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第1章 三話 『不可思議な渦の中』

今回もほんの少し雑です。申し訳ございません。

近いうちに修正したいと思います

 



「また放置プレイかよ! 俺にそんな趣味はねーっつんだよ! 畜生!」


 ーーもう嫌だ

 せっかく女の子と仲良くなる所で、カツアゲ野郎が水を差して来たかと思えば、今度は何だ。

 さっきまで住宅地の路地裏にいたのにいきなり商店街みたいな所に来たではないか。


 さっきの大柄な男はどこいったんだ?

 ここはどこだ?

 何が起きた?

 俺は何をした?

 どうしてこうなった?


 度重なる疑問に答えるものはなく、ただひたすら胸に疑問が詰まっていく。

 頭の整理が追いつかず、髪の毛をわしゃわしゃしていると、背後から優しい美声で、混乱の海から引きずり出された。



「ーーシュウってば聞いているの!」



「え!?」


 まさかと思い、声がする方に振り向くとなんとそこには猫耳超絶美人。

 天使だ! 女神だ! エミルだー!


「エミルー! よかった! また一人になると思ったー!」


 俺はエミルの肩を両手で掴み思い切り揺さぶった。


 案外、孤独というものは何より怖いのかもしれないと思い知らせた瞬間であった。

 出会って間もないが、こんな辺境の地で一人ぼっちはもう懲り懲りだからな。

 しかし本当に嬉しかったのだが、さっき俺が叫んだ声を聞かれたと思うと途端に恥ずかしくなり顔を下げる。


「さっきからずっと呼んでたんだけど……ようやく気づいてくれたのね。さっきの竜車の時といい私ってそんなに影薄いの? それに、ここはどこなのかしら? 少なくともナックルではなさそうね」


 少し不安そうに周りを見渡しながらそんな事を言ってきた。

 ナックル……確かさっきまでいた街の名前だった気がする。そして国の名前はストライスだったな。

 俺は異世界の知識が初心者なわけだからエミルが頼りという事なのだが、


「なぁエミル、お前もこの状況が理解出来てないのか?」


 俺の質問にエミルは気まずそうに、コクリと頷いた。

 少なくても異世界でさえ、この現象は通常はありえないという事が確定した。

 さすがに焦りが隠しきれていなかったのか、まるで俺の心を読んだかのようにエミルは話して来た。


「でもここでジタバタしても仕方ないわ。まずはお昼にして、それから情報収集をしましょう? 丁度ここは商店街みたいだしね」

 

 両手を合わせて温かい笑顔で励ましてくるエミル。自分だって混乱してるのに、俺を励ます辺り、エミルは本当に優しい子なんだと思う。

 男として何か捨てた気もするが、ここはエミルの優しさに甘えよう。


「さぁ行きましょうレッツゴー」


「イエッサー!」


 そうそうこれだよ、こういうのを求めてるんだ。

 何度か脱線はしているがこれはこれで悪くない。

 それに今はこんなに素晴らしいヒロインがいるんだし、十分勝ち組ではないか。


「ねぇシュウは何を食べたい? なんでもいいわよ?」


「そうだな〜じゃあ遠慮なく……あのピンクの果物がたった今俺の琴線に触れた」


 俺が異世界の初食べ物記念として選んだのは、疎らに置かれた、比較的大きいブドウをピンク色にしたものだった。


「あの果物屋においてあるやつね。私、初めて見るわ、あの果物。どんな味なのかしら」


「そうなのか? 実は俺も見たことないんだよ」


 もちろん日本には、ピンク色のブドウなんてないから当たり前なのだが。


「おじさん、このピンク色の果物を二つください」


「はいよ、毎度あり。五百コインだよ」


 エミルは財布の中からワンコインを出した。


 なんかワンコインって百円だけだと勘違いしそうになるけど、五百円もワンコインって事を最近になって知ったのだった。

 そんな他愛もない事を思っているとエミルはワンコインを渡し果物を受け取る。


 契約。


 買い物は、物と物を交換する一種の契約なのだ。

 なんとも違和感がある言い方だが、これはどこの世界でもやはりそういものらしい。

 エミルが果物を受け取り俺に渡そうとしたその時だった。


「なんだこりゃ? おい、お嬢ちゃん。 こんなものじゃ、それは売れないぞ?」


「 あ、すみません。お金足りませんでした?」


 さすがはチョネコ、そういう所もポイントが高い。後で少しからかってやろう。

 恩を仇で返すというなかなか最低な事をしようと企んでいると、どうやらそういうわけではなかったようだ。


「いや、そういう問題じゃなくてな。そもそもこれはなんだい?」


 そう言って果物屋のおじさんは困った顔をしたがら、エミルがさっき渡したワンコインを突き出す。


「え? 五百……コインですけど」


「うちじゃこんなの取り扱ってないよ、さぁ商品を返してくれ」


「え? ちょっと待ってください! 取り扱ってない? なぜですか。この金貨は全40カ国共通ですよ」


 エミルがそんな事を慌てながら言うと、俺にとっても意外な返事が返って来た。


「何言ってるんだい、この世界は全7カ国しかないんだよ? そんな事は常識ではないか」


 全7カ国だって?

 さっきの路地裏と今のやりとりでエミルは全20カ国と言っているのに対しこのおじさんは全7カ国と言っている。

 このおじさんも特にからかっているようには見えないし、ふざけているようにも見えない。

 かと言っていくらエミルがチョネコでも、この少ない国の数をこんな大げさに間違えるであろうか。


 全く、わけ分からん。


 だが、どのみちこれでは契約不成立だ。


「おいエミルそんな泣きそうになってないで、とりあえず金が使えないなら仕方ない、腹はペコペコだが情報収集を優先しよう。おいおっちゃん、変な質問をするけど、ここはどこなんすか?」


「べ、別に泣きそうになんてなんか……」


 目を潤わせながらそんな事を言われても説得力に欠けるが、なんか可哀想なのでそういうことにしといてあげよう。

 彼女だって早いとこ自分の街に帰りたいはずなのだ。俺だって最初は喜んだものの今更ながらのんびりしてはいられないと思えてきた。


「なんだい、あんたら随分変わり者だと思っていたら、旅人だったのか? ここはソニック王国中心に位置する土地。王都ダイナだ。ほら、丁度そこに城が見えるだろ」


 そう言って意外に親切に教えてくれたおじさんが指差した方向を見ると、確かに馬鹿でかい城が堂々と建っている。

 さすがファンタジーな世界なだけあってこういうテンプレ的な建物は揃っているようだ。


「オーケー、ここは王都なのね。で、最後に聞きたいんだけど」


「別に構わんが、それを聞いたら悪いが出て言ってくれよ。こちらも商売してる身なんでね」


「本当すいません。今度ここに来たら何か買おうと思うんで。それで俺の聞きたい事はーー」


 下半分がない木製のドアに、茶色と白の2種類のレンガの屋根と壁の二階建。

 中に入るといくつかテーブルが並んであり、受付には武器を装備した人達が並んでいれば、酒に酔いつぶれてる人もいた。

 昔考えた事があった冒険者ギルドの内装と一致していると思っていい。


「おお! ここが冒険者ギルドかー!」


 興奮が体からドバドバ溢れてきてやる気がさらに上昇してきた。

 よくネトモともし異世界に行ったら的な話で盛り上がっていたが、今更だがまさか本当に異世界に来るとは夢にも思わなかった。

 だがそのお陰でいろいろと予習済み。妄想で得た経験値が活かされる時が来た。


 この場所を教えてくれたあの果物屋のおじさんには、お金稼いだら本当に何か買おう。


「おいエミル、さっきから黙ってないであの空いてるテーブルで状況確認するぞ」


「う、うん。やけに張り切ってるわね」


 俺とエミルは4人用のテーブルに向かい合うように座り、さっそく状況確認を始める。

 まず1番の本題それはーー


「『何故いきなりここに来たか?』だ」


「やはりそこよね、全くどういう事なのかしら? そもそも全40カ国のうちソニック王国なんて国は存在しないわ」


 さらりと重要なことを言うエミルに対してツッコミを入れたい気持ちを抑えつつ話を脱線させないようにと心に誓うが、どうしても我慢ならなかったのでついに聞いてしまった。

 

「あのさ、一応念のため確認するけど本当に全20カ国なのか? なんかさっきのあのおじさんは全7カ国と言ってたが」


「ええ間違いないはずよ。ていうかあなたも知ってるでしょ?」


 やばい、今は話がややこしくなるから俺が異世界人とバラさない方がいい。ここはうまーく誤魔化すのが無難だ。


「あーそうだった、そうだったかも、な。まぁそんな事よりエミル。さっきここに来る直前は何をした? 因みに俺は、あのチンピラに手を合わせて目を瞑って頭下げてきれいに謝った。ごめん」


 俺の身に一体何があったのかは知らないが、先程の誤魔化しファインプレーとは程遠く随分と下手になったものだ。

 そしてその誤魔化す内容がカッコ悪いし最低なんだが、今はもうそんなこと気にしないようにする。


「あの時はシュウがギルドレスに殴られそうになったから危ないと思ってシュウを助けようと思って、突き飛ばそうとシュウに触れて、気付いたらここに来たのよ」


 どうやらあの時俺を助けるために突き飛ばそうしてくれていたらしい。

 エミルに助けてもらってばかりだ。知らない地で右も左も分からない俺に……


「あ」


 その時、脳裏に浮かんだのはエミルと出会ったきっかけだった。

 花を守るために俺を突き飛ばしてあの威力だから、もし今回突き飛ばされてたら色々と危なかったかもしれない。

 根拠はあるチョネコだからだ。

 まさかあの時、挟み撃ちにされていたとは気付かなかった。


「シュウどうしたの、 冷や汗かいて」


 そう言いながら、エミルが心配して顔を下から覗き込んで来た。


「のーぷろぶれむ」


 近い、近い、近い、もうこっちからいったろうか!?

 何てアホな事を考え笑ってしまう自分が面白くて、ちゃんと喜怒哀楽してるなと安全確認を行う。

 だがしかし俺も男だ、こんなの刺激が強過ぎる。そんな度胸も無いしやる気もない。


 今はそんな事より


「本当に大丈夫? ほら、顔が少し赤いじゃない」


 王道的展開をどうもありがとうございます。

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