西方戦役
「ドラゴンが来ました!!」
「篝火を焚いてください」
まだ日没までには時間があったが、念のためにそれに火をつけさせた。
これで少しは着陸がしやすくなっただろうか。
「降下してくるぞ! 気を付けろ!」
タウキナ連隊の幕僚の一人が声を張り上げた。
二枚の翼が送る風が篝火を一つ、二つと倒しながらドラゴンが着陸すると、ギシリと嫌な音を立てながらその胴から下げられた馬車も大地に戻って来た。
そこから歓声が聞こえたのは言うまでもない。
馬車の中ではエルフ達が地に足ついた事への感謝の祈りを聞きながら、ドラゴンの上からヘルスト様が飛び降りた。
「こうも騒がれちゃたまんないや」
「任務、お疲れ様でした」
飛行帽とゴーグルを取り外し、ポケットから眼鏡を取り出したヘルスト様はそう言いながらも破顔していた。
敵の侵攻を食い止めただけでは無く、大打撃を与えることが出来たのだから、それもそうか。
「……無理を言って突き合せてしまって申し訳ありませんでした」
「何が?」と無垢な笑顔で問い返され、胸の奥がドキリとしてしまったのは内緒だ。
「い、いえ。この作戦に突き合せてしまって――」
「いいさ。君たっての願いだからね」
「それでも、俺の命令で――」
「それ以上の言い合いっこは無し。下手に宰相閣下に聞かれても面白くないからね」
チラリと視線を馬車に向けると興奮冷めやらぬ馬車から一人、その宰相閣下が現れた所だった。
相変わらずの張り付けたような顔が俺達に気が付くと、一層、仮面のような顔をしながら歩いてきた。
「空の旅もまた楽しいものですね。はい」
ヘルスト様に向けられた言葉に彼女は苦笑を浮かべながら頭を下げた。
「閣下もご助力、ありがとうございました」
「構いません。で、地上の戦況はどうなのです、オシナー殿」
「おかげさまで戦線の整理もついてきましたが、依然圧倒的な不利にある事に変わりはありません」
日が傾くのに合わせるようにエルファイエル軍の攻勢は頓挫してくれた。
それは夜間の同士討ちや闇夜の渡河という危険を避ける為だろう。
また日が昇れば敵は攻勢に出るはずだ。それこそ物量で押しつぶそうとするかもしれない。
そうなればいくら宰相閣下の魔法が合ってもどうなるか――。
「それは良かったです。ところでアウレーネ様はいずこに?」
「こちらです」
新しく作られた急造の本陣はアウレーネ様達幕僚がいる空間が一枚の布で申し訳程度に隠された簡単な物だった。
その布をめくると簡単な机が置かれただけの空間に疲れを滲ませたアウレーネ様達が地図を見ていた。
「失礼いたします。はい」
「宰相閣下! この度は――」
「構いません。全ては王国のためです。はい」
仰々しく体を二つに折った挨拶をすますと宰相閣下は幕僚に混じって地図に視線を走らせる。
そこに乗った敵の駒は川向うの岸に押し出されてはいるが、明らかに駒の数が違う。
「明日の昼を目途に撤退を行いたいのですが――」
「構いません。それで作戦は終了。タウキナへはお約束通り様々な援助を確約いたします。はい」
コクリとアウレーネ様が頷くと、「撤退の準備を進めて」と小さく告げた。
「撤退となると、ゴモラ方面に後退しながらベスウス騎士団と合流しようと思うのですが、オシナー殿はどう思われますか?」
「そうですねぇ……。良い案だと思います。ただ、ゴモラに立て籠らなければ、という但し書きがつきますが」
都市に籠れば持久は出来るだろうが、それ以上を見込めない。
それにゴモラは攻略の際に絨毯砲撃をしているからその防御力には疑問が残る。
だからこの方面でベスウスと合流しながら後退。逐次野戦陣地を築いて敵を遅滞させながら西方辺境領まで下がる――これがベストな作戦だろう。
「伝令! 伝令!」
息を切らせて飛び込んできた兵に俺たちはイヤな予感を覚えた。
それもイヤな予感がよく的中する俺がそう感じてしまった。
「何事です?」
「そ、それが! 周辺を偵察しておりましたら、敵が!」
「どこに居たのです? まさかこの闇夜に渡河を――」
「違います! 我らの背後です!!」
そんなバカな。
戦線の隙間を渡河されたというのなら話が分かるが、それだって数に限りがあるだろからここまで動揺を露わにする理由が思いつかない。
「あの、敵のは数は?」
「日が落ちたため、確認はできませんが、百から二百はくだらないかと」
それが誤報である事を信じたいが、そもそもそれだけの兵士を秘密裏に渡河させられるものだろうか。
いや、そりゃ、連隊だって少数のエルフを浸透させる戦術をとってはいるが、一個班十人ほどの戦力だから成功しているのであって、中隊規模の兵力でこちらの索敵網にかからずに浸透して来れるものだろうか?
「敵情が本当ならベスウスの戦線が崩れたのでしょうか?」
青い顔で宰相に問いかけたアウレーネ様だったが、即答で「ありえません」と帰ってきた。
「その可能性は万に一に無いでしょう。ベスウスは確かに消耗こそしておりましたが、それでも魔法使いが三人もいるのです。
敵が新型砲を導入したからとはいえ、その守りが崩されるとは考えにくいです。はい」
宰相閣下の活躍を目にすると――いや、これまでの戦闘でタウキナと東方辺境領はベスウスの力を体感しているが故に敵が戦線を突破したとは考えづらくなった。
だが、それには俺たちの思いこみがあるのかもしれないし、本当に俺たちの知らぬ間に敵が渡河してきただけなのかもしれない。
「それより、敵の部隊が接近中なのですね。迎撃の用意を――」
「伝令! 敵が背後から――!」
その言葉に俺たちは眉をひそめた。
重複している、のか?
「我らの陣より南東から百ほどの民衆が蜂起しました!」
「そんなはずは無い! こっちが偵察に出たのは南西だぞ!」
伝令達の声に俺は明らかに心臓が飛び出しそうになった。
どうしてその可能性を真っ先に考えなかったのだと自分を殴りたい。
ナザレでの暖かい日々のおかげで忘れていたが、ここは敵地なのだ。
エルファイエル軍の本格的攻勢が始まればエルファイエルの民は王国軍を排除しようと立ち上がる事なんて少し考えただけでもわかるだろうに。くそ。
「早く迎撃の準備を整えなければ……」
「ですが、オシナー様――」
間に合うのか? という言葉が途切れた。
それとも迎撃できるほどの戦力を割いても大丈夫か? と問われたのかもしれない。
だが、相手はただの民だ。武装していると言ってもたかがしれている。
「敵との距離は?」
「南西の敵はおよそ五キロ後方です」
「南東は十キロほどです」
近いな。それでも徒歩であればまだ時はある。
懸念があるとすれば蜂起した住民と接触するのは漆黒の帳が落ちた頃合いだろう。
こちらは正規軍とはいえ徴兵部隊が主のタウキナ連隊だ。練度を思うと、夜戦の最中に誤って同士討ちを起こして混乱が生まれないだろうか?
いや、迎撃しなければこちらの戦線がかき乱される。昼間の戦闘で辛うじて立て直した戦線を乱されるわけにはいかない。やはり迎撃だ。
相手は合計で二百から三百。
これまでの攻撃でタウキナ連隊は消耗しているが、こちらには長射程を誇る螺旋式小銃で武装したモニカ支隊や宰相閣下の魔法もある。
蹴散らせる、か?
そう思った時、遠くから砲声が響いた。
音が軽い。新型砲では無く、オオヅツだろうか。
こちらは新型砲の射程より離れているから、オオヅツの砲撃も届かないだろう。
ならあまり警戒する事も――。
「伝令! 敵の斬りこみが!!」
このタイミングでか!?
そう叫びたくなったが、精一杯の自制心でそれを喉にため込んだ。
だが、表情にはそれが現れてしまったのか、アウレーネ様や伝令が俺をみる表情はとても堅かった。
「や、夜陰に紛れて敵が上陸! 第三大隊と戦闘に!!」
「第三大隊は持ちこたえられそうですか?」
「それが、第三大隊はこれまでの戦闘で実質の戦力は二個中隊にも満ちません。対して敵は尽きる事を知りません! ご指示を!」
視界が急に悪化してきたせいで敵情を把握できないのか。
だが、耳をすますと様々な喧噪が本陣に届いてきた。
銃声、悲鳴、砲声。そして悲鳴。
すでに白兵戦となっている可能性が高い。地形としては平坦な川原だから数の力が物を言う。
「……大公殿下」
押し殺したような声にその主を探すとタウキナ連隊の幕僚の一人が深々と頭を下げていた。
「畏れながら申し上げます。どうか、お引きください」
「……もう、引けるような場所などありませんよ。オシナー様、ヘルスト様、そして宰相閣下。本日はありがとうございました。
本日、こうしていられるのは皆さまのおかげです。どうか、今のうちにお引きください。
私は最期を――」
「大公殿下もどうか、お引きください!!」
アウレーネ様の言葉を遮るように放たれた言葉。本陣の中は外の騒々しさを思えば信じられないほどの静寂に包まれた。
「再度、具申致します。どうか、お逃げください」
「なりません。私はこの地に留まり、貴方達と運命を共にします。
私はあなた方に死を命じました。
タウキナ連隊に加わってくれた兵の多くは元は農夫や工商で、本来なら戦場に出ることも人を殺すような事もせずに己の生を全うし、幸せの内にタウキナに骨を埋めるはずの人々でした。
その運命をねじ曲げ、タウキナとも縁も縁も無い地で戦い、死ぬよう王として私は命じたのです。
その王が家臣を放って逃げる事など、許されません。
私もこの地に留まります」
水色の瞳に揺るぎ無い決意を固めた言葉に俺たちは黙らざるを得なかった。
そのキッと結ばれた口元がどこかケヒス姫様を思い起こさせた。
全ての責任をとるために、今を生きているその姿が――。
「成りません!」
ケヒス姫様を思わせた口元が一気にゆるんだ。
幕僚の一人が膝をついて泣くように「お逃げください」とつぶやく姿が鮮明に見えた。
「……私が元王族だから、ですか? 私はタウキナ大公です。
王族であるからと――」
「違います!! 貴女様がタウキナ大公だからです!!」
震える空気に鳥肌がたった。
アウレーネ様のように強い光をたたえた瞳が、彼女を見据えた。
「タウキナの混迷を、アーニル公の作った混沌からタウキナを救いあげて下さったのは殿下です。
大公殿下はタウキナと縁も縁もない地に我らを赴かせたとおっしゃりましたが、大公殿下にとってもタウキナは縁も縁も無い地ではありますまいか!
そのタウキナのために身を打ち捨て、心を打ち捨て、そして身分をも捨ててタウキナに尽くしてくれたではありますまいか!?
ベスウスがタウキナに攻め寄せてきたとも、タウキナを守るためのご決断をしてくださったではありますまいか!!」
幕僚の言葉にアウレーネ様はただただ、黙ってそれを聞いていた。
全ての時が止まったように、奇妙な静寂が本陣を包む。
「タウキナは変わりました。これからも変わるでしょう。
剣や鎧を作る鍛冶屋に布告をだし、その頭領達を説き伏せて小銃を作るようお命じに成った事で、タウキナは他国に先んじて小銃を生産する体制がとれました。
亜人政策もそうです。
国王陛下がお命じになった政策を大公殿下は先に行っております。
タウキナはケプカルトの中で最も進んだ大公国となりましょう。
それには諸改革を成してきた大公殿下が必要なのです!」
「ですが、ですが私は――」
幕僚はただ一言、「お優しいのですね」とつぶやいた。
「アーニル公も惚れ込むわけです。年甲斐もなく、その慈悲に恋いこがれそうです」
「な、なにを言って――!」
「どうか、その心でタウキナを統治してください。
王道をもってタウキナを導いて下さい。
我らはその先兵としてこの地に留まり、悠久の大儀に殉じます。
せめて、わがままを言わせてもらえるのであるならば、我らの血が無駄にならぬよう、タウキナを導いて下さる事を誓って下さい」
アウレーネ様はその言葉を否定しようと口を開きかけるが、それをやめた。
「…………誓います。タウキナ大公アウレーネ・タウキナは、貴方達の血が一滴も無駄にならぬよう、タウキナを導く事を、誓います」
「ありがとうございます。殿下。それでは最後のご命令を!」
すぅと息をアウレーネ様が吸い瞼を閉じた。。
瞼が開くと、その瞳はケヒス姫様とは違う、力強さがあった。
「タウキナ連隊に命じます。この地を死守しなさい」
「御意に!」
◇ ◇ ◇
闇夜の中でヘルスと様のドラゴンは飛び立った。
宰相閣下は馬を使ってベスウスの本陣に戻ると言って分かれたが、元々一個班ほどしか乗れない馬車だし、なにより空を飛ぶために重量を減らすという観点でその申し出はありがたかった。
それでもモニカ支隊と俺、そして新たにアウレーネ様が乗ると、騒がしいほど馬車が狭く感じたが、誰も何も言わない、妙な沈黙がそこにはあった。
浮かれていたモニカ支隊の面々もその興奮冷めてか、それとも本陣から出てきた俺たちの様子を察してか誰もが押し黙っている。
そしてナザレにつくと、本陣の近くにたかれた篝火を目印にドラゴンが降下した。
その騒ぎに本陣を出てきたケヒス姫様が何か、嫌みを言いたそうな顔をしていたが、アウレーネ様が馬車から降りると顔色を変えた。
「まずは皆、休め。報告は明日で良い」
と、何かを察したように俺たちを見送ってくれた。
疲れてはいるが眠れないだろうな、と思っていたが、それでも身体は睡眠を欲した。
昨日の出来事で食欲は無いだろうなと思ったが、それでも身体は食事を欲した。
そして、本陣をでると、そのすぐ近くでアウレーネ様が折り畳み式のイスに座って空を見上げていた。
昨日までの曇天が嘘のように、春を思わせる空が広がっている。
「オシナー様……」
「なんでしょうか」
静かな声だった。だが、掠れることのない、しっかりとした物だ。
「昨日の事が、夢のようです。
あの後なのに、私は眠り、ご飯を食べ、今、こうしています」
それが、不思議に思えるんです――。
「…………西方に発つ前、ラートニルの戦後処理をしていた時だったと思います。ヘーパイ・ストスさんというタウキナの鍛冶師が司令部を訪ねてきた時がありました」
ストスさんの事をアウレーネ様は知っていいた。タウキナ公都の鍛冶をまとめる重役の一人らしい。あの人、そんなに偉かったのか。
「ストスさんが言っていました。『どんなに辛い事があっても、俺たちは酒を飲んで、飯を食って、寝て。日々を忘れながら生きる。
そして忘れながら生きていく』って」
「あの人らしいですね。ですが、私はきっと昨日の事を死ぬまで忘れられそうにありません。
オシナー様も、そういうモノがあるのでしょう?」
確かにそうだ。俺はアムニスの血煙ただよう曇天を、タウキナの血を流したような夕暮れを忘れられないだろう。
死ぬまでその後悔に似た想いを抱いて生きるのだろう。
今までアウレーネ様の事を心の中で偽善だの、甘いだのお思ってきたが、それは全て、同族嫌悪だったのかもしれない。
「実は、私はオシナー様が苦手でした。
こう言っては失礼ですが、心の中を見透かされていたような気がしたのです」
「逆に、見透かされていたのは俺のような気もしますが……」
「確かに、そうかもしれませんね。ですが、私はそう思っておりました。
ご無礼をお許しください」
「そんな、無礼なんて……」
それにしても、どうしてこのような話をして下さるのだろうか。
そう思っていると、困ったように笑いながらアウレーネ様は言った。
「突然、申し訳ありませんでした。さて、今日は撤退の期日ですね。私が口を挟む事はできませんが、何かあればおっしゃってください」
そこで俺が頷けばこの会話は終わっていたろう。
だが、俺は「あの――」と訪ねてしまった。
「タウキナで晩餐会を開いて頂いたあの時、どして俺にあのお話をしてくださったのですか?」
「さぁ? どうしてでしょうね。
もしかすると、似ているのかもしれないと思ったからかもしれません。
私の事を知ってもらって、そばに居てほしかったのかもしれません。
今、こうしてお話したのも、同じ理由なのかもしれません。
どうですか? タウキナにいらして下さりませんか?」
「お断りします」
即答だった。だが、アウレーネ様は俺に聞く前に答えを知っていたのだろう。
ただ、笑ってくれた。
そして昼を過ぎた頃合いに、総退却の命令がケヒス姫様より発せられた。
すでに過半数の部隊が後退して新たな夜戦陣地を構築しているという。
故に撤退する部隊は馬車に便乗して後退する事になった。
「それにしても、今日の敵はおとなしいですね」
「安息日という奴だそうだ。
なんでも、世界を創った神が休んだ故にその子である自分たちも休まねばならぬらしい」
ケヒス姫様の解説によると、日のあるうちは働いてはならないそうだ。
まさかこの場でやられるとは思わなかったが、今ならエルファイエルの神様に祈りたいくらいだ。
「連隊長! 出発準備よし! 各員、乗車いたしました!!」
「よし……。わかった。いつでも出れるように待機」
敬礼をして去っていく兵を見送り、ケヒス姫様に視線を向けると小さくうなずかれた。
一冬の思い出の地を見渡すと、シモンがこちらに走ってくるのが見えた。
連隊司令部を兼ねる馬車に乗り込んでいるユッタを呼ぶと、彼女は驚いたように馬車から飛び降り、シモンの元にかけだした。
「出発の時間を延ばすぞ」
「……よろしいので?」
その言葉に驚いて問い返すと、ケヒス姫様は無言で自分の馬の元に行ってしまった。
変わられた。
そう、思った。
ふと、視線をユッタ達に向けると、二人は無言で抱きしめあっていた。
二人に言葉は無く、ただ東西の白と黒のエルフがそこにいた。
肌の色も、話す言葉も、信じる神も違うのにエルファイエルのエルフはどうしようもなくエルフなのだとユッタは言っていた。
だが、それでも二人は引きはがされなければならない。
エルファイエルとはまだ戦争状態だし、それが終戦を迎えても国交が回復するのかすら疑問だし、何より互いを分かつ物理的な距離がある。
いつしか、東西に分かれたエルフが優々と会える日が来るのだろうか。
俺には、わからない。
長く、それとも短く抱き合っていた二人はどちらからと無く離れ、そして互いに背を向けた。
「もう良いのか?」
「良くは、ありません。ですが、エルフは長命です。いずれシモンと相まみえるでしょう。
それまでの、お別れです」
軍帽を目深にかぶったユッタがそのまま馬車に乗り込んだ。
それに続いて俺が馬車に乗り込むと「出発!」とケヒス姫様からの命令が届いた。
そうして、俺たちの西方戦役は幕を閉じた。
後で聞いた話だが、ベスウス騎士団も首尾良く撤退し、西方辺境領にたどり着いた。
もちろん張り付けたような笑顔の宰相閣下も無事であり、それぞれの約定を国王陛下にお伝えしたそうだ。
ただ、タウキナ連隊だけは戻らず、かの連隊の守備する地には一本の軍旗がむなしくはためいていたと言う。
コメント、感想返信は今夜行います。
オシナーとアウレーネの絡みはたぶん、同族嫌悪同士ならこうなるかな的な感じで書きました。
また、これで長かった西方編も終わりです。
次からは過去編だったり、次々章のための伏線を張るための章になる予定。
それではご意見、ご感想をお待ちしております。




