とある騎士達のお仕事
プロローグですが、ひとつの物語としてまとめようと無理した結果、長くなってしまいました。それでも最後まで読んでいただければ幸いです。
構成力不足もあるかもしれません。それでもぜひ最後まで読んでいただきたいです。
-プロローグ-
その時、<トーリ・ラヴィンズ>は目の前の状況とは全く関係ない事を考えていた。今から10年前、トーリが8歳の頃。当時愛読していた物語の事を。
その物語に登場するヒーロー・・・騎士たちは武器を構え、剣を振るい、悪党たちをなぎ倒していた。モンスターやオーク、盗賊やダークエルフ、しまいには邪神とも闘い、力を合わせてそれらに打ち勝った。常に弱きものの味方で、人々の苦しむ声がすれば即座に駆けつけ、手を差し伸べる・・・。無論、これはあくまで空想のもので、読者の為に大幅に脚色された物だという事は幼心でも理解していた。現実の騎士たちがこのように強く、気高い心を持っているわけではないことも。それでもその物語は子供に・・・「一人の少年」に夢を持たせるには充分なものだった。
「・・・いっ。おいっ。ボーっとするなっ!」
後頭部を小突かれて、トーリは我に返った。彼は小突いた張本人、<ナナミ・ザーク>に目を向けた。
「ってーなぁ。ナナ。突く事はねーだろ」
「ポケーっと突っ立てるお前が悪い。目的地はもうすぐそこだぞ。気を引き締めろ気を!」
「・・・わかってるよ。ありがとな」
「うむ。わかってるならそれでいい」満足そうにナナミが答える。
現在、トーリとナナミ、それと<シノ・コビィ>、<ノースライ・ヘビートス>の4人は、<アレイヤ地方>の荒野を歩いていた。目的は「荒野に出現する野良モンスター討伐」の為。最近この付近には野生のモンスターが群れをつくり、通りがかる旅人や旅団、近くの村を襲っていた。死者まで出ており、村人は助けを求めた。そこに現れた救いの手が、トーリ、ナナミ、シノ、ノースライの4人の「騎士」であった。
「それにしても長いですわね。汗が止まらないわ」とシノがぼやく。無理もない。4人とも分厚いローブを着込んでいるのだから。
「・・・もうすぐだから、ぼやかないで・・・」ノースライがなだめる。
「馬のレンタルさえあればよかったものの・・・」と落胆するナナミ。
彼女らの会話を聞いてトーリが口を開く。
「まぁまぁ。討伐し終えたらなんか美味いもん食おうぜ。そうだなぁ・・・あ!甘いもん!スイーツとか
甘いの食べに行こう!オレのおごりだ!」
「ほう。それは良いな」「いいですねぇ甘いもの!良いアイデアですわトーリさん」「・・・ぐっじょぶ。トーくん」と3人が賛同した。甘いものは正義なのだ。
「よし。決まりだな!ならどこの店に・・・」
「・・・っ!!」
何かに気づいた4人がおしゃべりを止め、腰の剣に手を伸ばした。いつでも抜けるように。今、トーリたちの目の前には、今回の目的でる討伐対象のモンスターたちがいた。数は15,6匹ほど、大きさは2メートル足らずといった所か。蟻のような面構えをしたモンスターだった。そしてその群れの後ろに、紫色の煙のようなものを纏った一回り大きな蟻がいる。おそらくあの群れのボスであろう。
「なるほどな・・・<魔力>を纏ったモンスターか・・・しかも視認できるほど強力な」
「あれじゃあ村の自警団程度の戦力じゃ力不足なはずですわ」とナナミとシノが交互に語る
「・・・行くんでしょ・・・トーくん」とノースライに聞かれ、トーリが答える。
「・・・決まってんだろっ。っと言いたいとこだが、どうする?団長?」3人の視線が団長・・・ナナミに向けられ、それにナナミが意気揚々と答える。
「無論!ちょっと情報と違うからって怖気付く私たちじゃないだろ!!」それを聞いた他の3人が笑みを浮かべる。それと同時にナナミの身体から、
<炎>
が湧き出てきた。まるで炎が彼女の身体を守るかのように。それにあわせるかのようにシノの身体からも<風>が吹き荒れる。ノースライも砂塵と<土>の塊を周囲に纏う。最後にトーリもその身体に<水>を纏った。
これが彼らの力・・・<魔法>・・・だ。ナナミは炎、シノは風、ノースライは土、トーリは水、の属性を司る騎士なのだ。4人は右からシノ、トーリ、ナナミ、ノースライの順に横並びになりローブを脱ぎ捨てた。動きやすい格好になった4人は腰の鞘から剣を抜き、天に掲げ、そして叫んだ。
<・・・装着っっっ!!!>
その瞬間、4人の身体が眩い光に包まれた。光の中で一糸纏わぬ姿になり、その裸体がそれぞれの<力>に包み込まれた。モンスターたちがそれに気づいた頃には4人とも装着を終え、鎧を纏っていた。銀を主体にそれぞれの髪(トーリは青、ナナミは赤、シノは白、ノースライは黒)と同じ色をあしらえた鎧を。
「ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!」
4人を警戒したボスモンスターが吼え、それにつられ残りの雑魚モンスターも吼える。
「行くぞっ!!」
ナナミの一声の後、4人が一気にモンスターの群れへと駆けた。
「ノースライ!!足を掬え!!」ナナミの指示ににコクリと頷き、その場に留まったノースライが地面に剣を突き差す。鋭い眼差しで剣に魔力を込め、彼女の土の魔力が地面に流れ込む。途端、地面が激しく揺れモンスターの足元が棘状に隆起し出した。数匹のモンスターがその棘に貫かれ、奇声と体液を激しく撒き散らしながら絶命した。
その間に距離をつめた3人が三方向に分かれる。ナナミは刀剣に炎を纏わせ、自身を囲ったモンスターたちを、円を描くように斬り付けた。傷口が煙を上げる。高熱により止血されたモンスターの身体がゴトリと音を立て転がった。
シノは楔状に自身へ駆けてくモンスターを捕捉し、即座に脚と剣に風の魔力を込め、モンスターに噛み付かれる前に高く飛び上がった。ガチャリと牙を打ち鳴らしたモンスターたちはシノが自分たちの頭上にいることにまだ気づかない。シノは凝縮した風を纏った剣を横一文字に振った。すると風は三日月の形となりてモンスターたちを上から襲う。風の斬撃はモンスターたちの首から上を切り離し、体液を噴水のように吹かせた。
トーリは水を纏った剣を十字を描くように振るう。すると刃から水滴が撒かれ、それが目の前にいるモンスターたちに向かって突き進む。銃弾のように空を切る水の礫がモンスターたちに風穴を開ける。このわずかな間に雑魚モンスター全てが討伐され、残すはボスモンスターのみになった。今ボスモンスターに最も近いのはトーリとナナミであった。そして二人が我先にとモンスター目掛けて駆ける。
「「あいつを倒すのはオレ(私)だぁぁぁぁぁぁっ!!」」残りの二人が呆れ顔で見ている。
「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!」ボスが吼え、身体に纏った紫のオーラが、拳のような形となり二人に殴りかかって来た。しかしトーリは左腕に水の盾を、ナナミは炎の鎧を追加装甲として鎧に纏わせ、ボスのオーラを防いだ。かたや水の盾に受け流され、かたや炎の鎧に蒸発させられてしまい、あせったボスは自身の大きな左腕で相手をなぎ払おうとした。紙一重でその一撃を交わし、左右に展開した二人が剣に魔力を纏わせ、右半身をトーリの水の剣が、左半身をナナミの炎の剣が襲う。
「「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」」
トーリの縦一文字の一閃がボスの身体を穿ち、鮮血を撒き散らし、ナナミの突きがボスの腕を蒸発させた。右半身は血だらけ、左半身は腕ごとごっそり失ってしまい、大打撃を受けたボスは身体を纏っていたオーラを解き、身体を小刻みに震わせながら仰向けに倒れ、そして死んだ。これにて討伐完了だ。
「いいやっ!あれはオレのほうがホンの少し早かった!あれはおれのスコアだ!」
「何を言っている。決定打になったのは私の炎だ!あれは私のスコアだぞ!」
目的を果たしたと言うのに阿呆らしい言い争いをしている2人がいる。トーリとナナミである。アホである。
「まあまあトーリさんもナナミさんも熱くならないで。2人のスコアって事で良いじゃあありませんか。ほら、ノーも何か言ってくださいなっ」自分だけでは宥められないとシノはノースライに助け舟を求める。
「・・・どーせトーくんのスコアになっても・・・ボクたちそれぞれのトータルスコアには・・・届かない・・・」ノースライは淡々といらん事実を言う。それを聞いたトーリはムッとする。
「そりゃそうだろオレはお前らよりも後から騎士になったんだからさぁっ!・・・・・・まぁこの話は後だ。それよりも何か食おうぜ。腹が減った・・・」
「「「賛成」」」4人の意見は一致した。4人は装着を解き、剣を鞘に収め、ローブを纏う。4人は横に並び、歩いた。くだらないおしゃべりをし、時々大きな笑い声を出しながら、歩いた。今日までそうしたように、4人は歩いた。皆で、4人一緒に歩いた。きっとこれからもそうだろう。4人は歩く。常に共に。
・・・それが彼らの騎士団・・・<ガイアフォース>・・・の掟だから。誰一人欠けるな。それが掟だ。
トーリは今日も4人無事に帰れることを誇らしげに思い、歩んだ。
トーリ・ラヴィンス。18歳。騎士の称号を得てまだ一ヶ月とちょっと。彼の「物語」は、まだ始まったばかりだ。
今、物語の1ページが刻まれる
To Be Continued
なんだか第1話みたいな構成ですが、あえて言うなら第0話です。
本来の第1話は近いうちに掲載します。
なにとぞよろしくお願いします。