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第1章 四話 『苦い再開』

少し雑になりましたすみません

 

「キリがない」


 ギルドで状況確認をするのは失敗だったと後悔したのはそう遅くはなかった。

 もう何人目に該当するのか分からないが、話し合いの邪魔をしてくる輩が多くてならない。


 ――何故邪魔が入るかというとエミルをナンパする冒険者が後を絶たないからだ。

 確かにエミルは美人だから冒険者共の気持ちは分かるし、見る目もあると思うし、気も合いそうだし、あとで是非その話で盛り上がってみたいが今だけは邪魔をしないでほしい。


 エミルがナンパされる度に俺が追い返すのだがこのままでは埒が明かない。

 ギルドを出ようかとも考えたが、せっかく来たのだからそれはちょっと勿体無い気もする。


「あ、そうだ」





「ねえシュウ、少し近くない?」


「いや気のせいだよ、では先ほどの続きと行こうか」


 さっきはテーブルで向かい合っていたが、今度は腕が当たるくらいの距離で隣に座る事にした。

 こうすればエミルと俺は周りからはカップルかなんかに見えるだろう。

 でもやばい自分でやっといてなんだがめちゃくちゃ恥ずかしい、それに周りからの殺気が凄い。


「では気になる点をいくつかおさらいしよう……うん」


「金貨ね」


 よほど悔しかったのか定かではないが即答するエミルさん。


「金貨はすべての国が共通だから、どこでも使えるはずなのに使えないってどういうことよ」


 エミルはそう言って頬を膨らませて腕を組む。


「分かった、分かった、そうご立腹せずに。あと他はソニック王国と全7カ国という事についてだな」


「ええ、そんな国は存在しないはずよ。あと国の数は全40カ国よ」


 どういう事だろうか。

 いきなり商店街に来たかと思えば、金貨は使えなく、全40カ国のはずが全7カ国。そして本来、存在しないはずの国がある。


 何か引っかかって仕方ないのだがあとちょっとのとこまで出ているのに思い浮かばない。


「あと、どうやってナックルに帰るかが問題よね。 お金は何故か使えないから竜車に乗って帰るのは無理そう」


「竜車は是非乗ってみたかったのにな、いやでもお金をギルドで稼げばいつか帰れるんじゃないか?」


「そうかもしれないけど私近いうちにナックルに帰らなきゃいけな――」


『ギルド閉店のお時間です。冒険者の皆様は速やかにお帰り下さい〜』


 エミルの言葉を遮って鳴るギルドのアナウンスが夜を伝えた。

 窓を見るともうあたり一面暗闇に満ちている。異世界にも夜があり昼もあるみたいだ。


 一体どうやって照らしてどうやって夜にしてるかは疑問だが、そう思うと俺の元いた世界は良く出来ていたものだ。


「おっともう夜か、この話は今はお預けにしよう。そろそろ帰るか……どこに帰るんだ?」


 異世界の予習してた俺とした事が、すっかり頭から抜けていた。


「そういえば私もすっかりその事を忘れていたわ。どうする? お金使えないから宿には泊まる事は出来ないわよ」


 全く、当たり前にある物がないとこんなにも苦労するのだとつくづく思わされる。

 ネトモと予習したこういう時の対処法としては、これはもうアレしかないよな。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「ちょっとシュウどこに行く気?」


「野宿するからちょうどいい場所探してんの。お! あの洞窟なんて丁度よくないか? 雨をしのげるし風も防げるぞ」


 さすが異世界はちゃんと用意されてるものだと感心すると同時にその洞窟は不気味さを物語っていた。

  ギルドを出ると王都から離れ、近くに森があったため散策していると丁度入り口が半円の薄暗い洞窟を発見したのだった。

 まとわりつく草木を手で払いながら道無き道を進んだ甲斐があったものだ。


「では早速、お邪魔しまーす。結構広いんだな」


  早速中に入って分かったことがあるんだが、焚き火の跡や石を削ったテーブルと椅子があることから、何者かが住んでいたことが伺える。

 しかし憧れといってもいい緊張が奮い立たせ、好奇心で押し潰されてしまいそうだった。

 そーと、というあり得ない効果音と共に、抜け足・差し足・忍び足。少し泥棒みたいで浮いた気分になる。


「誰かいるのかしら、誰かいませんかー!」


 エミルの声が洞窟の岩や壁に衝突してこだまが返ってきた。

 いや誰もいない方がいいって、もし凶暴な生き物の巣だったらどうするんだよ。

 俺が焦りながらもエミルのこだまがおさまった後は何も起きない。


「ふ〜よかった〜誰もいないみたいだな」


 あれでもこれって……フラグじゃね。

 そして何よりフラグだと思った瞬間が一番フラグだという事を忘れてはいけない。


「こら、何者だ!」


 ほらーやっぱ来たよ。

 声がした方向を振り向くと洞窟の入り口を塞ぐように立っていたのは二名。


 1人は白髪のロングで白いモフモフのボアコートを着てる150cmくらいの身長。

 日本人とさほど変わらない黒の目をした推定13歳くらいの少女だ。

 そして、エミルに負けず劣らず間違いなく美人で、エミルが美しい部類に入るのならこの子は可愛い部類に入るであろう。


 もう1人は黒髪のロングで黒いモフモフのボアコートを着ている、こちらも同じく身長150cmくらいの、推定13歳くらいの少女。

 こちらも負けず劣らずのかなりの美人なのだが、黒い垂れ目なのがまたいいコンビネーション。

 白髪と姉妹なのは対頂角のようにそっくりなのですぐに分かる。


 両者共にロリコンにさせるかのような破壊力があった。


 二人の表情を見る限り、今叫んだのは白髪の方なのはすぐに分かった。


「待った待った、金がないから、こんな訳ありまくり物件に住んでるかどうかは知らないが、俺らは別に怪しいものじゃない」


「全くシュウったらそんな失礼な事を言っちゃダメよ。ごめんね、別に無理にとは言わないけど少しだけここに泊めて欲しいだけなの」


「あ、そうなんですね、なんだ良かった〜悪い人ではないのですね、どうぞどうぞ」


「ちょっと、クロ姉ちゃん! そんな簡単に信じちゃダメだよ!」


  俺も妹の方と同じ感想だよ。そう簡単に信じてはダメですよお姉さん。

 いや本当に怪しいものではないから都合がいいんだけどさ。


「こいつらはきっと悪者だよ! クロ姉ちゃんは下がってて!」


「え、そうなんですか? 私には悪い人達には見えないのですが」


「さすがお姉さん! お目が高い! おい髪が白い方、お姉さんを見習いなさい」


「う、うるさい! 問答無用!」


 説得失敗!――その後は雰囲気が変わった。


 白髪の両手がいきなり炎で燃え上がり、洞窟内に明かりを差したと思うと、まるで白髪が恒星のように光り出した。


 ――魔法だ


 本当にそんな概念が存在したのかという感動と焦りの同時攻撃。

 白髪が体勢を低くして、走るというより一足でジャンプして飛び、予想だにしない急展開に反応が遅れて尻餅をついしまう。

 見ただけで分かる、あんなのをまともに喰らったらひとたまりも無い。

 避けなきゃ火傷ではすまないかもしれない。


「でも無理! 普通に避けれないわ!」


 残り3メートル、2メートル、1メートル――


 反射的に目をギュっと瞑るが、炎の光が貫通してその恐怖を伝えてくる。

 次第にその光は強くなっていき無意識的に両腕で体を守る体勢に入ると、

 直後、身体を撫でるかのように熱風が身体をゆっくり温めた。


「!?……何が起きたんだ?」


 発生していた白煙を気にするとこなく、目を凝らしてよく見てみると立っていたのは猫耳超絶美人。

 両手を前に突き出して、水を具現化した盾で見事に白髪の拳を止めていた。


 俺が驚愕するのは言うまでもないが、白髪も想定外だったようで、これには驚きを隠せずにいた。


「エミル……なんだよな? そんなに強かったの?」


「ふぅ……相性が良かっただけよ。それで妹さん、お願い信じて、私達本当に悪者じゃないの。せめて、話だけでも聞いてくれないかしら?」


 俺のお願いなんかよりもよっぽど効果がありそうな、詐欺級のお願いであった。

 驚きでしばらく硬直していた白髪が我を取り戻したかのように


「え! あ、はい! う、う〜んと。まぁ、話だけなら聞いてあげましょう、かね? 特別に、ですけど?」


「ご迷惑かけてすみません、妹を……シロの事を許してやってください」


「ちょっ、クロ姉ちゃん! 何勝手に謝ってるの!」


「シロ、いきなり攻撃を仕掛ける貴方が悪いんですよ」

 

 どうやら白髪がシロで黒髪がクロという名前のようだ、分かりやすくて助かる。

 クロが姉でシロが妹か、性格的にも腑に落ちる部分がある。


「むー! とにかくまだ私は信用してないんで、クロ姉ちゃんに免じて、今から尋問とボディーチェックして1個でも問題がなければ、ギリギリセーフで特別に警戒だけにしといてあげます」


 面倒い。


 妹の方は何でここまで信用したがらないのだろうか。

 まぁいいか、これもまた異世界イベントの1つだろう。

 そうだ、まだ1日目だぞ、寝るとこを確保すれば十分ではないか。異世界人でも分からない現象に俺は耐えているのだぞ。

 誇らしげに吹聴していると白髪が言葉で語った。


「1人ずつ尋問するから最初はそこの男。来てください」


 早速俺を呼んだシロが洞窟のさらに奥の方に誘導する様、乱暴に手招きしている。


「へいへい」


 シロが手の炎を明かりがわりにしながら、暗い洞窟の奥へ奥へと行くと、木のテーブルと3つの椅子があった。


「あれ? 洞窟の手前にもテーブルと椅子なかったか?」


「これは私達の思い出の品なんです。それはいいからそこに座って下さい」


 そう言ってシロが差したのは木の椅子ではなく、そこら辺にあるような岩だった。

 これからまるで警察に捕まった気分を味わされる事になる。


「まず1つ目の質問をします、年齢と出身地と名前は何です?」


「年は17で出身地は、にほ……ストライス王国で、名前はシュウだ」


「今、出身地何か言いかけましたよね⁉︎ それにストライス王国って何⁉︎」


「ストライス王国はストライス王国だけど、何か違うの?」


「そんな国は存在しません! やはりあなた怪しい!」


 ――おい嘘だろ、ストライス王国は存在しないのかよ! おいエミルどういう事だよ!

 いや、あの老犬人間もストライス王国だって言ってたよな。

 本当どういう事? みんな俺をからかっているのか?


「待て待てその炎を抑えろ、落ち着けってシロ」


 いつの間にかシロは手を再び炎で包みいつでも俺を殴れる様にしている。

 まずいなどうやってごまかそうか、もちろんこんなのネトモとの予習の範囲外だ。ろ


「悪い、ストライス王国出身っていうのは嘘だ。実はな、俺は勉学をしてないんだよ。だから俺はあまり世間について詳しくないんだ」


「それで、出身地が分からないから適当にストライス王国とかなんとか言った。というわけですか?」


「そうそうそれだ」


 やばい、思いつきの苦し紛れの言い訳だけど大丈夫であろうか。

 視線が凶器のように刺さり、何故か体が痛いような感じがする。

 しばらく静寂という拷問が俺を包み込み、生きがいを感じる程度の程よい緊張が走るなか、ようやくシロが口を開いた。


「むー分かりました……なんか勉学してないとか色々可哀想なので、それでいいことにしといてあげます」


 そう言ったシロの両手の炎はみるみる抑まっていった。

 なんとか誤魔化せたけど同情されて心が痛い。

 そんな可哀想な人を見る目で見てくんなよ、と一言言いたいの我慢して、素直に難関を突破した事に一息つく。


「なぜこの洞窟に来たんです?」


 休む間も無く放たれる質問は俺の脳を刺激させた。


「えーと、俺ら金がないから寝床探しをした結果ここにたどり着いたという事だな」


 一割の真実と九割の嘘が人を騙すコツらしい。

 そんな無駄な知識を昔ネットで見た事があった


「あなた達2人ともお金ない!? む〜やっぱ怪しい」


 正確には片方は本当に無いんだけど、もう片方は使えないのだが。


「いやまぁな、俺らも色々あって金ないんだよ。その理由は俺もよく分から――グゥゥゥゥ」



 あ、腹鳴りやがった。



 ――いやちょっと待てよ、今はシロの機嫌損ねたら黒焦げになっちまうぞオイ

 恐る恐る前を見るとしばらく呆れた顔でこっちを見たシロだったが。

 一変、ため息をついて意外な事を言ってきた。


「はぁ――どうやらお金がないのは本当みたいなんですね。ちょっと待ってて下さい。今、特別に食べるもの持って来てあげますから」


「え! 食べさせてくれんの!? 噓!? マジで!お前が!?」


 うっそーー!!!食わせてくれんの!?


「あなた、私にどんなイメージをしてるんです!? 勘違いしないで下さい、空腹なままではちゃんと質問に答えられないと思ったまでです」


 いやそれでもありがたい。本当にありがたい。

 エミルがチョネコなら、シロにはツンツンデレという称号が相応しい。


 バレたら襲われそうな事を頭に浮かばせているとシロは洞窟の入り口の方向に進み、見えなくなった。






「……え?」


 ――気づけば、地面に倒れていた

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