ランデブー(遭遇A面
さて、ご存知だろうか。
1977年に宇宙へと打ち上げられた、宇宙探査機ボイジャーのことを。
一号機、二号機と打ち上げられ、遥か木星、土星、そして二号機に至っては、さらに天王星、海王星をも 観測したそれである。
今も彼らは宇宙を旅している。
そして彼らの中には【黄金のレコード】正確には銅に金メッキがされているものだ。それがある。
地球の風景、各地の言語、音楽そしてメッセージが入っているようで、それを手に取った地球外知的生命体に彼ら以外にも生きているものがいると思ってもらえたらと言う、望みが託されている。
既に太陽系から飛び出した旅人たちとは、いずれ交信が不可能になるようだが、彼らは旅を続ける。
レコードを抱えて。
人もまた、その人その人の持つレコードを抱え人生を旅している。
一人きりではない。
そう。
時には友と、時には伴侶と。
君は今旅をし始める。
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執筆中に使う、いつもの机に座って読んだページを捲る。
捲ればそこには、青を基調とした風景。
見開きいっぱいの星空、そして向こう側へと伸びる微か見える道。
そうこれ。
とても……懐かしい。
いつだったっけ。
確か、書いてる事が認められ始めた頃だ。
この時書いたこの文はそのままそっくりその時の俺の心情だった。
なんて……
雑誌を閉じ所定の位置へと戻す。
時々取り出しては読み直す。自分が書いたものなのに。
しかも!青臭い!
思わずのたうち回りたいくらいに青臭い!
自分が書いたものだから!
ティーンエイジャーをターゲットにした雑誌の飛び込み依頼で「星、宇宙」をテーマにという事で書いたものだが、今読むと……とても。
だが、それが良かったのだろう。
このページはアンケートでもなかなかな好印象だったらしく、実際この掲載後この雑誌を読んだという10も年の離れた読者から、手紙がちらほらと舞い込むようになった。
その時だけだが。
……まぁ、それを読んだことがきっかけで方向性が定まったという奴も、いる。
『ずっとファンでした!お会いできて光栄です!こういう仕事に携わりたい望みも叶ってその上お会いできるなんて!』
7年後大学を卒業して念願の編集部に配属され、とある作家さんの受賞パーティーに参加したその席でそう言われた。
そうかあの時あの本を読んだ年齢がとうとう社会人かと、時の流れにも驚いたものだった。
その時の彼女が、今自分の担当になっている。勿論、諸先輩の手綱付きではあるが。
「おっと……そろそろ時間か」
書き上げた原稿を彼女が取りに来る約束になっている。
原稿を渡すだけなら自宅マンションの玄関先で事足りる。打ち合わせがある時は流石に一階にある喫茶店へと移動することに決めている。