視線に堪えねばならない羽目に陥った、問題の写真のことだろう。


「アレがどうかしたの?」

「うん……。山口君、いつ抜き取ったのかしらないけど、実はあの中でゆうちゃんと二人で映っている写真。ゆうちゃんの目の前で破いちゃって」

「破いた?!」

「そう。モチ、ゆうちゃんだってあんな写真、見たくもないだろうけど、山口君の態度にカチンときたらしくって」

「そりゃ、そうでしょ! 恥知らずな奴!」


 明らかに機嫌を悪くした私を見て、舞が、

「純ちゃんまでそんなコワイ顔しないで」

 と、困った風に言う。


 それでも、私の腹立ちがちょっとでは収まらないと感じたのか、

「まあ、純ちゃんの気持ちもわかるけど……」

 と、舞は溜息をついた。


「純ちゃんも山口君に言われたんでしょ。つきあってくれのどーのって」

「何で知ってるの?!」


 私はそのことは、お杏にすら話してないのに!


「山口君ね、ゆうちゃんに。「神崎さんにも色々言ったけど、あの時は酔ってたから。君には本気」て、言ったんですって」

「何ですって?!」

 よくもまあ、シャアシャアと!

 舌の根も乾かぬ内に。


「馬鹿にしてる!!」


 腹立ちは怒りへと形を変えて、いったん爆発した感情はおいそれとは元には戻らない。


 あいつ、絶対許さないからっ!! 


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