女性だけの会社8
男性にとって不快な内容が含まれている可能性があります。男性の方がこの小説を閲覧されて、気分を害されても、当方は一切責任を負いかねます。
本作品は純粋な空想科学小説です。フィクションであり、実在する人物団体名とは一切関係ありません。また本作品に描かれている科学技術のほとんどがフィクションであり、現実に可能になっているものではありません。将来可能になるかどうかは現在の時点では言及できるものではありませんが、いくつかは紹介、実用化してほしいと作者は切に願っております。
会社も二カ月を過ぎるころから各々のプロジェクトが形を成し、奈津子の特許料以外の収入も増えてきた。それに並行して、仲間が仲間を呼び、友人知人、同好の士、が集まり、会社は規模を拡大していく。拡大していくことにより、ますます異業種の交流が増え、業務が効率化し、多様化していく。
先端技術研究所には女性の姿がほとんど見られなくなった。事務や実験助手の中に数人、残ったものがいたが、それだけだった。新たに人材を募集しても、女性の応募はほとんどなかった。赤城美也子たちの行動がネットを通じて広く知られたせいでもあったが、別に彼女たちが女性研究者に研究所に入るなといったわけではない。ただ、赤城達は知り合いの女性が会社のメンバーになることを快く受け入れたし、仲のいい友人知人が会社に入りたがるのは、自然の流れだ。特に数カ月が過ぎて、業績が目に見えて上がってくると、多くの女性が知り合いのつてを頼って会社に入りたがった。
「女っ気がなくて花がないね」
誰ともなく愚痴が出る。別に研究者が激減したわけではないので、ラウンジには相変わらず男性たちがコーヒーを飲みに来るし、いつもざわざわと人がいる。ただそのすべてが男性なのだ。
「昔っから、研究所ってところは、男くさいもんさ」
高齢の研究者が言う。
「これが昔ながらの研究所の空気さ。ここ少しばかり女が増えていただけで、これがまっとうさ」
「しかしなあ、お茶くみとか雑用とか、女がいないとごみごみするのも大変だな。特に若い女がいないのは、つまらんな」
愚痴を一番こぼしているのは、今回の事態を引き起こしたといってもいい所長の本橋だ。世界的に有名な研究者であり、表向きは温厚で紳士的な所長は、女性研究者がいなくなった今、ことあるごとに愚痴を言い、八つ当たりのように若手の研究者を怒鳴り、私的な雑用を押し付けて傍若無人ぶりを発揮している。
「女に研究なんてできるわけないってことだ」
本橋はにやけている腰ぎんちゃくの中川に同意を求めた。
「そうですね」
「お前の女も一緒に逃げ出したってわけだが、女なんて信用するな」
「いいえ、所長、あいつは別に逃げ出したわけじゃないんですよ」
「どういうことだ」
「あいつには赤城達を見張ってもらっているだけですよ」
「おい、お前、自分の彼女にそんなスパイまがいのまねさせていいのかよ」
同僚研究者の出川が口を出す。
「俺のためにやってくれって言ったら、ホイホイ引き受けたさ」
「そんなに惚れてくれた彼女に申し訳ないじゃないか」
「俺に惚れてるからな」
男前を自慢している中川に出川はむっとした。
「俺はどうでもいいな。あんな女。でも所長が赤城のことを気にしていたし、ちょいと利用しただけさ」
「美人じゃねえか」
「美人だよ。でも頭が良すぎる。俺よりいいんじゃないかって気になるときがある。そんな女と付き合ってみろ。ぞっとするぜ」
すでに中川たちの前に所長はいない。それほど立ち話ができるほど、この研究所所長は暇ではない。
「あんな奴、時には抜けてくれた方が気が楽だ。美人で抜けてて、スタイルがいいってくらいがいいんだがな」
「アダルトビデオの受け売りか」
「あそこまで馬鹿だと困るさ。話もできない。でもできすぎる女はこっちが疲れるだけで、面白くもなんともない。まあ、できる女だからこそ、赤城達の会社に入れたし、仲間扱いしてもらっているらしい。そしてあいつらの情報をこっちに教えてくれるんだ」
出川は中川のすっきりとしたしたり顔にむかついた。
「せいぜい相手の前ではいい恋人しろよ」
「ああ、任せとけ。甘い顔して優しくしてやるさ。結構ストレスになるけど、その分はほかの女で埋め合わせすればいい」
出川は、中川がうらやましいのか、悔しいのか、相手の女がかわいそうなのか、分類できそうにない感情がぐるぐると渦巻いた。同僚ではあっても、この色男に好感だけは持てなかった。
稚拙な文章ですが閲覧していただきありがとうございます。なるたけ時間をおかずに続きを掲載したいと思います。次の掲載をぜひ閲覧のほど、お願い申し上げます。