プロローグ
アヴラムにとって最大の敵が生まれ、成長し、そして……
元勇者のユウキも絡ませたいですが、基本的にはアルファポリスで連載している話のスピンオフです。
「おい、アイツは一体何なんだ!」
魔王城に攻めてきた勇者の声が響き渡る。
「分かりません。……ですがこれまでに見たことの無い魔物であることは間違いありません!」
他のパーティーメンバーも考えて答えを出すが、明確なものは出てこない。
「大聖剣の攻撃が全く通用しないなんて、そんなバカな話があるか!」
敗走していた勇者一向だが、勇者が己の力を過信し再度、攻撃体制に入る。
「うおぉぉぉぉぉ!」
勇者が攻撃を始めたので、他のパーティーメンバーも逃げるのを止めて攻撃に転じるのだが、魔法はあっさり交わされ勇者の剣擊も届くことがない。
逆に剣を振り下ろされて万事休すな状況だったが、重装備のタンクが間に入り事なきを得る。
そしてボロボロになった勇者一向に声が掛けられる。
「まだ戦いますか? 貴方達の実力では何度挑んでこようとも同じ結果しか得られませんよ。今ならまだ見逃してあげますがどうしますか?」
もはや勇者一向は脅威に思われず、見逃しても全く問題無いと判断されたのだ。
そもそも勇者であると認識されているかどうかも怪しい。
「舐めやがって……」
勇者は逃げることに納得出来ない様子だが、勇者一向に付いてきている神官が説得する。
「勇者様、今は辛酸をなめることになろうとも体勢を整えれば、必ず倒せる可能性があります。されどそれは命があってこそです」
「だが……分かった。今は引くが、次は必ず奴を殺す!」
こうしてボロボロになりながらも勇者一向は逃げ帰ることになった。
勇者が魔王ですらない、謎の魔物に破れる。
このことが広まってしまうと聖騎士団、はたまたそれを従える教会の威信に関わるということで、この事実は隠蔽されることとなった。
しかし不安は伝播し、何処からともなくその事実は市井で噂となる。
そしてこの日に勇者一向が出会った魔物は、人類の新たなる脅威として認識されることとなった。
■■■
人型で謎の仮面を被った魔物でその正体は不明。
種族も不明であり、魔王が生み出した新たなる魔物と噂される。
『人類最大の脅威だ!』
『最悪の魔王の再来だ!』
『勇者が倒せない最強の魔物なんて……』
さまざまなことが噂されるが、その実は……。
ここで語られることは人類の最大の敵となる魔物が誕生し、そして勇者と戦い、新たな歴史を生み出す物語。