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マサキカズラのクリスマス  作者: 大野ヨシオ
12/12

12、メリークリスマス!

 クリスマスイブの日。

 正木葛の足取りは軽かった。


 魔族の縁結びの話題で、世間は持ちきりだった。ラティファと行動を共にしていた葛も、しばらくはマスコミから追われる事となった。

 騒ぎもひと段落し、今日は美咲からクリスマスパーティーに誘われた。

 13係の3人と、ラティファの思い出話しでイブをすごそうと、波多野が企画したのだ。


 夜景が鮮やかな、都心ホテル最上階。

 レストランの個室には、イブニングドレスの美咲が待っていた。


「一週間ぶり葛君!元気だった?」


「お陰様で。美咲さんも、毎日元気そうで何よりです」


 バチカンが、報復に現れないとも限らない。毎日の様に、葛は電話連絡を美咲にしていた。

 それでも、美咲の笑顔を見れて、葛は心底ホッとした。あの事件以来、渦中の人物だった13係の3人と葛は、気の休まる暇がなかったからだ。


 スーツ姿で、薄化粧の美咲しか見たことのない葛は、メイクを決めた美女に見惚れる。


「波多野さんと加藤さんは、遅れるって連絡が来たわ。先に始めましょう」


「ハイ。あの美咲さん、とても綺麗です」


「そうよね。凄く素敵な夜景ね」


 美咲の事を褒めたんだけど、と思いながら、葛はシャンパングラスを手に持つ。


「メリークリスマス、美咲さん」


「葛君。メリークリスマス!」


 乾杯した2人は、クリスマスディナーで舌鼓を打つ。女性と2人きりの聖夜。

 葛にとって、人生初体験のクリスマスイブは、魔界少女からの贈り物かもしれない。


(これがリア充って言うのかな?)


 2人の話題は尽きず、時間は過ぎて行った。


 ラティファを追っていた、バチカンの3人は、海外から派遣された宣教師だった。建造物侵入、放火、窃盗の容疑で逮捕されたが、黙秘しているそうだ。

 魔界少女への、誘拐、殺人未遂容疑もあると葛は思うが、魔界住人の被害は、法律では裁けないと美咲は言う。


 あの男たちが、美咲の父の死に関係しているのかは解らない。ただ、事件の真相は明らかにされる日も近い。


 結局、波多野と加藤は現れなかった。二人だけのクリスマスパーティーは、楽しいひと時となった。


 話題の絶えない美咲。笑い合う二人は、傍から見れば、恋人同士に見えるだろう。


 美咲を駅まで送る帰り道。

 肩を並べて歩く2人の前から、走ってくる少女が見える。


「あれは?」


「まさか!」


 民族衣装のような服装、風になびくストロベリーブロンドの長い髪、グリーンの瞳の少女が、葛と美咲へ向かって来る。


「ラティファ!」


「ラティファちゃん!」


 2人は声を揃えて、魔界少女に声をかける。ラティファの顔は、少し緊張しているように見える。


「葛!美咲さんもいる。ちょうど良かった。大変なの!」


「ラティファ、あのまま魔界へ帰っちゃうから、俺がどれほど…」


「ラティファちゃん。また会えて嬉しいわよ。一体どうしたの?」


 葛の言葉は、美咲に遮られる。魔界少女は肩で息をしていた。


「とにかく大変なの!2人とも一緒に来て!」


 ラティファは魔術を発動させ、3人の周囲に空気の塊が発生する。


「ちょっとラティファ!?」


「どこへ行くの?ラティファちゃん!」


「詳しいことは後!行くわよ!」


 ラティファの魔法で、3人はその場から消える。道行く人々は、忽然と姿を消したラティファ達を見て、特に驚いた様子もない。


「ああ、魔法だろう?この前テレビで見たよ」


 クリスマスイブの街並みは、元の静けさを取り戻した。


 マサキカズラのクリスマス。 end


ありがとうございました。

感想などありましたら、頂戴できると嬉しいです。

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