女性だけの会社3
男性にとって不快な内容が含まれている可能性があります。男性の方がこの小説を閲覧されて、気分を害されても、当方は一切責任を負いかねます。
本作品は純粋な空想科学小説です。フィクションであり、実在する人物団体名とは一切関係ありません。また本作品に描かれている科学技術のほとんどがフィクションであり、現実に可能になっているものではありません。将来可能になるかどうかは現在の時点では言及できるものではありませんが、いくつかは紹介、実用化してほしいと作者は切に願っております。
父は兄を溺愛していた。完全に蚊帳の外にだった奈津子とはえらい違いだ。
父は若いころかなり成績が良かったらしい。しかし父の父、奈津子には祖父に進学を反対され、高校しか出ていない。父曰く、高校始まって以来の神童で、教師に進学を強く勧められたそうだが、祖父がその当時、事業に失敗し、そのため、経済的な理由で進学をあきらめた。そして祖父の事業の手伝いをしていたのだが、そのまま事業は行き詰まり、多額の借金を抱え、一家は夜逃げという形で借金を清算した。その後、祖父は他界し、父はしがない工場に勤めて母をめとり、一家をなしている。という話だが、どこまでが本当なのかわからない。確かに祖父が借金を抱えて倒産したのは事実だが、父がそれほど成績が良かったかというのは認めがたい。たまに話す父との会話で、さほど知的な感覚を得ることができないからだ。学究的な話は通じないし、だからと言って経済、国際政治、社会科学的な話題でも話が通じない。文学、歴史、芸術などもあまりに無知なのだ。奈津子はどこかで父親を軽蔑している。
大概の親にとって、子供に進学して研究職やエリートコースを歩ませたいというのはごく当たり前の夢だが、その対象は奈津子ではなく、唯一、兄だった。
兄は生来勉強が苦手で、夢想家だった。父の希望とは常に相反し、父は兄に期待をかけている反面、溺愛もしているので、むげに勉強させることはしなかったが、悪い成績をとってくると、ひどく落胆した。その落胆する姿に、兄は反発し、高校に上がるころには口も利かなくなり、引きこもるようになった。そんな兄も作文だけは好きだった。小中学と国語でそこそこの成績をとっていたことがあり、一度だけだが、中学の時に県の作文コンクールで賞を取ったことがある。それだけが兄の自慢だった。
引きこもりになった最初のころは、その文才を生かすのだと言って、小説のまねごとをして、ライトノベルの応募をしたこともあったが、一次選考にも引っかからなかったことで、世を恨み、世間を馬鹿にして引きこもりが加速した。
兄が決定的に引きこもったのは奈津子が兄の学年に追いついた時だ。奈津子が小学校に入ったときに、飛び級が制度化された。それで奈津子は小学校を四年で卒業し、中学を二年、高校でも一回飛び級した。計四年分飛び級したことに加え、兄は高校で留年するに至って同じ学年に追いついた。それが兄の心をひどく傷つけた。もちろん、奈津子も兄に気を使って、同じ学校に通うことはなかったし、飛び級したことも口に出すこともない。高校の教科書を兄の前で出すこともなかったが、それは自然と分かってくる。むしろ隠していることで兄のプライドは粉々になっていた。
奈津子にとって針の筵のような高校生活が終わった後、大学進学に際して家を出たのは当然の結果だった。兄にとっても、そして奈津子にとってもそれしか選択ができない。その間、母はおろおろするばかりで、奈津子を守るとか、その力になるといったことが一度もなかった。家のことをすべて父が決定していたので、口をはさむことがなかったといえばいえるのだけど、奈津子と二人の時でも、奈津子に力を貸すとか、味方になるとかはない。奈津子が家を出たときに心底、ほっとした母の顔は今でもなぞだ。
父は隠すことなく兄を溺愛していた。でも母は日ごろ暴力を受けたり、世話に明け暮れたりしている割に、兄を嫌がることもなく、いつも心配し、気を配り、その行く末を心に病んでいる。奈津子にはそんな気配りをすることはない。むしろ、才気煥発、才色兼備で、目を見張る成績を取り続ける娘に嫌悪感すら示す。女はそんなに賢くちゃ、かわいくないわよ、と前時代的な物言いをして、奈津子の心を萎えさせる。
稚拙な文章ですが閲覧していただきありがとうございます。なるたけ時間をおかずに続きを掲載したいと思います。次の掲載をぜひ閲覧のほど、お願い申し上げます。